SKET DANCE(文庫版)(09) 集英社C文庫

篠原健太(著者)

• 販売会社／発売会社: 集英社
• 発売年月日: 2018/10/18
• JAN: 9784086197359

商品レビュー

2018/11/10

この（９）の表紙は、実に強烈だ
ファンでも、さすがに、「おうぅ！？」と仰天してしまうだろう
ただ、嫌いではない
実際、ロマンは悪い娘じゃない。ちょっとばかり、業界と言うか、世界の境界線を無視しちゃうトコはあるにしても、自分の夢だけ見据えて、一心な努力が出来る彼女は、作品内でも青春力が高い方に入るキャラなんじゃないだろうか
彼女の描く漫画は、それこそ、『ハヤテのごとく！』のヒロイン・ナギの描く漫画と同じくらい、読む人間にインパクトを与えるんだろう
それでは、この（９）で印象に残った三つの話を紹介したい
第１４５話「クエスト・ダンス 旅の始まり」
これは、個人的な勝手な予想だが、パロディシリーズで、最も人気なのは、「ビスケット・ダンス」だろうな、と思う。やはり、子供は可愛い、正義だ、つまり、人気が出る
その上、私が「好きだな」と思うのは、この「クエスト・ダンス 旅の始まり」だ。ファンタジーな世界観が面白いってのもあるが、レミーダお姉さんのおかげでメチャクチャになった転職先を、必死に取り合い、押しつけ合う面々の必死さが面白い
これは、続編があった、と記憶している。それを読むのも楽しみなんだが、個人的には、もし、篠原先生に余裕があるなら、描き直してくれないかな、あっちゃんが道化的な存在ではなく、戦闘でガッツリと活躍する展開に、と思ってる。現実世界の明智は恋に苦労しているんだ、ファンタジー世界のあっちゃんが、良い目を見ても罰は当たらないんじゃないかな
第１４７話「より良い学園作りの為に」
端的に言うと、安形のカッコ良さが光る回
憧れの安形のような生徒会会長になる、そんな気負いが強くなり過ぎて、いつもより、暑苦しさと真っ直ぐさ、正しさが悪い方向に駆け脚となってしまっている椿を安形が諭すくだりには、強い絆を感じられた
これまでも、安形は上に立つ者としての在り方を示してきた。その上で、自分と同じになるのではなく、己の道を行け、仲間の力を借りて、と言える安形は本当にカッコいい
第１６２話「トラブル・ロール・リバーサル」
ワチャワチャした挙句、スケット団の絆が強くなる第１５５話「さぐりあい本音」も良く、どちらを推そうか、迷ったのだが、『SKET DANCE』らしさが強いのは、こちらかな、と思ったので
売り言葉に買い言葉で、立場を交換する事になってしまったボッスンと椿。頭に血が上りやすく、つい、やらかしちゃうのは、そっくりな兄弟ゆえか
傍目から見ていれば、簡単なようなものでも、いざ、その立場になると、一筋縄じゃいかない、と判る事は儘ある。人間力を高めるには、このように、立ち位置を稀に変え、経験を重ねる事も必要、と篠原先生は知っているに違いない
この台詞を引用に選んだのは、安形は男が惚れる男だなぁ、と感じたので
だらけている部分や、シスコンが重症って欠点が目立っているのに、人気が何だかんだで高いのは、この回のようにカッコいい所が、しっかりとアピールされているからだろう
世間一般的な大事で、守るべきものがある、と分かった上で、自分にとって、最も大事な一つの筋を通すために、覚悟を以て、それが破れる男は魅力的だ
安形に憧憬の念を抱き、追い続けた椿は、きっと、彼を超える、全生徒に愛される、良い生徒会長になる、と断言したい