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サラマンダー 無限の書
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サラマンダー 無限の書

トマスウォートン(著者), 宇佐川晶子(訳者)

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サラマンダー 無限の書

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 早川書房/
発売年月日 2003/08/31
JAN 9784152085009

サラマンダー

¥2,640

商品レビュー

3.3

6件のお客様レビュー

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2026/02/06

ロンドンで珍本の製本を得意にしていた印刷工・フラッドが、お手製の機械仕掛けの城に住むオストロフ伯爵に召されて命じられたのは、読んでも読んでも終わらない「無限の書」の制作だった・・・。 18世紀のスロヴァキア。部屋が勝手に動き時間通りになるとそれにふさわしい場所へ連れて行ってくれ...

ロンドンで珍本の製本を得意にしていた印刷工・フラッドが、お手製の機械仕掛けの城に住むオストロフ伯爵に召されて命じられたのは、読んでも読んでも終わらない「無限の書」の制作だった・・・。 18世紀のスロヴァキア。部屋が勝手に動き時間通りになるとそれにふさわしい場所へ連れて行ってくれる機械城での、無限の書の制作と、まるでその機械が紡ぎだしたかのような伯爵令嬢イレーナとの恋。 そして城内には人間だけでなく、機械仕掛けで動く人形までいる始末。 この幻想的で現実離れした世界に、その奇妙な城で一心不乱に書の印刷に励むフラッドとともに冒頭から読者もすっかり迷い込んでしまう。 主人公ともども、そんな機械城での生活にも慣れたところで急転直下、伯爵令嬢との恋を見とがめられたフラッドは何と11年(!)もの幽閉の憂き目にあう。 11年間、空想上で無限の書の印刷に励んだ彼をある日迎えに来たのは、伯爵令嬢と彼の娘だという少女だった・・・。 その先はまた一転。今度は無限の書を製作するのに必要な材料を集めるために、そして娘のパラカは母親を探すために、世界をまたにかけた冒険に出るのである・・・。 全体的に、全てが奇妙といえば奇妙な話だった。 大仰なからくり仕掛けの城から出た後は、やはり奇妙なからくり仕掛けの船に乗って旅を続け、悲しみを誘うインク、まるで水面のような波紋を湛えた奇妙な活字、世界最高級の紙、動物のなめし皮・・・・。 それらを求め、ヴェネツィアからアレクサンドリアへ、氷河漂う海へ、オセアニアから広東を経由し、再びインド、アフリカ、喜望峰を回って故郷のロンドンへ。時に海軍?に追われながらひたすらに旅は続く。 ずっと夢の中を旅しているような本だ。 上記の冒険の内容もそうだが、どこか登場人物たちも現実味がないというか、いや夢の中だと奇妙なことが起こっていたとしてもそれを平然と受け入れることがあるが、そんな具合で、ずっと奇妙なのに彼らは絶えず前進していくし、主人公は印刷をやめない。 旅から旅へ、目的地につく度に待ってましたとばかりに無限の書に関わる重要人物にあっさりと出会うのも奇妙だし、そしてまたその彼らが微妙に奇妙なのである。 登場人物に生気を感じず、物語が偶然が重なりすぎて現実感がない。 二つの目的物を一度は手にしつつも、それをまた喪失する過程を物語り、更に続きを予感させるクライマックスはなかなか良かったが、上記の通り物語にも人物にも乗り切れなかった。 しかし、文字通りの「活字の海」に潜り込んだ世界の描写はとても斬新で良かった。本の中の時は止まっているのだ。 随所に登場人物が語る「本とは何か」についての哲学的な発言や、様々な小道具などにもう少し注意を払って本書を分析していけば更なる面白さに出会えるのかもしれない。。。

Posted by ブクログ

2017/03/31

図書館で。 ずっと動いているカラクリ仕掛けのお城とか印刷の活字とか色々おもちゃ好き心をくすぐるものはあるのですが。肝心の内容についていけずなんかちょっと置いてきぼり感を感じました。ビジュアル的には色々と好みなんだけどな。陶製のねじまき人形とか。 製本を職業にしている印刷工に本を...

図書館で。 ずっと動いているカラクリ仕掛けのお城とか印刷の活字とか色々おもちゃ好き心をくすぐるものはあるのですが。肝心の内容についていけずなんかちょっと置いてきぼり感を感じました。ビジュアル的には色々と好みなんだけどな。陶製のねじまき人形とか。 製本を職業にしている印刷工に本を作れというのはワカルけどその内容までも一任するってのはなんか違わないか?と思ってしまいました。今だったらきっとネットが始まりも終わりも無いとてつもない数のお話が詰まっている媒体なんだろうなぁと思う。箱じゃないし印刷でもないけど。 暗闇でほんのりと光る印刷とか蜻蛉の翅のような薄さの紙とかそう言うのはロマンだなぁと思うんですが彼らの旅はいささかちょっと目的意識についていけず戸惑いました。

Posted by ブクログ

2013/03/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

マトリョーシカ人形というのをご存知だろうか。瓢箪型の人形を胴部で二つに割ると、その中から同じ形をした少し小ぶりの人形が現れる。それを開くと、また同じ人形が現れる仕掛けを持つロシアの素朴な郷土玩具を。あるいは、ミシェル・レリスが『成熟の季節』の中で紹介している粉ミルクの缶を持つ女の子の絵が描かれた粉ミルクの缶の話でもよいが、これら「入れ子細工」の持つ魅力は、人間が「無限」や「永遠」というものに寄せる憧憬をそれとなく証している。 物語の世界で、入れ子構造が特徴的なのは言わずと知れた『千夜一夜物語』だろう。カリフの悪癖を思いとどまらせるために終わることなく語り続けられねばならなかった物語は、一つの物語の中にまた別の物語が胚胎する入れ子構造を必然的にとることになった。「終わることのない書物」を夢見ない物語作者はいない。「無限の書」という副題を持つ『サラマンダー』もまた、その夢のために紡がれた一つの奇矯なテクストである。 どのような物語も、物語である以上プロップの「民話の形態学」に示された要素から自由ではあり得ない。この物語もまた、「依頼と代行」についての物語である。依頼者はサヴォイ王国のオストロフ伯爵。任務を授かったのは、ロンドンの印刷職人フラッド。その任務とは、「始まりも終わりもない書物」を作ること。物語は18世紀のケベックで幕を開けるが、それは所謂「額縁」で、話の本筋はフラッドとその一行が、依頼を受けた本を創るための活字やインク、紙を求めて世界各地を彷徨う探索行である。読み進めるうちに読者は、額縁を忘れ、知らぬ間に絵の中に入り込んでしまう。そして、その絵の中には、また別の絵が描かれているという仕掛けである。 18世紀初頭、オスマン=トルコ軍との戦いで最愛の息子を失ったオストロフ伯爵は、軍籍を辞し、スロヴァキアにある自分の城に隠遁するが、生来の謎を好む嗜好が嵩じて、機械仕掛けで部屋や廊下が動く城を造り続けることに没頭する。また、そこには古今の珍書稀書が集められ、その膨大な蔵書を管理する仕事は、幼少時の病気のせいでコルセットなしでは立つことのできない令嬢イレーナに任されていた。 珍本作りの腕を見込まれて城に呼ばれた印刷職人のフラッドは伯爵の留守中にイレーナと恋に落ちる。しかし、伯爵の知るところとなり、十一年もの間、城の地下に幽閉される。フラッドは「無限の書」を空想裡に印刷することで狂気から免れる。彼の幽閉を解くのは、二人の間にできた娘パイカである。城を抜け出した父子は、雇われていた曲芸師たちとともに、伯爵の船で旅を続ける。父は「無限の書」の完成を目指し、娘は、未だ見ぬ母を求めて。あるときは、氷山の流れる海を、あるいは、珍しい紙を求めて広東を、地下に穿たれた「物語の井戸」に数万巻の古文書を蔵するアレキサンドリアを。 作者も明かしているが、「無限の書」のアイデアを得たのは、ボルヘスの短編『砂の本』に出てくる「まるで、本からページがどんどん湧き出て来るようだ」と評される「砂の本」である。ボルヘスが哲学的な象徴として取り上げた「無限の書」を作者はマニエリスム的手法を用いて、実体化しようとする。ユダヤ人の天才冶金師キルシュナーの手になる、文字が水銀のプールの中で上下に浮動する「鳥肌活字」、堕天使の血と成分を同じくするといわれる「本物の泣きインク」、世界でもっとも高価な紙「最高級亀」、これらが揃うとき、「無限の書」が完成するのだ。 キルシュナーはフラッドに言う。「この世界は意識が必要な物を供給するまでは、はかない幻のような、たいていは空っぽの空間なのだ」「それが世界の本質なら、想像上の本はばかげた夢ではなく現実の暗示なのだ」と。機械仕掛けで城中の部屋や家具が移動したり、磁器製の自動人形が本作りを手伝ったり、作者の想像する世界は、18世紀においてはばかげた夢のような物だが、今の世界では現実化されている。ならば、21世紀の今、空っぽの空間に私たちの意識が供給しているものとは何かを想像して愕然とした。本を愛する人にこそお薦めしたい一冊。

Posted by ブクログ

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