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マジック・フォー・ビギナーズ ハヤカワepi文庫
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マジック・フォー・ビギナーズ ハヤカワepi文庫

ケリーリンク【著】, 柴田元幸【訳】

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マジック・フォー・ビギナーズ ハヤカワepi文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 早川書房
発売年月日 2012/02/24
JAN 9784151200687

マジック・フォー・ビギナーズ

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商品レビュー

3.8

22件のお客様レビュー

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2024/07/13

9つの短編の中で、良かったのは「ザ・ホルトラク」。 動物シェルターで夜勤をやっているチャーリーという女の子は、殺処分される犬たちを最後のドライブに連れていくという仕事をしている。その仕事に罪悪感を持っているチャーリー。夜のコンビニにゾンビたちが現れても全く違和感を感じない店員たち...

9つの短編の中で、良かったのは「ザ・ホルトラク」。 動物シェルターで夜勤をやっているチャーリーという女の子は、殺処分される犬たちを最後のドライブに連れていくという仕事をしている。その仕事に罪悪感を持っているチャーリー。夜のコンビニにゾンビたちが現れても全く違和感を感じない店員たちを描く中で、チャーリーが出てくるシーンで現実に立ち返る。そこがなんとも切なくて良い。 どの短編にも共通する、異界やゾンビ、エイリアン、悪魔、魔法使い、幽霊などが出てくる中に、わずかに覗く人という現実。 現実とは何とも儚いものだな、と思わされる。

Posted by ブクログ

2023/01/04

面白いかどうかと聞かれると、いやそれほどでもない、と応えざるを得ない。という気もするけども。 強いて言うなら美術館に行ったら真っ白な紙が貼ってあってこれが芸術です1000万円ですと言われてほほうそうかねこれがふーんそう言われてみればそこはかとなく想像力を掻き立てられるね白というの...

面白いかどうかと聞かれると、いやそれほどでもない、と応えざるを得ない。という気もするけども。 強いて言うなら美術館に行ったら真っ白な紙が貼ってあってこれが芸術です1000万円ですと言われてほほうそうかねこれがふーんそう言われてみればそこはかとなく想像力を掻き立てられるね白というのは純真無垢で無限の可能性を秘めているとそういうことなんだね。 とかそういう。 いや、時として妙に引き込まれる瞬間もあるのですよ。荒削りだけど将来伸びる、みたいな。 いや偉そうだなおい。

Posted by ブクログ

2022/06/04

こことは違う世界に繋がっているおばあちゃんのハンドバッグ。ゾンビが地上へ湧いてくる裂け目のすぐ横に建つコンビニ。生者と死者の夫婦の離婚調停をする霊媒師。世界の捉え方を少しずらしたら当たり前のように存在しているかもしれない魔法の領域を、インサイダーの目線で描く日常系ファンタジー短篇...

こことは違う世界に繋がっているおばあちゃんのハンドバッグ。ゾンビが地上へ湧いてくる裂け目のすぐ横に建つコンビニ。生者と死者の夫婦の離婚調停をする霊媒師。世界の捉え方を少しずらしたら当たり前のように存在しているかもしれない魔法の領域を、インサイダーの目線で描く日常系ファンタジー短篇集。 リンクの作品は、"ふつうの"現代人の生活にぬるっと魔法や死者の世界が組み込まれている、という構成のものが多いが、それが何の寓意なのか、そもそも寓意を意図しているのかもよくわからない。「ザ・ホルトラク」のコンビニがある場所は煉獄なんじゃないかとか、「石の動物」の兎は何のメタファーだとか、考えることはできるが読んでいる間はとにかくわけがわからない。完全におとぎ話のフォーマットで書かれた「猫の皮」のような話なら、逆にわけがわからないことのわけがわかるので安心するのだが、現代を舞台にした作品でも登場人物たちはおとぎ話的に世界を捉えている。〈おとぎ話的〉というのはファンシーな意味ではなく、呪いや不可思議に取り囲まれているのが当然な世界観ということだ。 訳者あとがきで柴田さんも言うように、リンク作品はそこに作為が感じられない。怖がらせようとか不気味がらせようとして変な話を書いているようにも、キャラクターの精神的錯乱状態をほのめかしているようにも思えない。それが怖い。私たちが大人になる過程で身につけた〈常識〉という色眼鏡が少しでもずれてしまったら、本当の世界はこんな姿をしているんじゃないか。生まれてからずっとその世界を直視してきた人だからこのように書くんじゃないか。そう思えるから、わけがわからないのにディテールに惹かれて読み進んでしまうし、いつのまにか彼ら/彼女らの切実さが痛いほどわかるようになってしまう。 最初に置かれた「妖精のハンドバッグ」の終わり方は凄い。ここで終わらせるというのがこの人の凄味じゃないかと思う。語り手がぐにゃぐにゃに体を折り曲げて泣き出してしまう直前。ジュヌヴィーヴもゾフィアもジェイクも魅力的で、なんとか彼らを助けたくなってしまうが私たちには何もできない。作中で起きたことはハンドバッグをなくしただけなのに、それが世界で最も残酷な仕打ちに思えるのだ。 そして一番の傑作は、表題作の「マジック・フォー・ビギナーズ」。地元のテレビ局でゲリラ的に放映される謎のファンタジードラマ『図書館』と、そのファンのナードな高校生グループの青春物語だ。主人公ジェレミーの父親はスティーヴン・キングみたいな売れっ子ホラー作家で、息子を自分の小説にちょくちょく登場させているというのが効いている。親友からもジェレミーはドラマティックでフィクショナルな人生を歩みつつあると思われていて、彼は実際何重にもなった入れ子のような虚構のなかに入り込んでいる。メタフィクションなのだが、メビウスの輪のような虚構と現実の繋がりに爽やかな感動をおぼえるラストが美しい。前作の感想にも書いたのだが、リンク作品の「人間が切実にフィクションを必要とする瞬間」の描き方は、ジーン・ウルフに通じるものがあると思う。 ボルヘスの『アレフ』のように世界を映し出すパジャマ、美術館から盗んだはずなのに所蔵目録になかった絵、少女への愛を証明するため少年が食べたもののリスト。謎は謎のまま残され、安易な寓意やメタファーのように解き明かされてしまうことはない。「秘密は秘密を持てない。秘密であるだけだ」(「マジック・フォー・ビギナーズ」)。だからこそ溶けない氷のように、プラスチックのビジューのように、痛みがキラキラと反射して輝き続ける。ケリー・リンクの小説は、この世界の謎が固まってできあがった透明なオブジェなのだ。

Posted by ブクログ

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