商品詳細
内容紹介 | 内容:夜の声.熱帯の恐怖.廃船の謎.グレイケン号の発見.石の船.カビの船.ウドの島.水槽の恐怖 |
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販売会社/発売会社 | 東京創元社/ |
発売年月日 | 1985/08/01 |
JAN | 9784488536015 |
- 書籍
- 文庫
夜の声
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夜の声
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商品レビュー
3.4
15件のお客様レビュー
恐くて気持ち悪い場面がたくさんある。のだけど、海の上で異様なものと遭遇するというシチュエーションがツボなせいで恐怖よりも楽しさが勝ってしまった。基本的にはどの話も船の上とかどこかの島が舞台となり、主人公たちのすぐ近くには「海」がある。というか「海」が主人公といった方が適切かも。作...
恐くて気持ち悪い場面がたくさんある。のだけど、海の上で異様なものと遭遇するというシチュエーションがツボなせいで恐怖よりも楽しさが勝ってしまった。基本的にはどの話も船の上とかどこかの島が舞台となり、主人公たちのすぐ近くには「海」がある。というか「海」が主人公といった方が適切かも。作者はきっと海が大好きで、海のことが誰よりも恐いんだろうなあと思う。 また、外洋航海船で給仕として働いていた作者の経験が反映されているからか、恐怖譚という以外にも冒険譚という印象があってわくわくした。FF・ドラクエなんかだと、船の旅が始まれば毎度欠かさず海のモンスターと戦うことになるけれど、本書にはそれに近い楽しさがあった(訪れる怪物への対抗策はゲームに比べるとぜんぜんないけどそこがまたいいのだ)。 ラヴクラフトに霊感を与えたというのも納得の海洋奇譚。夜の海って素敵だ。それだけで異界とつながってるような場所になるから。
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基本的に船の上で物語が展開していくのが特徴的。海に囲まれている、孤立した空間だからこそ生まれる緊迫感があったように思う。 8作品から成る短編集。「夜の声」は、最初は恐ろしく感じた声の主に段々感情移入してしまい、最後は切なさでうめきたくなった。
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ウィリアム・ホープ・ホジスンは十三歳の時に父親を亡くし、家族を養うために船乗りとなった。その時の過酷な体験が後に、彼を海洋ホラーの大家にした。 本書は『幽霊海賊』に代表される長編や『幽霊狩人』のようなシリーズものではなく、短編で構成されたホジスンの傑作集である。状況を時に仄め...
ウィリアム・ホープ・ホジスンは十三歳の時に父親を亡くし、家族を養うために船乗りとなった。その時の過酷な体験が後に、彼を海洋ホラーの大家にした。 本書は『幽霊海賊』に代表される長編や『幽霊狩人』のようなシリーズものではなく、短編で構成されたホジスンの傑作集である。状況を時に仄めかしに徹し、時に詳細に描写することで恐怖と高揚を煽られ刺激される8篇を収録。 以下、ちょっとだけネタバレありの各話感想。 --------------------------------------------------------- 『夜の声』 暗く星のない夜。靄に包まれた海からかけられた声。求めに応じて食料を分けてあげると、声の主は自身が姿を見せたくない理由とそうなった経緯を語り始めた――。 (漂流した先の小島で自らの身体が悍ましい変質を遂げていく恐怖を描いた作品。クトゥルフ神話TRPGの「不浄のキノコ」の元ネタかもしれない。邦画『マタンゴ』を思わせるがそれもそのはずで、映画は本作を翻案したものというのは有名な話。) 『熱帯の恐怖』 真夜中、当直のわたしは後輩と甲板上でおしゃべりをしていた。ふと、後輩がわたしの背後を見て恐怖を露わにする。背後に目をやると、そこには、巨大な濡れた口が月光を浴びてそびえ立っていた――。 (突如として海から現れた、飢えた怪物との死闘を描いた作品。短編故に序盤から怪物が登場し、全編に渡り生死をかけた静と動の展開が交互に起きるためにどんどんページが進んだ。怪物の描写は映画『ザ・グリード』を彷彿とさせる。) 『廃船の謎』 辺り一面海藻が漂う海域で凪となり、わたし達は足止めを食らっていた。暫し時が立った所で、古い廃船がこちらに流れてきた。様子を伺っていると別の方向から帆船が現れ、やがて廃船に近い距離につくと俄に騒がしくなり、廃船に攻撃をし始めた。一体何が起きているのか――。 (クライマックスのおぞましい展開はなかなか。逃げ場が制限されている状況下で被害が最低限で済んだ描写なのは、船乗り特有の統率が反映されているからだろう。) 『グレイケン号の発見』 わたしはヨットでの海洋旅行を計画した折、友人のネッドを誘った。彼はグレイケン号の失踪により、乗船していた恋人を失って傷心中だった。旅行の途中、ネッドは船員とともに反乱を起こし、わたしや船長を監禁し、船をサルガッソー海へ向けた。はたしてそこにはグレイケン号の姿が――。 (海洋ホラーとアドベンチャーとロマンス情緒をかけ合わせた作品。クライマックスの救出劇は読み応えがあるが、ご都合主義な展開に好き嫌いは分かれるだろう。) 『石の船』 霧と悪臭が漂う海の彼方から、形のないぼんやりとした光が見えた。次いでうめき声のような音と銃声または小さい大砲を撃ったような音。怪しんだわたし達はボートに乗り移るとその源に向かった。そこにあったのは、全体が石でできた幽霊船で――。 (恐怖を生む現象が最後に科学的合理性を以て解明されていくのが特徴的な作品。それでも恐ろしいものは恐ろしい。怖いものは怖い。) 『カビの船』 嵐が過ぎ去った後、近くにあったのは何十年も海を彷徨っていたと思しき廃船だった。潮の流れに乗って近づいてくる廃船から湯気か煙のようなものが立ち上っているのを見たわたし達は、調査目的で乗り込むと、その船は全体がカビで覆われていて――。 (カビとあるがその実態はスライム状の怪物が乗り込んできた船員を襲ってくる作品。映画『ブロブ』の海洋版と表現するとイメージしやすいかもしれない。) 『ウドの島』 甲板員のピビーは船員で唯一、船長のジャットに可愛がられていて、時折船長から宝や女や怪物が入り混じったほら話を聞かされていた。ある時、船長はとある島の近くに船を停泊させると、ピビーだけを同行させてボートを島に近づけた。そして彼をボートに残すと島の奥に姿を消す。やがて悍ましい声と共に銃声が聞こえ、船長が姿を現す。次いで船長を追いかけて姿を見せたのは、蟹の鋏のような手をした女たちだった――。 (立場は弱いがしたたかな船員ピビーが、粗野な船長に振り回されながらも最後にはきっちり利益を得る、海洋ロマン溢れる冒険譚。) 『水槽の恐怖』 とある町の郊外には、周囲にある別荘への水の供給を担っている巨大な水槽があった。そこに通じる小径で老紳士が絞殺体で発見される。次いで現場を警備していた警官もまた絞め殺される。やがて最初の被害者の所持品を持っていた男が逮捕されるが、事件に関わった医者は、彼は盗人だが殺人者ではないと言う――。 (水槽のそばで発生した殺人事件をめぐる怪奇ミステリー。なお真相は真っ当なものではない。)
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