クオリア・テクニカの世界

茂木健一郎(著者)

• 販売会社／発売会社: ネイチャーインタフェイス
• 発売年月日: 2009/09/09
• JAN: 9784901581073

商品レビュー

2017/11/06

我々はクオリアを通して世界を見ていると著者はいう。

クオリアとは脳科学の用語で、私たちの質感を形づける質感のこと。リンゴを見るときも、嬉しい時の感情も全てクオリアである。

クオリアの中で、特にテクノロジーによって作り出された新しい質感を「クオリア・テクニカ」として、本書ではテクノロジーの発達と脳科学に関するエッセイをまとめてある。

著者の茂木氏が脳科学の研究をしていることは知っていたが、本書を読むとそれ以外の分野にも幅広く興味を持っていることがわかる。

ハリウッド映画、フランス料理、講演会などはなぜ全て2時間なのか、というような脳科学の話もあれば、アイガモ農法の話や、グーグルCEOのシュミット博士の話、国を代表して詩を作る桂冠詩人の話など全然関係ない話もあるので、飽きがこずにすらすらと読めてしまう。

以下少しだけ詳しく書いた感想。
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◆ハリウッド映画、フランス料理、講演会。なぜエンターテイメントは全て2時間なのか。

これは、情動系の神経伝達物質は「キレの良い」時間変化は示さないからだという。

15分でフランス料理を食べても、情動系システムはついていけず、2時間で食べた時の美味しさは得られないのだそうだ。

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◆自由な選択はそれ自体喜びである
『選択の自由』という本によると、「自由な選択ができるということ自体が、客観的な報酬とは別に人々に喜びを与える」という。

選択の自由[新装版]―自立社会への挑戦

・・・それはあるかもと思った。
決められたレールの上だと嫌的な。

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◆スモールワールド現象による六次の隔たり

「7人の知り合いで世界中の人と繋がれる」という話の元になったのは、カンザス州の住民数十人が地理的に離れた場所に住む、ある神学選考の学生の妻に手紙を届けられるかの実験。

住民と目的の人との面識はなく、手紙は自分の直接の知り合いに手渡しで渡さねばならなかった。

これが6人で大体行けた。だから7人で世界中と繋がれるという話になったそうです。

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◆嗜好性の高い製品はデザインが大切。

かつて日本車はその高い性能に反して自動車愛好家の間での評価がいまいちだった。それはデザインが物足りなかったことが理由の一つだという。

今の時代、これがないと死ぬ、みたいなアイテムってほぼなくて、ほぼすべてが半分嗜好品といってもよいのではないかと自分は思ってます。なので、これからはデザインが大切なのかなと思いました。

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◆判断を下す権利を持ちつつも聞く

最終的に判断を下すのは自分の役割だが、そのために人の意見を注意深く聞くことが重要、という考えのグーグルCEOのシュミット博士。

・・・独断による間違いを避けることのほうが自分に都合よく進めることより大切ということを学んだ。
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◆アイガモ農法
アイガモ農法は、有機栽培できる上、アイガモは育つと美味しい鴨肉になる。一石二鳥。

・・・エサ代もかからないし、アイガモ農法効率よすぎでは、と思った。
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◆桂冠詩人

桂冠詩人の概念。国家を代表してその時々の出来事や精神を言葉にする人。アメリカとかイギリスはこの考えが強く、桂冠詩人でない無名の作者の言葉はあまり残らない。

日本は逆で、万葉集のころから、庶民も創作に加われる。
万葉集は貴族だけでなく、庶民の句も入っている。

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本書では、各エッセイごとに表紙のページがあるが、これが前衛的で気になります。何かの表面？なんでしょうか。

タイトルも表紙もなんかちょっとどことなく変な本だけどだけど、内容はさらりとしてて読みやすい。そんな本でした。