商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2012/03/19 |
JAN | 9784003111031 |
- 書籍
- 文庫
銀座復興 他三篇
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銀座復興 他三篇
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商品レビュー
3.6
9件のお客様レビュー
今年2023年は関東大震災100年に当たる年ということで、書店では夏ころから新刊を含め関連書が多数陳列されていたが、そんな中で本書を見つけたもの。収録作品4作のうち、表題作の『銀座復興』『九月一日』『遺産』は関東大震災に直接関連した作品。 『銀座復興』は、今でも銀座に店を構え...
今年2023年は関東大震災100年に当たる年ということで、書店では夏ころから新刊を含め関連書が多数陳列されていたが、そんな中で本書を見つけたもの。収録作品4作のうち、表題作の『銀座復興』『九月一日』『遺産』は関東大震災に直接関連した作品。 『銀座復興』は、今でも銀座に店を構える「はち巻き岡田」がモデル。関東大震災でほぼ壊滅状態になった銀座で、小屋を建て「復興の魁は料理にあり 滋養第一の料理ははち巻にある」と銘打ち、いち早く復興の第一歩を踏み出した店があった。その店を舞台に、復興を期待する主人公、店の主人夫婦や店に集う客たち、もう銀座は駄目だとあきらめている主人公の友人などの会話を通して、復興への前向きな姿を描きていく。 それに対して『遺産』では、震災で隣家の壁が崩れたため、付き合いのなかった隣人と思わぬ交流が始まったが、隣人は高利貸しの子どもということで後ろ指を指されてきたため周囲との付き合いを拒絶し隠遁生活を送っていた。震災後、町内会で夜回りをするということで、嫌々ながらも隣人を誘って参加したのだが……。ここには、自警団に見られる暴力的にもなる同調圧力の厭らしさがはっきりと描かれている。 作者は、実業家と作家の二足のわらじを履いていたとのこと。文章は平易でとても読みやすい。
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ドキュメンタリーではなく小説です。震災小説とでも言うのでしょうか。どのお話も思いのほか静かで落ち着いた気持ちになれる読後感がありました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
水上滝太郎『銀座復興 他三篇』岩波文庫、読了。「復興の魁は料理にあり 滋養第一の料理ははち巻にある」。関東大震災後の焼け野原の銀座にたったトタン小屋の飲み屋。焦土東京の下町から品川の海が見えたという。ランプの下へ集う人々の自由なつながりと復興への鎚の音を生き生きと描く表題作。 水上自身その日、由比ヶ浜の別荘地で地震津波に遭遇したが、その記憶が元になる「九月一日」では、避暑地の若者たちのその日のこころを抑制のとれた筆で浮き彫りにする。宮崎駿夫さん『風立ちぬ』の冒頭を想起。ひょとして影響を与えているのではないかと。 「果樹」では新婚生活に入った若夫婦を瑞々しく「果樹」は水上の傑作と呼ばれるが、著者の人格主義に、まさにまさにと膝を打つ。町内会的な閉塞的絆の暴力性を描く「遺産」は、正義感あふれない描写が印象的だ。中立とは無縁だが、社交とは常に相対的なのだ。 「勤め人として人のために仕事をし、文学者として自由に創造する、この理想を追求した人物は滝太郎いがいにいない。人格に裏打ちされた書き手であり、そのよさは、二足の草鞋にあったと思えてならない。一つは大いなる義務、一つは純粋な憧憬」(解説坂上弘)。 三田文学のひとつの翠点でなあ。この作品は。
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