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ブータンに魅せられて 岩波新書
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ブータンに魅せられて 岩波新書

今枝由郎【著】

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ブータンに魅せられて 岩波新書

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 岩波書店
発売年月日 2008/03/19
JAN 9784004311201

ブータンに魅せられて

¥814

商品レビュー

3.8

34件のお客様レビュー

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2024/08/23
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※このレビューにはネタバレを含みます

ブータンに魅せられて 「赤瀬川原平のブータン目撃」に次ぐブータンもの第2弾の読書です。 前にも書きましたが、ブータンは「GNH(Gross National Happiness)=国民総幸福量」を標榜しているチベット仏教徒の国です。ヒマラヤのお膝もとにあり、中国のチベット自治区とインドという大国に囲まれた日本の九州くらいの大きさの国です。 著者はブータン国立図書館顧問として鎖国状態にあったブータンで10年以上を暮らした方で、本職はチベット仏教の研究者です。 本書は、著者がブータンに行くために行った様々な試行錯誤から始まり、ブータンの歴史、名君ワンチュック四世の治世、国立図書館顧問の仕事などが、書かれています。 竹蔵が何より感動したのは、ワンチュック四世の政治的な様々な決定でした。 * 民主化を推し進めた議会の設置と国王の罷免権の付与 * 地方分権の推進(大切なことを決める際の地元住民との直接対話) * インド反政府ゲリラ掃討作戦の遂行(自ら王子と共に陣頭指揮に立ったこと) * 基本方針としてのGNHの推進(経済発展より文化・習慣の尊重すること) 為政者は自分の権力基盤を強化することが多いですが、国王の罷免権を議会や国民投票の結果に与えることによって国王世襲制の偏りを補おうという発想自体に竹蔵は感銘を受けました。 ちなみにイギリスのレイチェスター大学が2006年に行った”世界幸福地図”調査では、一位はデンマーク、二位がスイス、三位はオーストリアで、ブータンは九位、日本は九十位だったとのこと。 本書では、ワンチュック五世の統治のもと、文化・習慣を守りながらの経済発展がどこまで可能か?という点に関して今後の困難さを指摘する形で終わっていますが、”ヒマラヤが聳え、雨雪が降り、森林が茂る限りブータンは安泰である”という前国王の確固たる価値観を表した言葉が国民の総意としてある限り大丈夫かなと思います。 竹蔵

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2021/07/11

 日本人としても女性としても初の世界銀行副総裁に就任した西水美恵子氏は、著書「国をつくるという仕事」で、担当した南アジア地区のリーダーたちを論評しています。そのなかで、理想的人物として描かれているのが、ブータン国・雷龍王四世(当時)。  国民と同じ質素な生活をし、GNPではなく...

 日本人としても女性としても初の世界銀行副総裁に就任した西水美恵子氏は、著書「国をつくるという仕事」で、担当した南アジア地区のリーダーたちを論評しています。そのなかで、理想的人物として描かれているのが、ブータン国・雷龍王四世(当時)。  国民と同じ質素な生活をし、GNPではなくGNHを考案。権力を放棄して王政から民主制へ移行。国境紛争で戦闘となる際には兵士を率いてやむなく応戦するも、「相手にもこちらと同様に愛しい人がいる」と殺生を慎ませ、不幸にして亡くなった兵士の家には王自ら弔問。  昭和天皇の大喪の礼で来日した際、経済大国だった日本に援助を求めて居残る国が多いなか、雷龍王は一切の「葬儀外交」を行わず、大喪の礼のみを行って帰国。記者がその理由を尋ねると、「日本国天皇への弔意を示しに来たのであって、日本に金の無心に来たのではありません」と答え、颯爽と機上の人となったのは有名な話です。  本書はブータンの生活風景と雷龍王四世の退任時について書かれています。小国のため軍事支援をインドに頼らざるを得ず、不平等な条約や慣行が古くからあったなか、「対等」なパートナーに引き上げることを在位中の目標とし、時間をかけて少しずつ実行。これが実ったことから「役目は終わった」と退任を決意されたとあります(王位継承した雷龍王五世は新婚旅行で来日)。米国依存の某国にあって、ブータンの清々しい生き様は参考になるのではと思えた一冊です。

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2019/10/10

GNH=国民総幸福 この概念で世界から注目されるブータン。 この概念は早くも1976年には謳われたらしい。 本書の6割くらいは、著者がブータンでの10年の生活で感じた ブータンの人々の気質、生活の雰囲気についての記述。 興味深かったGNHについては最後の方に出てくる...

GNH=国民総幸福 この概念で世界から注目されるブータン。 この概念は早くも1976年には謳われたらしい。 本書の6割くらいは、著者がブータンでの10年の生活で感じた ブータンの人々の気質、生活の雰囲気についての記述。 興味深かったGNHについては最後の方に出てくる。 読む前の期待感では、 ブータンはGNHについて、どんな知恵を使って国の制度に 落とし込んでいるのだろう、というものがあった。 本文の記述によると、そういう制度的なものではなく、 ブータン国王もこう述べているらしい。 「『幸福感』とは非常に主観的なもので、個人差があるため、 国の方針とはなりえない。 正確に言うなら、国民一人ひとりの『充足』である。 充足感を持てることが人間にとって最も大切である」 つまり、具体的な手法で国全体の進捗を評価するGDP のような明確な体系はもたない。 本書ではより推し進めて、その方針とは 以下のような問いを発し続けることだ、と述べている。 (あらゆる行為、活動に際して) 「それがあなたが人間的であることに対して どういう関係があるか?(寄与するか?)」 感想として、 GNHという制度があることへの期待感が いい形で裏切られたことが、興味深かった。 科学技術や経済原理は、 いうなれば誰しもに通じる共通言語だ、 と思っていてそれは正しいと今でも思うが、 唯一のものではないということに気付かされた。 他に面白いのは、 ブータン通産省の会議において、国外への 輸出品目を検討した際、 ある官僚から 「ブータンが誇る”良質の時間”はどうか」 という提案があったということ。 言葉尻だけからの厳密性は保留しておいて、 こういう発想が出てくることは非常に面白い。 また、水源涵養林としての森林の意義を 「電力施設としての森林」と早期に捉え、 国の7割が失われる前にその価値を明確化したところは、 先走って失敗した先進国に学んだ賢い例である。 また、 近年近代化が進みつつあるブータンの、 途中をすっ飛ばして一気に携帯電話普及、とか、 衛星電話普及、とかいう潔さには、 賢明さを感じます。

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