白馬の騎手 他一篇 岩波文庫

テオドール・シュトルム(著者), 茅野蕭々(著者)

• 販売会社／発売会社: 岩波書店
• 発売年月日: 1988/02/01
• JAN: 9784003242452

商品レビュー

2024/11/24

シュトルムの最後の作品にて一番の長編

[シンクレール]

リクエスト復刊ではあるが、1937年（昭和12年）発行の再版で、漢字の旧字体が読めなくてスマホで検索しながら読みました。麺麭（パン）、　序に（ついでに）、　徐に（おもむろに）この歳になって初めて読み方を知りました。ファンとしては最後の作品で一番の長編という事で頑張って読みました。北海沿岸フリースラント人は堤防を築いて海面より低い耕地を守り、家を建てねばならなかった。百年の後も崩れない大堤防を構築した孤高な主人公は作者自身の面影が現れているとか。1888年作者70歳で書き終えたのは亡くなる5か月前だった。新装版を出して欲しいところだが、シュトルムの読者が少なくなっている時代を考えると無理からぬ事か。表紙と紙面が新しくなっているだけでも慰みである。訳者後期も昭和12年のもので、戦前の日本でシュトルムの「白馬の騎手」が読まれていた事実に感動した。

2011/01/13

2011/1/12 読了。
独文レポートの課題として購読。
旧字体で最初は読みづらく思いましたが慣れると特に気にならなくなりました。
気になったのは、
・二重の枠物語構成
・執拗なまでの個人名
・かもめ
・ねずみ
・迷信と科学、キリスト教と殉教
など。
さて、どう論じようか。

2009/06/04

同じものを３冊持っています。
ひとつは昭和32年の第12刷、あとの二つは1988年第14刷、岩波文庫のリクエスト復刊時のもの。
版は一緒なので、３冊とも全く同じと言ってもよいと思います（奥付が違うだけ）。
古い本がすでに古くなっていたので（そりゃ当たり前じゃて）、リクエスト復刊のときに「念のために」２冊確保しました。
それほど、私は『白馬の騎手』が自分の許から消え去ることを恐れたのです。
旧字体、旧仮名遣いが、むしろ懐かしい。
叙情詩人、短篇作家であるシュトルムの最後の作にして唯一の長篇。
ハウケ・ハイエン堤防監督官。
嵐の中、蹄の音も喘ぎも聞かせず堤防を駆け抜ける白馬。
『夜叉ケ池』をも思い起こさせるクライマックス（どっちが先でも、互いに知っていなくてもいいのです、今は芸術の影響の先後関係を論じているのではないのですから）。

「進め、白馬。」