商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 中央公論新社 |
発売年月日 | 2015/07/01 |
JAN | 9784122061446 |
- 書籍
- 文庫
プロパガンダ戦史
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プロパガンダ戦史
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プロパガンダの定義次第では、心理・情報操作の類は古からあるが、近代戦におけるその意義を研究した書。 初期のプロパガンダとは。第一次世界大戦が開戦されると、すぐにフランスとドイツが飛行機や気球で宜伝ビラを空からまいたということについて、「情報宣伝研究資料」に断片的な記録が報告され...
プロパガンダの定義次第では、心理・情報操作の類は古からあるが、近代戦におけるその意義を研究した書。 初期のプロパガンダとは。第一次世界大戦が開戦されると、すぐにフランスとドイツが飛行機や気球で宜伝ビラを空からまいたということについて、「情報宣伝研究資料」に断片的な記録が報告されている。まず、フランス側の宣伝ビラ。フランスが領土をきっと取り返してやるぞ、それだからフランスのために戦え、というような内容であったことが想像される。ドイツ軍がフランス領に怒濤のように侵入してきた最初のころの戦況では、連合軍側は勝利の報道をする機会はほとんどなかったので、「でたらめ宣伝」をやった。すなわち、フランスの飛行士がドイツに、「イギリスとフランスの艦隊が、ハンブルク、キール軍港、リューベック、ステティン等の都市を占領した」というような内容の宜伝ビラを投下したのである。しかし、これは、真っ赤な嘘で、すぐそれがばれてしまう、まことに愚かな宣伝であった。 上記は部分的に本書を抜粋したものだが、この程度の内容でもプロパガンダと呼ぶ。いや、渦中の人間には、この程度では無かったのだろう。今から見ると稚拙な感じに見えるだけだろう。研究はあらゆる視点で、様々な手法を解析する。例えば次の話。少しグロい内容だが、グロいからこそプロパガンダに意味がある。日本兵の悪事を騙るのと同じことだ。 ー 死体製油工場の話は、じつによくできている。これは、戦時としても、特別にショッキングな話である。ドイツのひどい窮乏を浮彫りにしている。ドイツ人の残虐性を強く宜伝している。化学の得意なドイツ人なら、実行可能なように思えることである。毎日シャボンを使うと、だれでも思い出すように仕組まれている。これは国内向け、連合国向け、中立国向け、敵国向けの全部に適している。ドイツ側では、工場をすべて見せるわけにもいかないから、否定する方法がない。それゆえ、結論的にはいわれっぱなしであった。これは、当時の日本でも報道され噂がひろまったから、私たち中学一、二年だった者はだれでも記憶している話である。見ようによっては、イギリスが「この戦争には勝ちました」という勝利宜言のようでもある。これは、「真実らしい嘘は真実よりも聞く人の心を捕える効果があるときがある」という虚偽法のよい例。 ー 昭和二十年五月にドイツが降伏すると、VOAは日本に向かって「無条件降伏」をさかんに放送し出した。そして、もし降伏しなければ、日本本土は想像もできないような、ひどい被害を受けるぞ、と脅してきた。そして最後の数週間には、三〇分ごとに「無条件降伏せよ」と放送してきた。 今はネットで市民の認知を揺さぶり放題だ。これはプロパガンダとは言わないが、南海トラフのリスク報道は、大衆に恐怖を齎し行動に影響を与える。これが事実確認できない虚偽報道だったとしても、影響は同じなのだ。審美眼を養う事の重要性を再認識する。
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なってしまうとなってしまうぞは「ぞ」があるかないかだけで大きな違い。文脈を考えるというのらそういうことなのでしょう。
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知英派の池田氏が、主に戦時中の外務省ラジオ室の経験をベースに、戦時中のラジオ室の奮闘、各国の宣伝態度、宣伝戦術をまとめたもの。特に、後二者が秀逸。 外務省ラジオ室は、宣伝技術に先見の明があった樺山氏の努力で、アメリカなどから戦前に機材を導入し、なんとかアメリカ製・オランダ製の機...
知英派の池田氏が、主に戦時中の外務省ラジオ室の経験をベースに、戦時中のラジオ室の奮闘、各国の宣伝態度、宣伝戦術をまとめたもの。特に、後二者が秀逸。 外務省ラジオ室は、宣伝技術に先見の明があった樺山氏の努力で、アメリカなどから戦前に機材を導入し、なんとかアメリカ製・オランダ製の機材で一応の収集体制を整えて、各国の宣伝内容の分析報告を行った。戦前は日本はこうした技術で西欧に遅れていたということと、このラジオ室が、前後ラヂオプレスに姿を変え、未だに活躍しているということが印象に残る。 各国の宣伝態度は主に英米独を分析しているが、独は論理派で相手の論破を目指しているため、敵国民に全く入っていかず、アメリカはスピーディーな報道重視なので、戦局が良ければ相乗効果、悪ければなす術なしでイマイチ。相手国民の性向を知り尽くし、相手に考える材料を与え、基本性格なるも決定的なところで嘘をつきと、相手を翻弄させた謀略派の英国に圧倒的な軍配をあげている。 最後に宣伝戦術であるが、これは筆者が樺山氏と相談しながら昭和17-18年に半年で書き上げたもので 、参謀本部において印刷したもので、本書末尾に丸々掲載されている。曰く、宣伝は、反復、関連、主導、ユーモア、質問ベースで決して結論を押し付けないなど、英国から学びとった内容をベースに、現在にも普通に通用する内容。筆者の経歴(華族、知英派)からか、文章も横文字(=同時の敵性語)が現代並みに多く、よく参謀本部から出版できたなと思う。 本書で引用されているSecrets of Crewe Houseという第一次大戦における英国の宣伝戦の勝利をまとめた本もウェブ上で見れるので、読んでみようと思う。
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