「イヤな気持ち」を消す技術

苫米地英人【著】

• 販売会社／発売会社: フォレスト出版
• 発売年月日: 2012/11/19
• JAN: 9784894515369

商品レビュー

2024/08/08

著者を「とまこめち」さんだと思っていたが、「とまべち」さんだった。更に動画等で本人出演を見る事があったが、失礼ながら、とても胡散臭い人だと思っていた。で、同氏の本を初めて読んだのだが、これを撤回したい。素晴らしい本だと思った。「イヤな気持ち」になる事が多いし、同じくらいかそれ以上、自分も人に「イヤな気持ち」にさせているのだと思う。家庭医学や経験論でそれを解決するのではなく、本書は、脳科学的な見地から解説された科学的な本だ。そして、とても共感性も高く、ロジカルである。

ー　相手のことを許せないと思うのは、自分は相手にこれだけのことをやってきたのだから、自分の思い通りになって当然だと考えているからだ。特に目をかけてきた部下ならば、自分に忠実であるべきだし、相手が尽くしてきた上司ならば、自分を高く評価して昇進させるべきだと思い込んでいるはず。それが正しいことであり、そうあらねばならないと言う信念がある。その信念を、相手に否定されたことによって、決して許せないという強い怒りの感情が湧く。・・とりわけ現代人は過剰な欲望を抱くように仕掛けられているから、嫌な出来事の記憶にとらわれる傾向がますます強くなっている。

雇用される事は不愉快な事だと自覚しているので、そこから極力避けて生きている。承認欲求が無いわけではないが、人に評価されることも不愉快に直結するので、意識しないように心掛けている。それでも、イヤなことは、あるのだ。人間が生きる以上、常にイヤなことと付き合っていくものなのだろう。それを、少しでも減らしたい。所謂、へっちゃら、になるために。

ー　自分の腕時計の文字盤を画用紙に再現してみるという実験がある。ほとんどの人は、正確に長針や短針のデザイン、カレンダーの作りやローマ数字かアラビア数字かという細かいデザインを再現できない。なぜなら海馬がその情報を側頭葉に投げ込んでいないから、海馬は腕時計の事は既に知っていると判断し、どのような文字盤かという情報を記憶に入れなかった。・・海馬が重要と判断し、ゲートを通して側頭葉に投げ込まれる情報とは、人の生命を左右する失敗の情報。または、予測に対して異なる結果が起こったという情報的な痛みが生じた時も、脳は重要だと判断し、その情報を側頭葉に投げ込む。

ー　トラに出くわしたとき、その状況に類する小さな失敗の記憶を思いっきり増幅して引っぱり出すのと同じメカニズムが働きます。そして、それがくり返されることによって、いじめられた記憶は、実際以上に辛い記憶として側頭葉に刻まれていくことになります。その結果、いじめがいま起こっているわけでもなく、直接いじめにつながる情報を得たわけでもないのに、学校を連想させるものを見たり聞いたりするだけで、少年の体が震えだすという現象が起こるのです。

ー　前頭前野に収められた期待のパターンは、その人の人格を決めるからです。人格というのは一般に、個人の心理的な特性のことを表す言葉です。

さて、ではどうすれば思い出に震えず、人格を歪ませずに済むのか。

ー　カッカカッカと怒ったり、ドキドキして不安が高まったりしているときは、大脳辺縁系が優位になり、前頭前野の活動が低下している状態にほかなりません。したがって、前頭前野を働かせ、大脳辺縁系の活動に介入することによって、本来、その状態は即座に収まるはずですが、それをうまくできない人が多いのです。前頭前野側からの介入をスムーズに行うためには、ここでも、ひとつ上の抽象度のゲシュタルトをつくることがコツです。・・例えば、相手に対する怒りを、逆に相手に対する憐憫に変える事は、大脳辺縁系の攻撃性を鎮める、前頭前野の介入テクニック。・・ドラマやバラエティー、コマーシャルによる刷り込みシステム。私はこうした刷り込みシステムのことを電通と呼んできました。これによる重要ですという刷り込みが、人間の前頭前野のパターンを作る。そしてそれがイライラさせる。

前頭前野を上手く使うこと、そのために、一旦俯瞰、メタ的に状況を解釈する事。それと、刷り込みに気づき、極力、一方的な情報受容を避ける事。しかし、電通って・・笑　このアイロニーも含めて、遅咲きのとまべちファンになりつつある。

2021/08/12

メモ
過去の記憶はすべて娯楽として味わう。
過去の記憶を現在の自分と切り離す。
あらかじめ娯楽だと分かっていると恐怖も楽しめる。
人生のゴールを達成しようとする至福感に包まれて自然発火している人は、ゴール達成に必要なこと以外は意識に入らなくなる

2020/10/03

「イヤな気持ち」とは一体何なのか。
そして、その対処法が科学的知見を元に解説されている。

読めばネガティブな情動に囚われずに生きていくことが出来る様になる一冊。