商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 文藝春秋 |
発売年月日 | 2016/08/05 |
JAN | 9784163905013 |
- 書籍
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狩りの時代
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狩りの時代
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商品レビュー
4.6
7件のお客様レビュー
最後の職場で、僕はしばしば彼らのお父さんやお母さんと、狭苦しい面接室で対面した。 その頃の僕には、あの時のお父さんやお母さんの気持ちは全くと言っていいほど分かっていなかった。 この本を読んで、少しだけそれに近づけたような気がする。 主人公絵美子の知的障害を持つ兄耕一郎が、肺炎の...
最後の職場で、僕はしばしば彼らのお父さんやお母さんと、狭苦しい面接室で対面した。 その頃の僕には、あの時のお父さんやお母さんの気持ちは全くと言っていいほど分かっていなかった。 この本を読んで、少しだけそれに近づけたような気がする。 主人公絵美子の知的障害を持つ兄耕一郎が、肺炎のため15歳で亡くなる。 『ところが、棺に入れられた耕一郎を火葬場に運ぶとき、眠気のなかで絵美子は急に気がついた。これでこうちゃんはおとなになれなくなったんだ、そして、わたしはもうこうちゃんのことを考えなくてもよくなった。わたしはわたしで勝手におとなになれるんだ。それは絵美子にとって、まったく予想していなかった、新しい時間だった。』 この文章に遭遇したとき、反射的にもう一つの文章が脳裏に浮かんだ。 『それから三人そろって家を出た。もう何か月もしたことがなかったことだ。そして電車で郊外へ出かけた。車内は彼ら親子だけで、あたたかい陽射しがさしこんでいた。三人はのんびりと座席にもたれ、将来の見通しを話し合った。よく考えると、現状はさほどひどいものでもないのである。』 カフカの「変身」で、グレーゴルが死んだ後の家族の様子を描いた文章だ。 人のこころの悲しい、だが真実の動きだろう。 あの事件以来、僕の中にわだかまっていたものが、ほんの少しだけ腑に落ちたような気がした。 作者には、もっと書きたいことが有り余るほどあったに違いない。 だが、彼女には時間が残されていなかった。 この本は、彼女が僕らに残してくれた遺書だ。
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差別をテーマに人間模様を描いたドラマ。 記憶と事実と夢と、いくつもの物語が折り重なって、絡み合いながら進みます。 テーマの普遍性とプロットはノーベル文学賞的です。著者は亡くなる直前まで、表現をさらに磨きたかったのでしょうか。
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差別はどの時代にもあるというような描写があった。だから差別はあってしょうがないと諦めるのでなく、どうするかを考え続けなければならないのだけれど、簡単にその回答が出るわけでもなく、本当に難しい問題なのだと、この著書から改めて感じる。 タイトルがズシンとくる。
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