商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 松籟社 |
発売年月日 | 2016/01/01 |
JAN | 9784879843418 |
- 書籍
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メダリオン
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メダリオン
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商品レビュー
4.7
4件のお客様レビュー
8つの短編からなる本書は、終戦後まもないポーランドでナチスの犯罪調査委員会に属していた著者が、各地で人々にナチスの犯罪を聞いた過程で書き上げられた証言文学である。 1つ1つの物語は10ページ程度のものだが、どれもかなり重く苦しい作品で、1編を読むたびに打ちのめされることになる。 ...
8つの短編からなる本書は、終戦後まもないポーランドでナチスの犯罪調査委員会に属していた著者が、各地で人々にナチスの犯罪を聞いた過程で書き上げられた証言文学である。 1つ1つの物語は10ページ程度のものだが、どれもかなり重く苦しい作品で、1編を読むたびに打ちのめされることになる。 そして証言文学というかたちをとっていることもあって、ここで語られる物語がイマジネーションの産物ではないということにも居心地の悪さを感じてしまう。 更に、語る証言者は戦争の生存者であり、死者には語る場所を与えられない。 本書を読むとき、多くの亡くなった死者たちの語られる体験、物語は消えてしまったということも同時に考えてしまう。 そして、戦争や虐殺は、個人の人間の死を民族や人種という括りにかたちを変えさせる。 そこでは個人の体験は消えて、大きな災禍として語れることになる。 という言葉も思い出した。
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ホロコーストやポル・ポトの大量虐殺を始めとした蛮行を、いとも簡単にやってのける人間という存在がどうしても理解できなくて、思春期の頃は答えを求めて無心で関連本を読み漁った時期があったのだけど、以降はあまり読んでいなかった。本作は好レビューが多かったので久々に。 大戦直後、筆者がポ...
ホロコーストやポル・ポトの大量虐殺を始めとした蛮行を、いとも簡単にやってのける人間という存在がどうしても理解できなくて、思春期の頃は答えを求めて無心で関連本を読み漁った時期があったのだけど、以降はあまり読んでいなかった。本作は好レビューが多かったので久々に。 大戦直後、筆者がポーランドにおけるナチス犯罪調査委員として収集した証言や体験を元に執筆した短編集。特に印象深い「墓場の女」の一節が、当時の疑問に答えを提示してくれていた:「現実は丸ごと経験させられるのではない。つまり、現実はいちどきに与えられることはない。現実は私たちのところに出来事のかけらとなって届く。切れ切れの報告として、射撃のこだまとして…。遠いようで、しかしわずかに壁を挟んで起きているこの現実は本物ではない。この現実を考えることで初めて、その現実はかき集められ、確固としたものになり、その現実を理解する試みになる。」 この惨劇に加担していた、もしくは看過していた人々は現実をかけらのままに放置し、考え、認めようとはしなかった。「シュパンナー教授」で例の石鹸づくりに携わった若い男は、それが犯罪だと誰も指摘しなかったのかと問われても、淡々と「誰も私に言いませんでした」と答えてしまう。壁の向こうのゲットーで、父子が追い詰められた後に「ぴしゃん、ぴしゃん」、と音を立てて飛び降りるのを聞き苦悩していた「墓場の女」の老女でさえ、「ラジオだって言っていたから」、とその状態を正当化してしまう。 「現実は私たちのところに届くとき、出来事のかけら、報告の断片になっている。私たちは抗いもせずに死に向かう人々の静かな行列を知っている。炎の中への飛び降り、深淵への身投げを知っている。しかし、私たちは壁のこちら側にいる。墓場の女はその同じものを見て、聞いた。だが、彼女にとって、出来事は注釈と混じり合い、その現実を失っていた。」 この作品で唯一現実を心得ていたのは、「線路脇で」のあの若い男だけかもしれない。語り手は彼の行動を「よくわからない」「理解できない」と評していたけれども。 そして皮肉なことに、生き残りの証言者たちですら、まるで壁の向こうの話かのように自らの体験を語る。「底」の彼女が多くのことに触れていないのは明らかだ。また、「草地」の彼女は「彼女たち」については雄弁に語るが、己のことには口を噤む。 この本の著者のように割れたメダリオンの断片を拾い、集め、繋ぎ合わせ、より確固となった現実を理解しようと努めるのが、同じ過ちを二度と繰り返さないためにも肝要だ。ただし言うは易く行うは難し。考えないことが最も楽である、(自分を含む)人間にとって、それはかなり難しい要求なのかもしれない…。
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寒さは耐え難かった。道すがら、そして工場の機械の脇で、より弱いものはみな死んでゆきました。彼らはしたいを地下牢に積み重ねました。そしてこの同じ地下牢に、本当に些細な違反のために人々を閉じ込めていたのです。食べることも許さず、身を覆うことも許さず、一晩中、裸の地面の上にです。ようや...
寒さは耐え難かった。道すがら、そして工場の機械の脇で、より弱いものはみな死んでゆきました。彼らはしたいを地下牢に積み重ねました。そしてこの同じ地下牢に、本当に些細な違反のために人々を閉じ込めていたのです。食べることも許さず、身を覆うことも許さず、一晩中、裸の地面の上にです。ようやく朝に点呼に呼び戻しました。が、点呼のあとは再び地下牢へ、食べ物なしです。彼女たちに食べ物をやることも禁じられていて、点呼の際も誰もパンを分けないように、一人一人はなされて立たされました。女SSたちはこのことにとても神経をとがらせていました。それでも何か食べていました。一度、一人が口を動かしたことがありました。そして人の爪には血がついていました。あそこでの懲罰は凄まじいものでした。あそこで彼女たちは夜にあの死体を食べていたのです。
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