象られた力 ハヤカワ文庫JA

飛浩隆(著者)

• 内容紹介: 内容:デュオ. 呪界のほとり. 夜と泥の. 象られた力
• 販売会社／発売会社: 早川書房/
• 発売年月日: 2004/09/09
• JAN: 9784150307684

商品レビュー

2010/05/28

この作品は<デュオ>…

[文庫ＯＦＦ]

この作品は<デュオ><呪界のほとり><夜と泥の><象られた力>の4編が収録された中・短編集です。双子の天才ピアニストをめぐる中編<デュオ>はどちらかと言うと読みやすい作品だったのではないでしょうか。一方他の3編は<デュオ>に比べるとSF色が濃い設定になっています。読みにくくはないですが、読むときにはある程度の集中力を必要とするかも…

2025/12/11

飛浩隆先生。SFなんだけど、簡単にそうくくってしまうのが勿体ないような中編集。

「デュオ」主人公はピアノ調律師。チューニングハンマーを武器に闘う調律師なんているんだ…！それもジョークではなく、洗練された戦術とゆるぎない殺意をもって。音楽の描写も凄い。バイエル８番がこんなにも不穏で、読み手をざわつかせ昂らせることってある？
個人的な「癖に刺さる」という意味でも稀少な一編。

表題作「象られた力」。圧倒的。宇宙世界に生成された多層の文化と、その破壊。文章の美しさ、映像を惹起する力が凄まじい。多文化のひびきに酔い、人々と図像のふるまいに魅了され、そして善悪を超えた圧倒的な力に平伏すしかない。
きわめて映像的でありながら、じゃあ実写？アニメ？CGでなんとかなる？なんて考え始めると、見たいような、でも何を見せられても追いつかない、物足りない気がしてしまう。

主人公、クドウ圓（ヒトミ）がいい。牡鹿みたい、と恋人（も、悪くていい）に評される黒髪の男。彼に見惚れる（文字で書かれた情報なのに見惚れてしまう）そのためにだけでも読む価値はある、そんな愉しみもある小説です。

2025/02/19

端正な文章と五感を美しく言語化した作品集。SF的仕掛けの面白さはもちろんのこと、構成のリズム感や緩急が素晴らしかった。