商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 幻冬舎 |
発売年月日 | 2014/07/24 |
JAN | 9784344026070 |
- 書籍
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弱いつながり
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弱いつながり
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商品レビュー
3.8
141件のお客様レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
とてもおもしろかったです。 言葉の表現が巧みというか、 考え抜いているだけではなく考え方に解放感を感じるというか、私の言語力が足りないのですが、 「検索ワード」。 という、とても分かりやすくなじみ深い言葉を通して、 人間の産み出す言葉や記号の役割や、関わり方を教えてくれているようで。 まず一つ、とても共感したしなるほどと思ったのは、 負の遺産の物理的な存在価値。 なぜ残すか、そして残し方。 バーチャルリアリティとか、その場にいなくても体験できたり、そんな技術が普及している現代に、物理的な存在の意義を論じる。肯定する。 プラス、 観光、という、立場を論じる。肯定する。 そして、インターネットで検索することも、肯定する。 本書は東日本大震災から数年後に出された本で、 著者は福島第一原発の観光地化プロジェクトを推し進めている真っ最中だったようですが、 そんな現在進行形中であり、様々な意見も飛び交う状況下で、とても勇気ある議論に勝手ながら感心すると同時に、 例えば原爆ドームが今日の世界に果たしている役割とか、 いろいろ考えさせられました。 ・・・ __人はみな自分の能動性を信頼しすぎている。… かけがえのない自分などなく、自分の考えること、思いつくこと、欲望すること、は、たいてい環境から予測可能なことでしかない。 __あなたはあなたの環境から予想されるパラメータの集合でしかない。 だから、環境を変えること、旅に出ること、移動することこそが、新しい検索ワード、発することや記号と呼ばれるもの、それを手に入れるきっかけになる。 自分探しではなく検索ワード探し。 だからどの環境を選ぶか、どこに行って何に触れようとするのか、その意志や好奇心、関心の部分が固有の自分を持てるところでもあるのかな…。 常に観光客でいることは疲れるけれど、 日常があるからこそ非日常がある、 常に観光客でいることなんかできないと気づく。 ・・・ 記憶の継承ではなく、後世における記憶の書き換えを意識して歴史を保存する。 だから、物理的遺産が強い。 物理的な痛みを分かちること―憐み、について、ルソーやローティの思想を紹介しつつ述べられていて、 結局は私たち人間が同じ人間として身をもって気づいたり感じたりする経験に賭ける。 つまり、「人間の限界で社会の基礎をつくる」。 __国民と国民は言葉を介してすれちがうことしかできないけれど、個人と個人は憐みで弱くつながることができる 記号を通した理念の共有ではなく、実際の個人的な憐み。 でも待って、この前読んだアランの『幸福論』では、憐みや同情を否定していました。 他人を悲しみの捨て場にするな、と。辛さや苦しさにも最後には打ち勝つ人間の生命力に焦点を当てて記号を発する。 社会レベルで考えたとき、 負の遺産は生のエネルギーの源としてもとらえられるのかな、そう捉えることで、社会を発展させていくのかな。 それを原点に考えると、 負の遺産だけではなく、いろいろなものの物理的存在の価値を考えられるかな。 物理的環境と自分の関係性にもう少し意識的になれる部分があるかもしれない。 どういうエネルギー源として、どういう影響を受けて、どういう希望と力に変換して、何を生み出すのか。 検索ワードという記号だけではなく、さまざまな創造性の源になっている気がしてきます。 そして観光。 軽薄さや無責任さを肯定されています。 たしかにそうかもしれない。知ったらなにかしないといけない、というのではなく、 少し知った、頭の片隅に残っている、その知識以上に、そこで感じたこと、瞬間とその後、その地で過ごした間に頭をよぎったこと、 そんなもの全体を含めて、記号を通してではなく、一人一人が自分の身体を通して、同じものからそれそれの印象を受ける場所。観光地。 自分の検索上の世界も広がる。 観光地化によってその場所や物時代が一部変わってしまうことは避けられないけれども、 結局放置してても変わっていくし。 普段いかないところに人を連れ出す。 その役割を観光が担っていて、 それは計画性や想定内の動きに縛られない、偶然や弱いつながりを可能にする場所でもある。 一人一人の世界に閉じこもっていがちな今日の社会で、 非効率にも人々が混ざり合う機会を積極的に作る。 そして普段の日常だと絶対知らなかったり感じないであろう経験を、より気軽に持ってもらえるようにする。 とても大事な試みであると思いました。
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ぼんやりと頭の中にはあって、でも認識していなかったことを言語化してくれるような本だった。遠くに旅した経験のある人はそのとき説明できなかった感覚の答え合わせができるかも。そしてまた旅に出たくなると思う
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一言でまとめると、弱いつながり(偶然性)を重視して、旅行に行くことを勧めている本。旅行に行くのはあくまで手段にすぎないものの、ネットで得る情報は自分用にカスタマイズされており、偶然性や、時間・欲望を複製することはできない点で大きく異なる。
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