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東京ひとり散歩 中公新書
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東京ひとり散歩 中公新書

池内紀【著】

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東京ひとり散歩 中公新書

858

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 中央公論新社
発売年月日 2009/09/25
JAN 9784121020239

東京ひとり散歩

¥858

商品レビュー

2.9

11件のお客様レビュー

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2022/01/03

18歳の時に上京し、大学を卒業した後、東京に本社を持つ会社に就職をした。サラリーマン時代は、25年以上が東京勤務、大学時代の4年間を加えると、何やかやで30年間、自分の活動の中心地は東京ということになる(東京に「居住」したのは、大学時代の4年間だけだけれども)。 私の妻はタイ人だ...

18歳の時に上京し、大学を卒業した後、東京に本社を持つ会社に就職をした。サラリーマン時代は、25年以上が東京勤務、大学時代の4年間を加えると、何やかやで30年間、自分の活動の中心地は東京ということになる(東京に「居住」したのは、大学時代の4年間だけだけれども)。 私の妻はタイ人だ。タイ勤務時代に結婚し、10年近く前に私の東京転勤と同時に一緒に日本にやってきた。初めての日本であり、東京にも行きたいところが多くあり、外国人が観光するような場所に、一通り、一緒に行った。妻の親せき・友人が日本に遊びに来る時にも、東京案内を多くした。また、2-3年前から私自身が東京中心部を散歩するようになった。毎日ではないが、都心の勤務先への行き帰りに、都内の色々な駅から、駅いくつか分、1回あたり数kmを散歩することが、習慣と言うか趣味と言うか、そんなことになっている。 観光案内にせよ、散歩にせよ、ほとんどが山手線の内側+東側(東側は銀座・日本橋界隈から浅草あたり)だ。であるが、これが意外と広い。山手線は円周が縦長になっている。縦、すなわち南北で一番長そうに見える、大塚駅から大崎駅まで歩くと、距離は14kmで、3時間かかる。東西はどうかと言えば、新宿駅から浅草寺まで歩くと、距離は10kmで、2時間以上かかる。妻や妻の知人との東京観光、あるいは、私自身の東京散歩で、かなりの場所に行ったつもりなのであるが、これだけ(意外と)広く、また、東京は見どころの多い場所なので、まだまだ歩いてみたい場所は沢山ある。 本書は、筆者の池内紀の東京散歩記とでも言うべきもの。「中央公論」に2年間に渡り連絡されていたものに、「東京人」に書いた2編を加えたものである。筆者の自宅からの日帰りの散歩であるが、これは立派な旅行記であると思う。ここに取り上げられている多くの場所は行ったことはあるが、筆者が書いているような歴史的な背景などについては知らないことばかりであった。歴史を知らなければ散歩が面白くない、というわけではないが、こういう、いわゆる「蘊蓄」を知っていると、散歩も別の楽しさがあるようだ。

Posted by ブクログ

2020/10/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

1940年生まれのドイツ文学者、エッセイストの池内紀氏との出会いも初めて。著者との初めての出会いから、またその著者の著書にも興味が湧いてくる。著者は、カフカの翻訳で著名な方のようだ。 ブックオフで100円の新書を数冊買ったうちの一冊で、2009年9月発行と少々古い。ぶらり散歩をしながら街並みの紹介などもされており、当時と随分変わってしまっている部分もあるだろう。例えば、築地本願寺あたりを散歩された後、築地市場でグルメを楽しまれる様子が書かれているが、こういう辺りは古さを感じざるを得ない。 それでも、東京の主だったスポットを様々なウンチクを語られながら、歴史を振り返りながら散策されるので、ガイドを伴った紙上ツアーを楽しむことができる。 その地にまつわる歴史の回想があったり、地名の由来の話が出てきたり、その地に関わる書籍の紹介があったり、また街並みの分析をしてみたりと、最近のすぐにグルメ話に直結するものとは異なり、深みのある散歩である。 例えば、紀尾井町。江戸の頃は大名屋敷が占めていて、紀伊和歌山、尾張名古屋の両徳川氏、また近江彦根藩井伊氏の中屋敷が並び立っていたことから、明治の初めにその頭文字をとって命名されたと紹介。 さらにお隣の平河町は、二代将軍徳川秀忠が名付けた由来などが紹介されている。後半に出てきた「汐留」の地名に関する話も面白かった。 こんなくだりを読むと、地名の由来本も読んでみたいなと新たな興味を広げてくれる本でもある。 法務省のある辺りは、米沢藩上杉家の江戸藩邸があったとか、文京区西方は、少し前まで「阿部様の町」とよばれていたという話から、旧福山藩の阿部家の歴史につながっていく。 向島では、永井荷風の「墨東奇譚」や滝田ゆうの漫画「寺島町奇譚」などに触れられたり、護国寺の共同墓地には、漱石や荷風、鏡花、八雲が眠ると、ご自身がリアルに馴染んでこられた作家に思いを飛ばしたりされている。 こうして、また荷風の時代のその土地の見え方はどうだったのかなとか、新たな関心に結びついていく。 愛宕山にある青松寺前にあったという戦中下の名残「肉弾三勇士」のブロンズ像の話や、築地川銀座公園にある「名犬チロリ」の像などは、その存在すら初めて知ったが、その背景にある話をちょこっとネット検索してみると、さらに深みのある話を知ることができる。もちろん著者は、そのことを十分知って、本書を著されているから、そういう話が登場するのであるが・・・。 本書でもっとも楽しかったのは、「マイ・アンダーグランド・シティ 八重洲地下街」のグルメ話と、「一日古書めぐり 早稲田・本郷・神田」だった。著者が優雅にひとりきままな散歩を満喫されている様子がとくに感じられ、読んでいるこちら側もとても楽しい気分になれた。

Posted by ブクログ

2020/05/06

▼こういうの、あるようで無い良書。人生初の池内紀(おさむ)さん、鉱脈掘り当てました。緊張感。息詰まるサスペンス。目を見張るような構成。伏線回収どんでん返し。内臓を貫かれる社会への問題意識。涙腺を爆撃する感動。そういうの、ゼロです。実にこう、ナンと言うことも無い一冊。ふわふわとしあ...

▼こういうの、あるようで無い良書。人生初の池内紀(おさむ)さん、鉱脈掘り当てました。緊張感。息詰まるサスペンス。目を見張るような構成。伏線回収どんでん返し。内臓を貫かれる社会への問題意識。涙腺を爆撃する感動。そういうの、ゼロです。実にこう、ナンと言うことも無い一冊。ふわふわとしあわせ、肩の力抜けまくりのヌルい温泉気分。 ▼ただ、品格はあります。チョイと贅沢なお茶漬けみたいな味わい。これも読書の快楽。なかなか狙って出来るものでもなく「そういうの狙っています」という自意識の臭いがすると途端にどっちらけになる。この道の達人は内田百閒さんそして安野光雅さんという系譜をイメージしていますが、池内さんにもそのDNAがあるんですね。誤謬を恐れずに言うと、然程オモシロクも無いンです(ぢゃあなぜ読むんだろう)。でもツマラナクもない。それがクセになってくる。腰砕けな、面白くないカンジが面白くなってくる。まあ詰まり、かなり得難いオモシロさ。うーん。天然? *「哀愁の街に〜」の頃の全盛期の椎名誠さんなんかは、似てるけど違うと思います。アレは一種、柳家小三治さんのロング・マクラ的な、話法としては徹底したエンターテイメントで、とっても受け取り手に対してフレンドリーでプロのサービス。内田百閒〜安野光雅〜池内紀ラインは、品とユーモアはあるけど、もっと確信犯的に(あるいは本能的に)自己完結的で、結果的にアヴァンギャルド…いや、そういう気取った狙いではなくて…単純に、独りよがりで破綻が多い(笑)。読み手、客のことは、いつの間にか置いてけぼり(でも書き手は自覚してない気がする)。でも偉そうと言うのでもなく、謙虚…いや、自然体か。それが芸になってるのが凄い。編集者によってはゾッコンになるのでしょう。 ▼「東京ひとり散歩」池内紀。初出2009年。中央公論新書。2020年5月読了。池内さんは、これまで、「ドイツ文学者で、翻訳者。そしてエッセイも書いておられる。鹿島茂さんのドイツ版みたいな感じらしい」ということは知っていました。ただ、やっぱりカフカとかになるし、なんか敷居高そうだなって思っていました。下のお名前「紀」もどう読むか分からなかったし(「おさむ」と読むそうです)。ちなみに1940-2019。享年78でしょうか。合掌。 ▼恐らく池内さんの仕事の中でもかなり柔らか目のものなのでしょうが、「中央公論」「東京人」に掲載した「ぶらぶら歩きエッセイ」。どんな感じかと言うと。 東京を歩く。日本橋兜町にやってきた。証券取引所というのが、あるところまでは誰でも見物できる。立会場も見れる。ナルホドと思って見物した。だけど全然縁が無いので空しくなったので、10分くらいで去った。おしまい。 ・・・と、言う感じ。そんな「街観察ひとりゲーム」が延々と続きます。ゲームと言っても勝ち負けもルールもない。いや、あるのかも知れないけれど、本人には厳格にアルような気がしますが、分からない(笑)。フィリップ・マーロウものの、脱線部分だけの集合体みたいな。ハードボイルドといえば、ハードボイルドなんです。 ▼文章は見聞的な写生。あと、池内さんが思う、よしなしごと。やはりブンガク者、特段ドイツに偏らなくても雑学豊富。池波正太郎、永井荷風という東京周遊の先達について。江戸の歴史、地理について。演劇、古本、食べ物。どうやら浪花節がお好き・・・という振れ幅で、たゆたいます。どこか「現世快楽」というよりは、「思索に耽るヘンテコおじさん」という香りがして、何かしらドイツっぽい気もしなくもありません(?)。 ▼いろいろきっと思うことはあるのでしょうが、「現代風俗批判」という上から目線にだけは、なりません。淡々と迷い込んだ知らぬ物事を、分からぬものは分からぬままに打ち捨てて。ヤマ無し、オチ無し、意義も無し。「ふーん」と「へええ」と小さな発見。小粒な味わい。でもきっと矜恃というかモラルというか、そういうものはきっとあります。「ヘイト感情」みたいなもの、「間違ってる!と正義の鉄槌を下す」みたいなものは、部屋着と一緒に自宅の玄関にスッパリ置いてきたような、すがすがしい謙虚さ。意見では無く、感想。連想。 ▼興趣は尽きません。池内さんの残した文章を読む愉しみが、この先たくさん待っている。わくわく。 ▼「皇居東御苑」というのが、完全無料の贅沢庭園だということを初めて知りました。いつか、行ってみよう。

Posted by ブクログ

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