商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 筑摩書房 |
発売年月日 | 2004/07/07 |
JAN | 9784480088680 |
- 書籍
- 文庫
八月の砲声(下)
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八月の砲声(下)
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商品レビュー
3.6
11件のお客様レビュー
「歴史家はまず語り手でなければならない」と著者は言う。確かに、ただ単に歴史的な事実だけを並べても、それは歴史を語ることにはならない。もちろん、それには語り手の恣意的な解釈が入る余地もあるのだが、それも歴史というもののある一面であることにはまちがいはないのである。
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タイトルの通り1914年の8月からの1ヶ月を中心に第一次大戦を描写する。マルヌ会戦のくだりも量は少なくその後は戦争は膠着していくと綴る。第一次世界大戦の概況を理解するには少し違うのかな。ただ戦争がどう始まっていったか、短期決戦を目論んだ両陣営がどう泥沼に進んでいくかのさわりは分か...
タイトルの通り1914年の8月からの1ヶ月を中心に第一次大戦を描写する。マルヌ会戦のくだりも量は少なくその後は戦争は膠着していくと綴る。第一次世界大戦の概況を理解するには少し違うのかな。ただ戦争がどう始まっていったか、短期決戦を目論んだ両陣営がどう泥沼に進んでいくかのさわりは分かるかもしれない。どこがピューリッツアー賞なのかはあまり分からない。しかし前にも書いたがこの時代の戦争は難しい。技術がすごい勢いで進んでいく。この戦争の初期の頃は飛行機は主に偵察用でパリに数個の爆弾を落とすだけだったが、1945年には飛行機で原爆を落とすのだから科学の進歩は恐ろしいし、如何にすごいスピードで技術開発が進んだかもよく分かった。何万人という軍を動かすのは難しい。しかも無線などの装備が陳腐だと本当に難しい。兵の状況や敵軍の状況を理解して作戦を立て実行するのは難しい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
本書『八月の砲声』は、ピュリッツァー賞を獲得したバーバラ・タックマンの代表作。 上巻に続く下巻では、まず西部戦線の状況から描かれます。 ドイツのベルギー侵攻を確認したフランスは、とうとう対独作戦計画「プラン17」を発動します。アルデンヌ地方を打通して一気にベルリンを落とす確固たる決意を固めたフランス軍でしたが、そこで見たのはなんと自軍を上回るドイツ軍の壁でした。 それから舞台は東部戦線へ移ります。ドイツの総動員により兵力が続々と西部に移るのを確認したロシアは、フランスとの約定を果たすために「19号計画」を発動、レネンカンプフとサムソノフの率いる二個軍の大軍勢が東プロイセンに雪崩を打って攻め込みます。 しかしそこでドイツにおける二人の将軍の歴史的な邂逅が果たされます。 のちに参謀本部のトップとなりその後のドイツ軍快進撃の原動力となりつつも、最終的にドイツ帝国を「棺桶」に導くことになるヒンデンブルクとルーデンドルフの名コンビです。 二人は東プロイセンはタンネンベルクで、ロシアに対する歴史的勝利をおさめます。 その後舞台は再び西部戦線へ。 ドイツ軍の大波に押されまくるフランス軍とイギリス派遣軍。フランス軍内では参謀長ジョフルと第五軍司令官 ランルザックとの作戦を巡る激しい論争が発生し、パリに迫るドイツ軍を前に政治家たちも大きく動揺・混乱します。 イギリス派遣軍を率いるフレンチをはじめとした将軍たちは、迫りくる敵の大軍に殲滅される悪夢が日ごとに現実性を帯びる中で、本国に逃げ戻るか、それともあくまでフランスとともに戦い抜くかの選択に苦悩します。 しかしドイツ軍の内実も順風満帆ではありませんでした。 参謀長の小モルトケはフランス軍の動きから包囲殲滅失敗という不安な影に常に怯えます。 そして神出鬼没でその規模もわからない不気味なイギリス派遣軍に頭を悩ませます。 それに加えて、想定よりもかなり早いロシアの侵攻に大きく動揺。 事前作戦計画においては「東プロイセンをロシアに取られても構わない」と割り切っていたものの、現実にロシアの侵攻を目の当たりにしたドイツ首脳たちは「ドイツ発祥の地」を奪われる可能性に大きく動揺します。 「パリ失陥は避けられない・・・」、フランス政府がとうとう首都の遷移を決断する中、劇的な展開が発生します。ドイツ軍の最右翼で、フランス軍を殲滅させる「死神鎌の切っ先」であるクルック第一軍がパリを目の前に突如進軍方向を変更します。 ちょうどパリ防衛司令官に任命されたばかりの「運命の人」ガリエニは、側面を暴露したクルック軍への総攻撃を決意。これに同意したジョフルは将軍たちに呼びかけます、「紳士諸君、マルヌで戦おう!」。 物語の本編はここで終了します。「マルヌ奇跡」と呼ばれた、あの有名な会戦の戦闘経過は詳しく語られず、「マルヌ会戦後」という第一次大戦の概観を語った小さなサブタイトルで大まかに述べられる程度です。 しかしそれでもこの下巻もかなり読みごたえがあります。 訳者のあとがきでは、「・・・私は仰々しい説明よりも、小さな事柄を探求したい。哲学者であるよりは、語り手でありたい」というタックマンの言葉が紹介されています。このスタンスは上下巻通じて貫かれています。 歴史的人物たちの一挙手一投足、その精神の揺れまでを詳細に語らんとしている筆致には異様な臨場感を感じることができます。そしてこれが「仰々しい説明」以上にドラマチックな印象を感じさせ、読者を作品にのめりこませる効果があると思います。 上巻と同様に、やっぱり情報の恣意的な引用が散見されますが、それを補って余りある大変面白い名作だと思います。
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