商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 勉誠出版 |
発売年月日 | 2011/07/01 |
JAN | 9784585290193 |
- 書籍
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別れの儀式楊絳と銭鍾書
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別れの儀式楊絳と銭鍾書
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原題は「わたしたち3人」であるが、翻訳の題はうまくその内容を表現している。その3人とは本書の著者で翻訳者の楊絳、その夫で比較文学者の銭鍾書、二人の娘でのちに英文学者になる銭瑗。夫と娘に先だたれた楊絳が夫との思い出、娘ができてからの3人のほのぼのとした思い出を語る物語である。といっ...
原題は「わたしたち3人」であるが、翻訳の題はうまくその内容を表現している。その3人とは本書の著者で翻訳者の楊絳、その夫で比較文学者の銭鍾書、二人の娘でのちに英文学者になる銭瑗。夫と娘に先だたれた楊絳が夫との思い出、娘ができてからの3人のほのぼのとした思い出を語る物語である。といってしまえばどこにでもある物語のようにも見えるが、この物語が他と違うのは、解放後の幾度もの政治的波に洗われながらも、かれらが自分たちの生活スタイルをほとんどくずさなかったことだろう。もちろん、生活には浮き沈みがあるが、好きな読書、執筆、翻訳をどんなときでも続けたことである。かれらが政治闘争の中でつるしあげにあって自殺まで追い込まれるようなことにならなかったのは、その外国語力によるのかもしれない。実際、銭鍾書は毛沢東選集の英語版の仕事をずっとしてきたし、最後は毛沢東の詩詞の翻訳をしている。それは余人をもって代え難い仕事だったからである。だから、ある意味大事にされた。文革が終わる頃、だれが手配してくれたのか大きな家に住むことができたのも、上からの配慮があったからである。実は、ぼくはこの銭鍾書という人に会ったことがある。いや、会ったどころか、大勢の中国文学者の前で通訳までして、銭鍾書に大いに感謝されたことがあるのである。しかし、そのころのぼくは銭鍾書がどれほど偉大な人かまったく知識がなかった。かれの中国語は無錫なまりがあって、聞きづらかったが、一応手書きの読みづらい原稿はあったし、前もって打ち合わせをしてもらったので、なんとか通訳はできたが、なぜあのときぼくが指名されたか全く不思議だ。それはともかく、そんなわけで、ぼくが3200円もする本書を買ったのは、銭鍾書に対する追悼の気持ちがあったからだ。そのときの印象もそうだったが、本書のなかで描かれる銭鍾書は、本当に愛すべき人物だった。楊絳や娘にとって、学問的には師でも、生活面ではなにもできないどんくさいおっちゃんである。(いや、まったくできないのではなくがんばって料理をしようとしたりしている)楊絳の書き方は、どうしてもエリートの書き方だと感じるところも時にあるし、娘に対する絶賛ともいうべき評価は親ばかだともいえるが、要するに可愛くてしかたがなかったんだろうという気がする。だから、そこに第三者が入ることはむずかしかった。乞われて結婚した娘ではあったが、その夫の影が薄すぎる。なお、p92-8の「証書」は「鍾書」の間違い。同音で見逃したのだろう。p189―14「小川環」は「小川環樹」の間違い。P219「有名になるとは見知らぬ人が幾分多くなること」の意味は不明。原文もそうなのか。なお、文革期に農村に入った二人の生活を描いた楊絳の『幹校六記』もおすすめ。
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