銀座復興 他三篇 の商品レビュー
今年2023年は関東大震災100年に当たる年ということで、書店では夏ころから新刊を含め関連書が多数陳列されていたが、そんな中で本書を見つけたもの。収録作品4作のうち、表題作の『銀座復興』『九月一日』『遺産』は関東大震災に直接関連した作品。 『銀座復興』は、今でも銀座に店を構え...
今年2023年は関東大震災100年に当たる年ということで、書店では夏ころから新刊を含め関連書が多数陳列されていたが、そんな中で本書を見つけたもの。収録作品4作のうち、表題作の『銀座復興』『九月一日』『遺産』は関東大震災に直接関連した作品。 『銀座復興』は、今でも銀座に店を構える「はち巻き岡田」がモデル。関東大震災でほぼ壊滅状態になった銀座で、小屋を建て「復興の魁は料理にあり 滋養第一の料理ははち巻にある」と銘打ち、いち早く復興の第一歩を踏み出した店があった。その店を舞台に、復興を期待する主人公、店の主人夫婦や店に集う客たち、もう銀座は駄目だとあきらめている主人公の友人などの会話を通して、復興への前向きな姿を描きていく。 それに対して『遺産』では、震災で隣家の壁が崩れたため、付き合いのなかった隣人と思わぬ交流が始まったが、隣人は高利貸しの子どもということで後ろ指を指されてきたため周囲との付き合いを拒絶し隠遁生活を送っていた。震災後、町内会で夜回りをするということで、嫌々ながらも隣人を誘って参加したのだが……。ここには、自警団に見られる暴力的にもなる同調圧力の厭らしさがはっきりと描かれている。 作者は、実業家と作家の二足のわらじを履いていたとのこと。文章は平易でとても読みやすい。
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ドキュメンタリーではなく小説です。震災小説とでも言うのでしょうか。どのお話も思いのほか静かで落ち着いた気持ちになれる読後感がありました。
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水上滝太郎『銀座復興 他三篇』岩波文庫、読了。「復興の魁は料理にあり 滋養第一の料理ははち巻にある」。関東大震災後の焼け野原の銀座にたったトタン小屋の飲み屋。焦土東京の下町から品川の海が見えたという。ランプの下へ集う人々の自由なつながりと復興への鎚の音を生き生きと描く表題作。 水上自身その日、由比ヶ浜の別荘地で地震津波に遭遇したが、その記憶が元になる「九月一日」では、避暑地の若者たちのその日のこころを抑制のとれた筆で浮き彫りにする。宮崎駿夫さん『風立ちぬ』の冒頭を想起。ひょとして影響を与えているのではないかと。 「果樹」では新婚生活に入った若夫婦を瑞々しく「果樹」は水上の傑作と呼ばれるが、著者の人格主義に、まさにまさにと膝を打つ。町内会的な閉塞的絆の暴力性を描く「遺産」は、正義感あふれない描写が印象的だ。中立とは無縁だが、社交とは常に相対的なのだ。 「勤め人として人のために仕事をし、文学者として自由に創造する、この理想を追求した人物は滝太郎いがいにいない。人格に裏打ちされた書き手であり、そのよさは、二足の草鞋にあったと思えてならない。一つは大いなる義務、一つは純粋な憧憬」(解説坂上弘)。 三田文学のひとつの翠点でなあ。この作品は。
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震災とそこからの復興は繰り返される日本の宿命。 うまい酒とうまい料理で元気を出して、それぞれの仕事をがんばる。そうすりゃ、天子様もお喜びだ。 上記のような具合に、人々は関東大震災後の復興に尽力するが、その姿は読者に元気と勇気を与えてくれる。
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銀座復興(1931/昭和6年) 九月一日(1923/大正12年) 果樹(1925/大正14年) 遺産(1929/昭和4年) 解説 震災と水上文学(坂上弘)
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震災後の銀座の荒涼とした様子や、復興にかける市井の人々の奮闘ぶりがよく伝わってくる。会話が生き生きしているせいだと思います。
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関東大震災によって焼け野原となった銀座を舞台に、人々の復興に向けた様々な思いを描いた表題作を含む四編を収めた短編集。文語体の面影を残す叙述が昭和初期の時代を感じさせるが、現代においても違和感なく寧ろ心地よく読み手に響くところに著者の力量がうかがえる。震災という大きな事件におかれた...
関東大震災によって焼け野原となった銀座を舞台に、人々の復興に向けた様々な思いを描いた表題作を含む四編を収めた短編集。文語体の面影を残す叙述が昭和初期の時代を感じさせるが、現代においても違和感なく寧ろ心地よく読み手に響くところに著者の力量がうかがえる。震災という大きな事件におかれた市井の人々の様子を淡々と描写してみせることによって、その非日常性が効果的に表現されている。
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水上滝太郎『銀座復興 他三篇』、岩波文庫。 三田文学出身の作家が関東大震災後の東京について書いた小説。 当時の、つまり戦前の「復興」というのはこういうものであったわけで、 いまさらその是非を言うのは詮方ない。 むしろ、「すでに都市に呑み込まれ組み込まれたひとびと」の心象サンプル...
水上滝太郎『銀座復興 他三篇』、岩波文庫。 三田文学出身の作家が関東大震災後の東京について書いた小説。 当時の、つまり戦前の「復興」というのはこういうものであったわけで、 いまさらその是非を言うのは詮方ない。 むしろ、「すでに都市に呑み込まれ組み込まれたひとびと」の心象サンプルとして読むべき。
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表題作は、関東大震災で焼け野原になった銀座でいち早くバラックにより営業を再会した飲み屋を舞台に、街の復興に取り組む人々の絆を描いている。この飲み屋は、現在も営業している「はち巻き岡田」である。全四編の内三編が関東大震災が背景になっている。昔も、大地震は、天罰という(天譴論)バカが...
表題作は、関東大震災で焼け野原になった銀座でいち早くバラックにより営業を再会した飲み屋を舞台に、街の復興に取り組む人々の絆を描いている。この飲み屋は、現在も営業している「はち巻き岡田」である。全四編の内三編が関東大震災が背景になっている。昔も、大地震は、天罰という(天譴論)バカがいたらしい。水上滝太郎は、実業家と作家の二足のわらじを履いていた慶応ボーイで、明治生命在職中に亡くなっている。この作家は、初めて読んだが、都会的で、理知的な作風が好ましい。
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