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またの名をグレイス(下) 岩波現代文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2018/09/15 |
JAN | 9784006023027 |
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またの名をグレイス(下)
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またの名をグレイス(下)
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商品レビュー
4.3
4件のお客様レビュー
「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている」 というニーチェの言葉を思い出した。 今でいうところの「多重人格障害」なのだろうか…。 グレイスという女性の魅力…それに尽きるのだろうか…結局のところ精神科医は何のために? 謎を解き明かす…どころか、彼女の魅力に次第に翻弄され、あ...
「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている」 というニーチェの言葉を思い出した。 今でいうところの「多重人格障害」なのだろうか…。 グレイスという女性の魅力…それに尽きるのだろうか…結局のところ精神科医は何のために? 謎を解き明かす…どころか、彼女の魅力に次第に翻弄され、あらぬ妄想にかられ、しまいには不倫の沼へ。女性に詰め寄られることを避けて逃げ出し、南北戦争への従軍で記憶喪失に…それでもグレイスの面影を求めている…とは。。。 グレイス… 生真面目で信心深く美しい女性。 数奇な運命によって30年にわたって投獄され、やがて赦免。その先に待っていた人は…占い通りJの頭文字の人だったとは…。 実際に起こった殺人事件を元に書かれた小説。 その謎を解くミステリー仕立てのこの物語りは、心理描写に長けていて、ひっそりとではあるが確実に迫ってくる「その日」に焦点をあて、止まることなく人の心に潜むあらゆる感情を炙り出してゆく。 やたらとグロテスクであったり、突飛であったり、目立つことで気を引くサスペンスとは違い、本当の深淵は人間の精神であることを教えてくれる。 静かにゆっくりとその深みにおりてゆく… 巧みな性格の描写が不安感をあおる。 まさに、「本物」といえる作品だと思う。 上質な作品を味わった後はどこか清々しい気持ちが湧いてきて、やっぱり凄腕の作家とは、素晴らしいな…との想いを再確認した。 情報過多の現代にあって、南北戦争前後のこの時代の生活様式や、自然の描写は、ドロドロとした人間関係の中で、一服の清涼剤だった。 視覚化されるとどうなるのか? 興味があるのでNetflixでの映像も観てみようと思う。 追記。 映像化された作品も素晴らしかった。 グレイスの謎めいた美しさと素朴な美しさに溢れる情景と、時代の生活様式が世界観に深みを与えたと思う。
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長かったが面白かった。女性であること、下層であることがどれだけ悲しいことだったか。今でもか。 とはいえ、その女性に押し付けられた手仕事、家事の描写は美しかった。裁縫も料理もそこに楽しさはあったに違いないし、そう信じたい。洗濯や掃除もそこに入れていいだろうか。
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- ネタバレ
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予想はしていたが、真相は藪の中。 みんな、見たい現実をグレイスの中に見ていた。 にしても、グレイスはそこに居るだけで周りの人間、特に男たちの運命を翻弄する。ファム・ファタル、とまでは言えないにしろ、グレイス自身はそこまでアグレッシブに生きてはいないのに、周囲の人間たちは炎に吸い寄せられる羽虫のように踊らされていく。 これを魔性と呼ぶのか、それとも周りの人間の愚かしさと呼ぶのか。どちらとも決めかねる。 そして、サイモン!何やってんだ、サイモン!バカか?バカなのか?!と盛大に突っ込まずにはいられない。サイモンは、グレイスの犠牲者というよりは、「女」というイキモノの犠牲者なんだろうなぁ。母親の呪縛、令嬢の誘惑、人妻との不倫、女囚への傾倒、侍女への蔑視。書いていて、ホントにバカなやつだなぁと思うのだけれど、たぶん、アトウッドはここに痛烈なアイロニーを込めている。女が魔物に見えるのは、あんたたちがお馬鹿さんだっていう証拠だよ、と。 アトウッドは穏やかな晩年をグレイスに用意した。これが実在のグレイスへの配慮とも見えなくはないが、でも、年老いてなお衰えることのないグレイスの魔性を描いたラストとも見えなくはない。 何にせよ、グレイスの人格同様、角度を変えていく通りにも味わうことのできる作品だった。
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