商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | みすず書房 |
発売年月日 | 2008/09/22 |
JAN | 9784622074144 |
- 書籍
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なぜアーレントが重要なのか
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なぜアーレントが重要なのか
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1942年から1943年にかけての冬、アーレントはもっと強烈でもっとも深い構想へと駆り立てられる。ナチの強制収容所のニュースがアメリカに届いたとき、彼女の本は、彼女が過去やその因果関係に携わる歴史家としてではなく、政治思想家として、ナチに支配された東ヨーロッパで絶滅収容所が昼夜稼...
1942年から1943年にかけての冬、アーレントはもっと強烈でもっとも深い構想へと駆り立てられる。ナチの強制収容所のニュースがアメリカに届いたとき、彼女の本は、彼女が過去やその因果関係に携わる歴史家としてではなく、政治思想家として、ナチに支配された東ヨーロッパで絶滅収容所が昼夜稼働しているという信じがたい事実に応答していく手段となった 。
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アーレントの代表的な三つの著作、 『全体主義の起源』 『人間の条件』 『精神の生活』 に各一章を割きながら、 アーレントの唯一の弟子とも言える著者が 俄に「アーレントブーム」に湧く現在に、 アーレントを最も近くで学生として学んだ身として、アーレント自身に、そして彼女の考えたことに...
アーレントの代表的な三つの著作、 『全体主義の起源』 『人間の条件』 『精神の生活』 に各一章を割きながら、 アーレントの唯一の弟子とも言える著者が 俄に「アーレントブーム」に湧く現在に、 アーレントを最も近くで学生として学んだ身として、アーレント自身に、そして彼女の考えたことについて、語る。 『全体主義の起源』を扱う第一章から、アーレント自身の生き方や彼女を取り巻いた環境について触れ、アーレント(とその思想)について概観出来るであろうという読者の期待に応えつつも、『全体主義の~』についての解説は中々為されず、ちょくちょく著者自身の現代の諸問題についての政治的な意見・主張へと脱線を繰り返すため、 アーレント好きのおばちゃんに、延々と政治的な説教をされているようなストレスを感じる。 我慢しつつ、第二章に進むも、同じ調子で話しは続く。『人間の条件』で展開される彼女の思想の中心概念にしっかりと触れてはくれるのだが、核そのものとは言い難い「許し」の概念に関する記述にウェイトが偏っており、やはり「弟子による概説」的なものを期待する読者はもどかしさを感じるかもしれない。 しかし、第三章から雰囲気は大きく変わる。『精神の生活』について、そこで扱われる「思考」「意思」「判断」について、至極丁寧に-アーレントに対して適切な距離を失うことなく-解説する。 『精神の生活』は「思考」と「意思」についての上下巻からなる構成であり、最もポイントとなる「判断」については未完のままとなっている。 その「判断」についての考察が入念に、説得力を持って行われており、この第三章のためだけにでも十分に本書を購入する価値はあるだろう。 そして『精神の生活』と、そのエッセンスを扱う中で、それだけに留まらない、(現代まで続く、)アーレント自身の思考の道筋そのものをも、この第三章は描き出す。 第一章、第二章で触れられてきた彼女の生涯の断片は統合され、浮かび上がるアーレント像から、しっかりとその薫陶を受けた著者が第一章・二章であのように記述をしたことにも、振り返って納得が行った。 著者は歴然としたアーレントの弟子であり、俄に熱を帯びる「アーレント論」を正確に見つめる上でも、勿論、彼女の考えたことを確かに理解するためにも、有用な本であると思う。
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アーレントが徹底して思考したことを、今現在の課題としてどう生かしていくのか。弟子による内的対話の記録。 個人的な印象から語ろう。3.11の東日本大震災以降、ひとはアーレントの著作をよく読むようになったのではないかと思う。 それもそのはずだろう。全体主義が深く世界をおおい、そのなかで暴力を深く省察したアーレントはまさに20世紀を代表する哲学者であり、道しるべであるからだ。20世紀の問題に蓋をして目を閉ざして生きてきたのが戦後日本の歩みである。だとすれば震災によってその開かずの門が突如として開き、矛盾と直面したとき、アーレントの言葉を求めたのだろうと思う。僕自身もその一人だ。 ファシズムとスターリニズムを全体主義として批判し、ひとりの人間が「命令でやっただけです」と大量殺戮に手を染めていく内面の過程を抉った労作は、矛盾に苛立つ感覚を鎮めるとともに、問題を他人事として突き放すのではなく、自分自身の課題として設定し直してくれるからだろう。 著者のヤング=ブルーエルは、いっさい学派を形成しなかったアーレントの弟子である。ハイデガー、フッサール、ヤスパースに学んだ彼女はまさに現代思想においては輝く「良心の星」といってよい。しかし著者は彼女をあがめ立てるような筆致は一切とらない。かといって貶めようとするわけでもない。彼女の思索と著者は対話するのだ。そのことでアーレントの生きた姿を浮かび上がらせてくれる。 本書は『全体主義の起源』『人間の条件』『精神の生活』を軸に、アーレントの思想の根源を描き出す。それはまさに、弟子・ブルーエルがアーレントの思考を徹底的に追体験していく思索のドラマだ。 アーレントは20世紀の問題を怜悧に指摘した。そしてその課題は未解決である。アーレントの肉声と対峙するブルーエルの思索の軌跡とは、未解決の「現在」との関係で、彼女の思索をどう生かすのかというひとつの挑戦にもなっている。彼女の著作は「難しい」とよくいわれる。そう痛感する人には、本書をまず読むことをおすすめしよう。 アーレントのこだわりのひとつは「想像力」。そして、人間性とは、他人の眼差しから世界がどのように見えるのか、それを自分で「想像」することでもある。師と弟子の対話は、その美しい見本でもある。
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