セレブの誕生 「著名人」の出現と近代社会

アントワーヌ・リルティ(著者), 松村博史(訳者), 井上櫻子(訳者), 齋藤山人(訳者)

• 販売会社／発売会社: 名古屋大学出版会
• 発売年月日: 2018/12/25
• JAN: 9784815809331

商品レビュー

2025/02/04

1. 著名性と公衆の関係
- 本書では、著名性がどのように形成され、維持されるかについて探究されている。特に、著名人と公衆との関係が重要なテーマである。
- 公衆の声が著名性に与える影響を強調し、特にヴォルテールのような著名人がどのようにその地位を獲得したのかに焦点を当てている。

2. 文化的背景と政治的影響
- 著名性の形成には、文化的背景や政治的状況が密接に関わっている。特に、18世紀における宗教的狂信や偏見に対抗する闘いが、著名性を支える大きな要因となった。
- フランスとアメリカにおける著名性の扱いの違いも記述されており、特にワシントンの神格化が著名性の新たな形態を生み出したことが述べられている。

3. メディアと著名性の交差
- メディアの発展が著名性の拡大に寄与していることが強調される。特に、新聞や版画が著名人のイメージを形成し、広める役割を果たしている。
- これにより、著名人は自らのイメージをコントロールすることが難しくなる一方で、商業的な利益も得るようになる。

4. 社会的・経済的要因
- 著名性は、社会的秩序や経済的特権と矛盾することが多い。特に、役者や女優の著名性は、名声と社会的地位の間に緊張関係を生じさせている。
- 具体的には、役者は公衆の人気を得る一方で、社会的に低い地位に置かれることが多く、特にフランスにおいてその傾向が強いことが指摘されている。

5. 近代的な著名性のメカニズム
- 近代の著名性は、単なる個人の才能や業績に基づくのではなく、公衆の期待やメディアの影響によって形成されるものである。
- 特に、著名人との親密さや好奇心が、現代のメディア環境によって一層強化されていることが述べられ、これが著名性の新たな側面を生み出している。

6. 結論
- 本書は、著名性の概念とその変遷を多角的に分析し、歴史的背景や文化的影響を考慮した上で、現代社会における著名性の重要性を強調している。
- 著名性は、単なる個人の名声にとどまらず、社会や文化の様々な面に影響を与える複雑な現象であることが理解される。