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殉情詩集・我が一九二二年 講談社文芸文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 講談社/講談社 |
発売年月日 | 1997/07/14 |
JAN | 9784061975767 |
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殉情詩集・我が一九二二年
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心を人に与え得て この日 われひとり 花なき庭をゆき 月なき窓を開く。 断章 さまよひくれば秋ぐさの 一つのこりて咲きにけり、 おもかげ見えてなつかしく 手折ればくるし、花ちりぬ。 わがはたち まなびやのふみうりはらひ 国禁のふみよみふけり さけたうべ うたあげつらひ なみだするはひとのしらぬま 犬吠岬旅情のうた ここにきて をみなにならひ 名も知らぬ草花をつむ。 みづからの影踏むわれは 仰がねば 燈台の高きをしらず。 …… ただ思ふ 荒磯に生きて松のいろ 錆びて黒きを。 わがこころ 錆びて黒きを。
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ひとつひとつの唄からはエントロピイなきエネルギイが見られ、 諧謔的な純度高い清冽な意志は瞠目せざるを得ない。 韻律を収斂し剪定された詩たちには祝福と花束を与えたい。
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慶應大学・三田キャンパスの片隅に、歌碑が建っている。「さまよひ来れば 秋草の ひとつ残りて咲きにけり おもかげ見えてなつかしく 手折ればくるし花散りぬ」。昔々、既に他の大学に入っていたのだが、諦めきれず慶應を受験し、帰りに、この歌碑を見た。佐藤春夫との出会いである。 詩など、あま...
慶應大学・三田キャンパスの片隅に、歌碑が建っている。「さまよひ来れば 秋草の ひとつ残りて咲きにけり おもかげ見えてなつかしく 手折ればくるし花散りぬ」。昔々、既に他の大学に入っていたのだが、諦めきれず慶應を受験し、帰りに、この歌碑を見た。佐藤春夫との出会いである。 詩など、あまり読まぬ私だが、佐藤春夫はいい。胸がきゅんとするっていうやつだった。やはり慶応に入りたいと思いを強くした。 数年前、熊野速玉大社に詣でた折、その横に佐藤春夫邸が移築され、記念館となっていた。新宮市出身なのだ。そして近くの寿司屋で昼食をとったとき、長年の謎が解けた。秋刀魚の歌の一節「さんま、さんま そが上に青き蜜柑の酸(す)をしたたらせてさんまを食ふは その男がふる里のならひなり」和歌山が蜜柑どころとはいえ、さんまに蜜柑は、いかにもまずそうだと思っていたのだ。寿司屋が言うには、果実は質を上げるために、熟す前に実を間引きする。その摘果という作業でとれた青い、酸っぱい蜜柑を地元の人は焼き魚などに添えるのだそうだ。それなら、うまそうだ。思わぬ収穫だった。 大学も出て、ずいぶん経ってしまって、歌碑の思い出は昔々の事だけれども、本書収録の詩の一節に、こんなのがある。 「我等を指してなげきたる 人を尻目に見おろして 新しき世の星なりと おもひ傲れるわれなりき 若き二十は夢にして 四十路に近く身はなりぬ 人問ふままにこたへつつ 三田の時代を慕ふかな」。 大林宣彦は、佐藤春夫の影響を随分受けているようだ。大林映画ファンにもおすすめしたい一冊である。
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