日本的意識の起源 ユング心理学で読む古事記

高尾浩幸【著】

• 販売会社／発売会社: 新曜社
• 発売年月日: 2001/02/10
• JAN: 9784788507517

商品レビュー

2013/01/22

日本人独特の肥大化するペルソナ＝役割。そこから古事記の分析を交えながら読み解いていく。
心理学の中でも分析心理学をベースとした神話の解釈として本書は進められている。これを読み解くにはまず古事記に対するある程度の知識と心理学への基本的知識が必要だ。

私は本書を学校の参考文献として拝読した。
元々好きな小説で古事記には興味を持っていたことと、講義でも分析心理学に近いことを学んでいたことから、読み進めることができた。
少し口惜しいことを言うのならば、神話に対する造詣が浅かったことだろうか。生憎他国の神話についてあまり勉強をしていないので、残念ながら原作を知らないものが出てきた。知らないからといって読み解くには事欠かないものの、他国のおとぎ話・神話などを知っていたらより理解を深めるには簡単にできるだろう。
集合的無意識に根差した元型＝象徴的イメージを辿り、タイトルにあるように「日本的意識の起源」を探っていく。イザナミ・イザナギから始まりオオクニヌシまでの国土創生まで。英雄譚を交えながら、そしてその英雄こそを自我モデル（いわゆる人間の本心にちかいところ）の表現として見ていくと、ペルソナつまり役割に押しつぶされそうに思っている人の心を振い立たせることもできるのではないだろうか。
これはいわゆる新書ではない。専門書に属するものであるが、文化人類学・心理学・神話に造詣の深い人ならばぜひ手にとって、現代社会、あるいは日本人そのものについて考察していただきたいものである。