商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2012/04/19 |
JAN | 9784003279267 |
- 書籍
- 文庫
汚辱の世界史
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汚辱の世界史
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商品レビュー
3.6
14件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ボルヘスのことが知りたくて読んでみた。 著名原話や史実を改変した変奏曲としての物語集。 アンチヒーローを扱っているが「汚辱」というほどのことはない。我らが吉良上野介の一編も登場する。 若い頃の初期作品ということで、ボルヘスの魔法の片鱗が見える。読んでいるうちにくるりと語り手が入れ替わるような感覚。 私としては著名原話や史実に関する知識が少ないため、かなり愉しみが減ったように思う。知識に溢れかえるボルヘスは嬉々としてパロディを書いたんだろうと想像する。
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悪党列伝、と思って読むと違和感があった。「悪党」と言い切りがたい登場人物もいるからだ。 ボルヘス自身の1954年版の序には、大乗仏教を引き合いに出して自分の作品を空無と例えており、さらに『表題の「汚辱」とは仰々しい言葉であるが、その響きと怒りの背後にはなんの意味もない。この本は見...
悪党列伝、と思って読むと違和感があった。「悪党」と言い切りがたい登場人物もいるからだ。 ボルヘス自身の1954年版の序には、大乗仏教を引き合いに出して自分の作品を空無と例えており、さらに『表題の「汚辱」とは仰々しい言葉であるが、その響きと怒りの背後にはなんの意味もない。この本は見せかけ以上のものではなく、かつ浮かびかつ消えていくイメージの連続以上のものではない。』とある。 ある人物についての描写といえば、普通よくありがちなのは、事実を時系列に事細かに描いたものが多いが、ボルヘスの作品ではそういった即物的な感じがない。具体的な人間についての話なのに、まさにイメージ、といった印象である。 これほどの恐ろしい人生でさえも、「イメージ」という抽象的な捉え方を余儀なくされると、どんな人間の一生も所詮は虚なのである、という感覚になっていく。 ボルヘスを読んでいると、暗くはないが、冷静だが同時に温かみもある不思議な客観的な虚無感に浸れる。
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ボルヘスの最初の短篇集、1935年。表題作は古今東西の7人の悪党=アンチ・ヒーローにまつわる物語。後半の「エトセトラ」は『怪奇譚集』『夢の本』にも通じる不可思議な掌編。 □ ボルヘスの書くものには、自己同一性の無化という主題がしばしば見られる。自己同一性を担保するはずの顔/名...
ボルヘスの最初の短篇集、1935年。表題作は古今東西の7人の悪党=アンチ・ヒーローにまつわる物語。後半の「エトセトラ」は『怪奇譚集』『夢の本』にも通じる不可思議な掌編。 □ ボルヘスの書くものには、自己同一性の無化という主題がしばしば見られる。自己同一性を担保するはずの顔/名前/起源がひとつに定まらずにずれていく。仮面による顔の隠蔽、偽名変名による宛先の逸失、迷宮による現在地の不定、鏡による原本の複製。以下の記述は、ボルヘス自身の世界観にも通じるのではないかと思う。 「我々の住む世界はひとつの過失、不様なパロディである。鏡と父親はパロディを増殖し、肯定するがゆえに忌むべきものである」(「メルヴのハキム」) さらに、ボルヘスの文学観としては、個々の「作者」というものですら不在であるかもしれない。その都度の読書行為がその都度の作品に上書きされそれをずらしていく。その運動の中で、「作者」だとか「原作」だとかいう観念は解消されてしまうのかもしれない。その運動の無限遠において、「読者」と「作品」の区別も解消されていく。それらみな、非時間的で超人間的な《永遠客体》に解消されていく。これは、ボルヘスが描こうとしている自己同一性の無化という事態と並行的ではないかと思う。世界も自我も作品も、その本源だとか同一性だとかという観念は、ただの幻像であると。 「自らの作品を書く勇気はなく、他人の書いたものを偽り歪めることで(時には正当な美的根拠もないまま)自分を愉しませていた臆病な若者――作品はすべてこの若者の無責任な一人遊びである」(「一九五四年版 序」) 「書物に署名するのはおかしなこと。剽窃の観念は存在しない。すなわち、あらゆる作品が非時間で無名の唯一の作者の作品であることが定められた」(「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」) □ 「学問の厳密さについて」が印象的だった。どのような寓意を読み取ろうか。 □ 「この本は見せかけ以上のものではなく、かつ浮かびかつ消えていくイメージの連続以上のものではない。まさにその理由で、それは楽しい読みものであるだろう」
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