商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 勉誠出版 |
発売年月日 | 2003/07/21 |
JAN | 9784585050827 |
- 書籍
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喜劇の精粋抄
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喜劇の精粋抄
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風刺は相手を刺す笑いでしたが、ユーモアは、相手をなごませる、笑わせる技術です。その点で相手と敵対関係にはなく、親和関係を持っています。 宮田光雄は『キリスト教と笑い』(岩波新書)の中で、エスカルピの『ユーモア』(白水社)をよりどころに、ユーモアの語源は「液体」を意味するラテン語...
風刺は相手を刺す笑いでしたが、ユーモアは、相手をなごませる、笑わせる技術です。その点で相手と敵対関係にはなく、親和関係を持っています。 宮田光雄は『キリスト教と笑い』(岩波新書)の中で、エスカルピの『ユーモア』(白水社)をよりどころに、ユーモアの語源は「液体」を意味するラテン語の「フモール」だといっています。それによると中世の科学者は四つの「生命の液」を区別し、「その混じり合いの違いから、人間における有名な四つの気質を引き出した」そうです。これは近代科学からすればナンセンスですが、ことにユーモアについていえば、かなり本質をうがっているのではないでしょうか。「液体」ですから固まっていない、流動性がある、ということです。これを精神に置き換えますと、融通性があり、やわらかでしなやか、といえます。つまり堅物、依怙地の対極になります。マジメ過ぎて融通のきかない人間が、ユーモアを解さないのはそのためです。p9 雄弁や修辞やユーモアを発達させた社交場はまた、人間観察を深め、透徹した眼で人間の本質や性癖をえぐりだす場でもありました。ラ・ロシュフコーの『箴言』は、モラリズム文学の傑作といわれていますが、ロシェフコーは17世紀フランスの公爵です。彼は自分のサロンや官邸に集まってくる人々を観察し、人間の心理や行為の根底にあるものを皮肉にというより、深い洞察力をもってえぐったのです。p16 農本主義は勤勉力行ですから、マジメを信条とします。フマジメを怠け心として排撃します。この思想は国家指導者の思想と一致します。こうして農本主義者は殆ど常に、国策に忠実で、国策の推進者となりました。ここにマジメ人間の怖さ、危険があります。笑いを軽んじ退けたのも彼等です。マジメ人間はそのことで非寛容人間、量見の狭い人間です。怠けや遊びに価値を置きませんから、享楽派や遊び上手、怠け者を排除しようとするのです。p21 それゆえ人間は、演技する自分を絶えず意識して生きるほかはない。その鉄則を忘れると、破綻の深淵に墜落する。「二重の論理をやめて、一重の論理で生きる時がナマの現実生活である。だから強い生命意識に駆られる人間たちは、舞台の約束をそのまま現実にしようとして、人を殺したり、自ら死んだりしなければならなくなる。革命する芸術家と自殺する芸術家は二重の存在である芸人の意識をいつの間には忘れて、そのまま舞台で一重のナマの生活にしようとするのです」(『伊藤整氏の生活と意見』)。p56 自己戯画とは自己卑小化でもある。自己卑小化によって人間は、自分を悲劇的人間として美化することも、深刻になることもない。これは自己救済の方法として有効である。p58
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