商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
発売年月日 | 2017/02/07 |
JAN | 9784309464350 |
- 書籍
- 文庫
黄色い雨
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黄色い雨
¥902
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商品レビュー
4.4
22件のお客様レビュー
花ちゃんに出会ったばかりの頃におすすめして貰った本を、六年越しに見つけた。snowdropに売っていた。時間はかかるけれど、僕は忘れない。 黄色のことを真剣に考えたことがなかったと気付かされた。見過ごしてきた。この作品では、死に近しいものとして描かれている。そこに付随する懐かし...
花ちゃんに出会ったばかりの頃におすすめして貰った本を、六年越しに見つけた。snowdropに売っていた。時間はかかるけれど、僕は忘れない。 黄色のことを真剣に考えたことがなかったと気付かされた。見過ごしてきた。この作品では、死に近しいものとして描かれている。そこに付随する懐かしさや風化してゆくさまなどと共に。 黄色というと、稲穂の実りや夕暮れのきらめきなどを想像する。黄色とは僕にとって一瞬間の光景であったのかもしれない。だからこそこの作品で段々と黄色に染まってゆく村の景色が新鮮で、それが死という永遠に向かってゆく道程がうつくしかった。
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以前、図書館で借りたが読みなおしたくなり、文庫本を購入。死者と思われる語りでアイニェーリェ村の住民が次々と離村していき、村が崩壊していく様子が描かれる。語り手の妻は寂しさにより、首を吊り、語り手の男性は雌犬とともに死の訪れを待つ。何も希望はないのに、なぜか美しく、記憶や村、そして...
以前、図書館で借りたが読みなおしたくなり、文庫本を購入。死者と思われる語りでアイニェーリェ村の住民が次々と離村していき、村が崩壊していく様子が描かれる。語り手の妻は寂しさにより、首を吊り、語り手の男性は雌犬とともに死の訪れを待つ。何も希望はないのに、なぜか美しく、記憶や村、そして命を黄色い雨が崩壊へと誘っていく。 文庫版には「遮断機のない踏切」と「不滅の小説」が新たに収録。
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『黄色い雨』以前単行本を読んだレビューはこちら。 https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/478972512X#comment こちらの文庫本は表題作のほか短編2作が入っているので読んでみました。 あとがきは単行本のほうが良いなあ...
『黄色い雨』以前単行本を読んだレビューはこちら。 https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/478972512X#comment こちらの文庫本は表題作のほか短編2作が入っているので読んでみました。 あとがきは単行本のほうが良いなあ。訳者木村栄一の「素晴らしい作品に合うと白い炎が見える。この小説にも見えた(だから翻訳した)。」という言葉が良かったんですよ。 P11からP21抜粋 <彼らがソブレプエルトの峠に付く頃には、たぶん日が暮れ始めているだろう。黒い影が波のように山々を覆って行くと、血のように赤く濁って崩れかけた太陽がハリエニシダや廃屋と瓦礫の山に力なくしがみ付くだろう。 それから後は、何もかもが目の回るような速度で過ぎ去っていくだろう。それから後のことは(そして、数時間後に、人に話して聞かせるためにあのときの出来事を思い立とうとしたときも)、どうして最初に疑っていたことが革新に変わったのかを正式に理解することができないだろう。というのも、男たちの一人が階段を登り始めた途端に、私がずっと以前から彼らを待ち受けていたことに思い当たるだろう。突然説明のつかない寒気に襲われて、上の階に私がいると確信するだろう。黒い羽が壁にぶつかって私がそこにいると教えるだろう。だから、誰一人恐怖のあまり叫び声を挙げないのだ。だから、誰も十字を切ったり、嫌悪を表すジェスチャーをしないのだ。ランタンの灯がそのドアの向こうのベッドの上に横たわっている私を照らし出すだろう。私はまだ服を着ており、苔に覆われ、鳥に食い荒らされた姿で彼らを正面からじっと見つめるだろう。 そうだ。彼らは服を着たまま横たわっている私を見つけるだろう。私は彼らを正面から見つめるだろう、粉挽き小屋に放置された機会の間にぶら下がっていたサビーナのように。ただ、サビーナの遺体を見つけたあの日、私の側にいたのは、雌犬と川岸の木々にぶつかっている灰色の霧だけだった。> 冒頭がいきなりこれですからね。 「〜だろう。〜だろう。」で繋いでいき、語り手の語る自分の死体にたどり着く。何事?? 山にへばりつくように建っている寒村があった。語り手はそこに残る最後の老人だ。みんなが出て行っても、妻が自殺しても、意地なのかなすすべもないのか、ただ一人で残り続ける。村から人間がいなくなると村には忘却の黄色い雨が振り、家には亡霊たちが帰ってきた。老人は自分も黄色くなっていることに気がつく。自分は朝まで生きられないだろう。老人は人生を語る。 200ページ弱なので2時間未満で読める。老人の最後の語りに耳を傾けよう。 ああすごい小説。まさに「白い炎が見える小説」であり、訳者のその入れ込みようも感じる。 『遮断機のない踏切』 配線となった線路の踏切係が、電車が来ない線路の踏切小屋に通い続けて通らない電車にあわせて踏切を上げては下ろす仕事を続ける。車に乗った人たちは、決して来ない電車の通過を待つ踏切に通行を邪魔される。 …不条理小説というか、最初は単調な仕事を20年続けてそのままの生活が癖になった感じだったが、どんどん偏狭的になっていく。 『不滅の小説』 詩人のトーニョは世間に認められていないし、成功したかつての自分の仲間たちにも黙殺されているが、自分こそは重要な詩人だと自認している。しかし自分の曾祖母の奇跡に出会ったトーニョは、祖母に関する小説を書くことにした。15年掛けて書き上げた小説だが、まだ健在な人々が登場するために出版の決意がつかなかった。さらに年月が過ぎて彼らは老衰で死んでいったが、最後の一人が残っている。このままではいつまで経っても自分の唯一の小説が出版できない。こうなったら最後の一人を殺すしかない。 …えっえーーー(*´・д・)━!!!」なぜその発想。
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