商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 鹿島出版会 |
発売年月日 | 2013/09/20 |
JAN | 9784306045934 |
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ザ・ネイチャー・オブ・オーダー
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「私はずっと長い間、あるものを、求めてきました。それは美しさとは何か、そして、正しさとは何かということです」p.476 1970年代に「パタン・ランゲージ」で建築における美学の基準を提案した著者が、仕事の「100年もの間難しいものとして放置されていたこの課題(建築物の品質について...
「私はずっと長い間、あるものを、求めてきました。それは美しさとは何か、そして、正しさとは何かということです」p.476 1970年代に「パタン・ランゲージ」で建築における美学の基準を提案した著者が、仕事の「100年もの間難しいものとして放置されていたこの課題(建築物の品質についての判断)」に言及する。 「建築についての重要な問題は、特に私たちの時代の問題なのですが、建築の良否を判断する根本的な基準にあります。何が良くて何が悪いのか。何がより良くて、より悪いのか、という問いです。(中略)何がエコロジカルに妥当なのか、何が社会的にかつ心理的に価値があるのか。また何が美しく見えて、何が魂にとって心地よいのか――これらすべて「全体性」という総合的判断でとらえるとうまくまとまるのです」p.363 基本的にのっぺらぼうのモダニズム建築に否定的な著者は、建築の「全体性」に宿る「生命感」が建築の良否を決める基準になりうるといい、そのうえで「生命感」を測る15の特性を提示する。 1. スケールの段階性 2. 力強いセンター 3. 境界 4. 交互反復 5. 正の空間 6. 良い形 7. 局所的に現れるシンメトリー 8. 深い相互結合と両義性 9. 対比 10. 段階的変容 11. 粗っぽさ 12. 共鳴 13. 空 14. 簡素さと静謐さ 15. 不可分であること ここには様々な分野の研究者のアイデアが取り入れられていて、認知心理学、物理学、数学、生物学、宗教学とその幅はとても広い。バイオ・ミミクリー、フラクタル/ラフネス、わびさび……そこには著者が定性的な「美しさ」の概念をいかに言語化するかを考えるうえでに辿った広大な知の蓄積が濃縮されている。 「15の特性は互いに依存し合っています。15の特性は重なり合っています。多くの場合、ひとつの特性の定義を理解するために別の特性の定義が必要になります。これらは15の定義が最重要なのではなく、その15の特性がつくり出す「場」自体のほうが重要だからでしょう」p.241 「場」とはつまり「全体性」のことだ。 要素に分解して定量的に分析し、その質量を正確に再現すれば同じものができるとしたデカルトの還元主義に対して、「全体性」の概念はその絶対性を否定し、折り重なる特性の複合的な心理作用が重要で、これを評価する基準が必要だという。 部分は重要ではあるが、部分は全体性を作る要素であり、逆に全体性は部分の共鳴によって成り立つ。要素の積み上げ/帰納ではなくて、再帰的な「全体性」によって体験は左右される。 量子力学の始祖ともいうべきハイゼンベルクの著書に「部分と全体」があるが、これ以上に分割できない単位に事物が理解されたとしても、人間の個別性や心理的な差異まで含めれば、物理世界の完璧なコントロールはできない。すべては再帰的であり、循環的にしか理解されない。機械論で美学を語ることができない。 これは複合系として建築が持ちうる価値をいかにして判断するかについて試みではあるが、かならずしも絶対的なものではない。ただ、ひとつの手引きとしては「パタン・ランゲージ」を含めると人類史上類をみない野心的な提言だと感じた。 ただ、ちょっとまだ咀嚼するには時間が必要。 それよりこの本、言いたいことは明確なのだが、結論を導くための例証が多すぎてやや冗長かもしれない。書籍よりも、講演として聴けるのであればそのほうが理解はされやすいかも。15の特性はいろいろと応用がききそう。覚えておこう……
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