いじめの中で生きるあなたへ 大人から伝えたい「ごめんね」のメッセージ

小森美登里【著】

• 販売会社／発売会社: WAVE出版/WAVE出版
• 発売年月日: 2007/05/17
• JAN: 9784872903010

商品レビュー

2024/07/05

いじめの問題は社会で起きている問題全てへと通じているという観点に共感する。
それは根源的に言えば，自分さえよければ良いというエゴイズムに起因したものだ。

いじめを本当の意味でなくすためには「絶対にダメだ」という反対の言葉を述べるだけでは成し得ず，まず全ての人にとって，その人の生が肯定されるような，"愛"が感じられる社会を形成していかなければならないという主張にも得心が行く。

科学技術の発展とともに，資本主義，自由経済の進展が極限にまで達して，行き詰まりを見せ始めている現代社会が見失っているものは，やはり『星の王子さま』でも示されているように，「目には見えないもの(＝人の心)こそが本当は1番大切である」ということだし，だからこそ著者が残念ながら亡くなってしまった娘さんに伝えていたような，黄金律(※正確には白銀律の「自分がされたくないことを人にしてはいけない」だが)を遵守することが必要になってくるのだと思う。

娘さんが亡くなる直前に伝えてくれた，最も大切な言葉，「人は優しい心が1番大切だよ。その心を持っていない子たちの方がかわいそうなんだ。」に，私自身としてはソクラテスを見た。

「世にも優れた人よ。あなたは、知恵においても力においてももっとも偉大でもっとも評判の高いこのポリス・アテナイの人でありながら、恥ずかしくないのですか。金銭ができるだけ多くなるようにと配慮し、評判や名誉に配慮しながら、思慮や真理や、 魂というものができるだけ善くなるようにと配慮せず、考慮もしないとは」

これから先の時代，人が生きていくのに最も大切なのが"よく生きること"(徳を備えて生きていこうとすること)へなっていくことを願うし，本書を読むことによって，これからの時代を担っていく子どもたちや若者が，生きることの本質，人がお互いに関わりを持ちながら生きていく中で，最も大切にすべきものとは何か？を見失わないで，よりよく生きていけることを願っている。

そして我々大人たちは，そういう世の中を創り上げていく義務と責任を負っているのだと改めて強く認識せねばならないのだと思う。

2007/08/28

言葉を追うだけで、著者が体験してきた苦しみ・辛さが胸に迫ってきます。社会が生み出したいじめと言う現象を正しく捉えることが出来る、命を掛けた体験記は必読です。