商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
発売年月日 | 2015/01/01 |
JAN | 9784309206707 |
- 書籍
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素晴らしきソリボ
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素晴らしきソリボ
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1980年代、フランス海外県マルティニーク島。カーニヴァルの夜、久しぶりに姿を現した伝説の語り部ソリボに町の人びとは湧き立つが、語りの途中で彼は突然沈黙し、そのまま事切れてしまう。口汚い横暴な巡査とエリート警部がにぎやかな客たちを尋問するが、でてくるのはソリボの思い出話ばかり。一...
1980年代、フランス海外県マルティニーク島。カーニヴァルの夜、久しぶりに姿を現した伝説の語り部ソリボに町の人びとは湧き立つが、語りの途中で彼は突然沈黙し、そのまま事切れてしまう。口汚い横暴な巡査とエリート警部がにぎやかな客たちを尋問するが、でてくるのはソリボの思い出話ばかり。一人の語り部の死を通して、口承と文芸の結節点を模索するクレオール小説。 公用語はフランス語だが、町の人が普通に使っているのはいくつもの方言に分かれたクレオール語、公文書に記される名前はフランス語表記だが、実際に呼ばれているのは全然違う名前、というふうに、島では話し言葉と書き言葉の世界が完全にズレていることがたびたび強調される。語り手はシャモワゾー自身で、ソリボの死をめぐる狂騒的なお喋りを文字へと移し替えるその四苦八苦の様子も物語に取り込まれている。 謎の怪力で暴れまくる不死身の女・ドゥードゥーと、公権力に許されている以上の暴力で応戦するブアフェッスとその部下がどんどん殺人を犯していくのでソリボの影が薄いくらいなのだが、エリートのピロン警部が登場してからこのブアフェッスという男のキャラクターに厚みが生まれてくるところが面白かった。ブアフェッスは島の人びとに公文書で書ける言葉を話すよう要求するが、ピロンに対しては島の人の言葉をフランス語に置き換える通訳の役目を進んで果たすのだ。島の特権階級だという誇りが、下層民にはフランス語を押し付け、よそ者には現地語の豊かさを見せつける矛盾を彼に許している。 逆にピロンは物腰柔らかで島民たちにも理解が深そうにふるまうが、どこまでもヨーロッパ基準でしか物事を捉えられないネオリベの敗北を象徴するようなキャラクター。それが「物事をすべてミステリー小説のように考える」ということで表現されている。謎を解く=秩序回復をめざすミステリーは、陰謀論にも接近しやすいのだ。クリスティ的な尋問のお喋りと、口承のパロディとしての文芸というテーマは年始に読んだマコーマックの『ミステリウム』とも共通しているし、新本格っぽいとも言える。 好きなテーマなのだが、「口承に対して文芸は何ができるか」という問いが常に前面に押しだされている感じで島民のお喋りの世界に入りきれなかったし、問いを飲み込んでしまうようなパワーまではこの小説から感じられなかった。ソリボにお話を教えたのは女たちだったという辺りをもっと書き込んでほしかったなぁ。
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パワフルすぎる中年女性のドゥードゥー=メナールめっちゃすき。 強さ議論できるくらいバトルアクションシーンが多い。
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カーニバルの真っ最中タマリンドの木の下で、語り部ソリボは「言葉に喉を掻き切られて死んだ」。その場に居合わせた14人の目撃者(ほぼ無職)、彼らを重要参考人として尋問する警察。果たして犯人はー。安いオーデコロンの匂いとタフィア酒に酔い痴れながら、飛び交う罵詈雑言と繰り出されるパンチを...
カーニバルの真っ最中タマリンドの木の下で、語り部ソリボは「言葉に喉を掻き切られて死んだ」。その場に居合わせた14人の目撃者(ほぼ無職)、彼らを重要参考人として尋問する警察。果たして犯人はー。安いオーデコロンの匂いとタフィア酒に酔い痴れながら、飛び交う罵詈雑言と繰り出されるパンチを物ともせずに、太鼓の音に合わせて踊りたくなるような、五感の全てを動員して堪能する文学作品だった。需要が減りつつある炭を売る仕事と同様に、ソリボの口上はこの世界から求められる事は減り、退場を余儀なくされている。そんな口承文学の「素晴らしい転落」の末の最期の時を、バトンを渡された記述文学を持ってして、華々しく壮大な餞の言葉で送ってあげる事が、残された人間の務めなのだろう。
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