商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | ふらんす堂 |
発売年月日 | 2011/07/01 |
JAN | 9784781403823 |
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拝復
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拝復
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商品レビュー
4.5
2件のお客様レビュー
俳句のみの句集。手こずりながら読む(そもそも読めない漢字が多い、凌霄,藺,葦,葭,徂春とか)。いいな、と思うのはわかりややすい句だけど、少しずつ読み慣れていきたい。 指牢の蛍を覗かせてもらう いつか死ぬ必ず春が来るように 蓋をして浅蜊あやめているところ マフラーは椅子から床へ音...
俳句のみの句集。手こずりながら読む(そもそも読めない漢字が多い、凌霄,藺,葦,葭,徂春とか)。いいな、と思うのはわかりややすい句だけど、少しずつ読み慣れていきたい。 指牢の蛍を覗かせてもらう いつか死ぬ必ず春が来るように 蓋をして浅蜊あやめているところ マフラーは椅子から床へ音たてず 西瓜ほど重くなけれど志 枝豆の殻の小山の夜が更ける 豆腐屋の喇叭に五時のもう暗し 頬杖の風邪かしら淋しいだけかしら お祭の屋台が昨日あった場所
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よし分った君はつくつく法師である 小一時間だけなら蛍になってみたし 「じゃんけんで」が印象的過ぎて、似たような句を探して読んでしまい勝ちになる。だが、そんな「私」の再生産を言葉に敏感な人が易々とする訳もなく、一句一句に新な音とその向こう側に広がる世界を求めている様子が窺える...
よし分った君はつくつく法師である 小一時間だけなら蛍になってみたし 「じゃんけんで」が印象的過ぎて、似たような句を探して読んでしまい勝ちになる。だが、そんな「私」の再生産を言葉に敏感な人が易々とする訳もなく、一句一句に新な音とその向こう側に広がる世界を求めている様子が窺える。 空蝉の中の幸いなる空気 字の小さき補注は読まず秋扇 鳥渡りながらに老いて先へ先へ そんな無邪気な響きの裏には蛍火となってしまったものへの思いがあることは直ぐに分かる。けれど、この句集ではそれがもう少し前に出ている。自身の側に近づいていると言ってもよい。結果としてこの句集の通奏低音として鳴っているのは「老い」ということであるような気がする。「死」ではない。あくまでもその手前の時間を生きているとの実感。例えば失われたものへの思い。現実にはそこに存在しない筈のものであるのに、何故か覚える確りとした肌触りのような感覚。例えば未練と決断の中間地点。それは老いたるものの感覚。あるいはそれを悟りと言うのか。ならば悟りとは随分と人間臭い感覚だなと思う。 山積み林檎の笑いこらえている数個 蓋をして浅蜊あやめているところ 数え日の手のとどかないところかな かと思えば、身の回りのほんの小さなものたちへの目配り。静物のようであって実は生物であること。それは自らの生きるテンポがゆったりとしてくることへの思いがけない贈り物。もう少ししたら人が寝静まった後でしか動き出さないものものたちの舞踏会にも出会えそうな心地がしてくる。しかしまだその日は来ない。 お祭りの夜店が昨日あった場所 本当は逢いたし拝復蝉しぐれ 彼の世にも小春日和か郵便局あるか 気が済んだらしや雲雀の落ちきたる もうすぐそこの角まで来ているのか。逢いたいような、まだこの世に未練が残っているような。しかし、祭りの後の寂しさを感じるのは、今、この時に確かな生きているという感覚があるからこその感情。幸せも死も歩いては来ない。だから歩いてゆくしかない。 そして俳人は日々心新たに見馴れた風景を見詰め、今日の初めての感覚に耳を済ます。その姿勢に敬服する。 鶴渡る空気汚れていはせぬか しかし、そんなことは全て読み手の勝手な思い込み。ほら、こんな句に福島の冬の景色を重ねてしまうのだって。この句の中の俳人はまだ震災を知らない。
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