生態系ってなに？ 生きものたちの意外な連鎖 中公新書

江崎保男【著】

• 販売会社／発売会社: 中央公論新社
• 発売年月日: 2007/11/25
• JAN: 9784121019233

商品レビュー

2019/01/20

どうやら鳥類の生態が専門らしい著者の「生態系」に対する認識を展開した本。

新書の形態にふさわしい文章で綴られていて読み易い。

研究対象としての専門は鳥類だけど、生き物全般が好きなナチュラリストタイプの方だということが伝わって来る。

私がいた研究室の隣の研究室だった高林先生のナミハダニなどについての化学生態学の事例も出て来て、ちょっと懐かしかった。

2012/11/19

生態系は、様々な生物の関係の繋がりによって、パズルのように一つの全体を為しています。

ですから、本書が生態系の話を通して描く自然の姿は、一般的に言われるような「弱肉強食」の姿とは限りません。いわば、個々の生物は生態系の中で、それぞれの役割を担っているのですね。

その生態系においては、個々の生物が利己主義のすえに力を合わせて生存していたり、同種同士で社会を作っていたり、様々な視点を通して、ダイナミックな、活きた生態系の姿が見えてきます。

ただし同時に、人間もその生態系の中に位置づけられているということを忘れてはならないのでしょうね。生物多様性の保全とは、その土地に続いてきた生態系を守ること（引用、185ページ）。保全の名のもとに原住民が追い出されるというような事件を見ると、この重要さをあらためて感じます。

様々な具体例が載っていて面白い本です。図写真があればもっとよかったかとも思いますが、そうすると分厚くなるでしょうから、仕方ないですね。

2012/02/10

「生態系」は、もともと生態学という生物学の一分野で発明された言葉であるという。本書は、そうした専門の立場から、生物同士の微妙なバランスを、例を挙げながら説明していく。
ある植物は、虫に葉っぱを食べられると、その虫を餌とする虫を呼び寄せるサインを出して身を守ろうとする。こうした、自然界の巧妙な仕掛けには本当に感心させられる。あらゆる生物たちは、さまざま相互作用を通じてつながっており、そうした関係を筆者はジグソーパズルに例えている。何か所か抜けても、とりあえずは大したことはないが、それが進むとやがて全体が崩壊してしまう。まさに現在の地球はそうした状況の只中にあるといえる。