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メモリー・ウォール 新潮クレスト・ブックス
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メモリー・ウォール 新潮クレスト・ブックス

アンソニードーア【著】, 岩本正恵【訳】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 新潮社
発売年月日 2011/10/29
JAN 9784105900922

メモリー・ウォール

¥2,200

商品レビュー

4.1

42件のお客様レビュー

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2024/07/21

 水底から、ぽかりぽかりと泡が立ち上る。 透明な水の中を光を受けて煌めき、震えながら水面へ向かう。そして、最期には大気に溶け、混じりあい、消えてゆく。 -記憶。それは、ありのままに留めおくことも、損なわれぬように囲っておくことも能わず、さりとて捨て去ることも、目を背けることもまま...

 水底から、ぽかりぽかりと泡が立ち上る。 透明な水の中を光を受けて煌めき、震えながら水面へ向かう。そして、最期には大気に溶け、混じりあい、消えてゆく。 -記憶。それは、ありのままに留めおくことも、損なわれぬように囲っておくことも能わず、さりとて捨て去ることも、目を背けることもままならないもの。それは僕を形作り、それなしには僕は世界を認識することもできないだろう。 表題作の『メモリー・ウォール』にて、ドーアは、こう書く。  “この世界でただひとつ変わらないものはなんだ?それは変化だよ!”  “いつまでも残るものはなにもない。化石が生じるのは奇跡なんだ。五千万分の一さ。残りのわれわれはどうなるかって?草に、甲虫に、ウジに消える。光の帯に消える。”  ーでは、いつまでも残るものはなにかー ドーアは自ら立てたこの問いに、本書に収められた六篇を通して答えを探す。 不妊治療に苦悩する夫婦の間で、千切れそうになっても必死に寄り合わそうとする絆。 別れた夫婦のこじれた関係を知ることない、海外基地に赴任している息子からの手紙。 ダム建設で沈む村に最後まで留まる種屋。 両親を相次いで亡くして、異国の祖父に身を寄せる少女。  そして『来世』の、アウシュビッツ=ビルケナウ移送をからくも逃れて、遠くアメリカに暮らす老女エスターの物語。 2008年現在に八十一歳のエスターは、ユダヤ人孤児院で共に暮らし1942年に絶滅収容所へと送られていった少女たちを、持病のてんかんによる発作のなかで幻視する。 少女たちはエスターがくるのを、彼女たちを記憶している最後の者が訪れて、来世へ解放されるのを待っているのだ。  人は最期の旅路に、自らの内へと向かい、埋められた子供時代を掘り起こす。われわれはもと来た場所へ帰る。 そして記憶を空へと解き放つのだ。 六篇の物語を通じて、記憶にまつわる問いかけ自体が、鮮やかに反転していくことに気がつく。 記憶も、人生も、いつまでも残るものなどたとえないとしても。  ーすべてが消え去ったとしても、それでも残るものはなにかー 死者たちは歌う。  “雨がなくても、大きくなるものはなんだろう。燃えつづけて、終わることがないものはなんだろう”  “石は、石は雨がなくても大きくなる。愛は、愛は、燃えつづけて、終わることがない” 『メモリー・ウォール』にて記憶装置の手術を行う医師は言う。  “記憶は、明確な、あるいは客観的な論理なしにひとりでに築かれていきます。こっちに点がひとつ、あっちにまた点がひとつ、その間には暗い空間がたっぷり広がっているのです。われわれの知っていることは、常に形を変え、常に細分化しています。ひとつの記憶を何度も十分に思い出せば、新しい記憶を、思い出す記憶を作れるのです。” これは脳の海馬やニューロンにまつわる発言に留まらないと考える。 人と人はそれぞれ孤独でつながることはできなくても、想いを、記憶を、世代を超えて新しくつないで伝えていけるのだ。 僕はそう想う。

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2024/04/13

記憶。 記憶とは何だろうと思う。 記憶は生きる糧、よすが、自分を自分たらしめるモノ。 常に、自在に引っ張り出せるモノでもなく、なくせるわけでもない、事実だけでもない、事実に想像が加わり、いつしかそれが「記憶」となる。記憶は色があったり無かったり、感情とともにだったり。 全編、世...

記憶。 記憶とは何だろうと思う。 記憶は生きる糧、よすが、自分を自分たらしめるモノ。 常に、自在に引っ張り出せるモノでもなく、なくせるわけでもない、事実だけでもない、事実に想像が加わり、いつしかそれが「記憶」となる。記憶は色があったり無かったり、感情とともにだったり。 全編、世界各地での記憶を軸とした、人の日々の営みであり、生と死を感じさせる。描かれる物語の世界は湿度と色彩を感じさせ、瑞々しい。 読後、スッキリとした幸福感は無く、読みながら強張っていた身体の緊張感が溶けるような安堵感はある。

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2023/11/12

表題作はけっこうSF入ってるけど、全体的にネタとしては普通なわけですよ。ネタというのはどういう題材かってことなんだけど。いやしかし題材は普通でもうまく料理すれば目新しいものができますぜ、って感じか。 それでもやっぱり表題作のドラえもんチックな設定からの流れがね。楽しげよね。といっ...

表題作はけっこうSF入ってるけど、全体的にネタとしては普通なわけですよ。ネタというのはどういう題材かってことなんだけど。いやしかし題材は普通でもうまく料理すれば目新しいものができますぜ、って感じか。 それでもやっぱり表題作のドラえもんチックな設定からの流れがね。楽しげよね。といっても楽しげな話ではなくて、南アフリカの貧富の差から人の記憶を盗んで宝物をゲットしてみたりしかもそれが化石っていうのもなんだかニッチなネタではないか。これがまた金になるのか。へぇ。 と思い出してみるとけっこう盛り沢山な話なのだった。

Posted by ブクログ

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