ヴァレンタインズ エクス・リブリス

オラフオラフソン【著】, 岩本正恵【訳】

• 販売会社／発売会社: 白水社
• 発売年月日: 2011/04/07
• JAN: 9784560090152

商品レビュー

2024/10/14

夫婦や恋人達の関係に亀裂が入る瞬間を切り取った短編集。
当然ながら幸せな結末は用意されていない。
些細な出来事、相手の隠し事、ずっと言えずにいた本音。
そんなものをキッカケにして、二人の愛は壊れていく。
どの話も『ピシリ』とひびの入る音が聞こえるんじゃないかってぐらい冷ややかで寂しい。
もう戻せないんだなということが分かって、悲しいような虚しいような気持ちになる。
一篇読み終えるたび、少し傷ついてる自分がいて戸惑う。

2024/10/05

１年12ヶ月、それぞれの月に割り当てられた12章の短編集。
読者が遭遇するのは、ある特定の人間関係が危機的な状況に陥る、その瞬間を捉えた物語だ。登場人物の多くは、作家の故郷でもあるアイスランドに縁があり、その考え方や家族との関係などで大きく影響を受けている。一方で、彼らの生活の基盤はほぼアメリカにあり、いわゆる知的エリートな階級層に属し、その価値観の影響からも逃れられない。
アイスランドにルーツを持ち、アメリカでの成功を掴み取った人びと...。
そうして自他共に認める幸せな人生から一転、彼らは苦悩と絶望へと叩き落される。ほぼすべての物語で、悲惨な最後が待っている。オラフソンの文章は簡潔で緊迫感があり、次から次へと読めるが、一気に読むとかなり気が滅入ってくる。
不誠実、愚昧、欺瞞、悲哀など、人間の負の業をリアルに感じたい人にはおすすめ。

2024/09/24

読み終えたあと、オラフ・オラフソン氏の描くいろんな恋人や家族の物語を、もっと読んでみたいと思った。それくらい、どの物語もよかった。言いたいけれどあえて言わないでいる思いとか、傍目には仲良く見えても、ちょっとでも触れたら壊れてしまいそうな関係の描き方がすごく好きだった。