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バルトーク 民謡を「発見」した辺境の作曲家 中公新書
814円
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 中央公論社/ |
発売年月日 | 1997/07/25 |
JAN | 9784121013705 |
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バルトーク
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商品レビュー
3.6
10件のお客様レビュー
取りあえず評伝かなと思って読み始めてみると、「はじめに」にいきなりドキっとする(というかワクっとする)ことが書いてある。 曰く、 「ここで目指しているのは、バルトークという音楽家の六十四年にわたる生涯を、民俗音楽の研究活動という側面から見直すことである。」 というのである。 ...
取りあえず評伝かなと思って読み始めてみると、「はじめに」にいきなりドキっとする(というかワクっとする)ことが書いてある。 曰く、 「ここで目指しているのは、バルトークという音楽家の六十四年にわたる生涯を、民俗音楽の研究活動という側面から見直すことである。」 というのである。 なるほど、やはり作曲家、または演奏家ではなく、研究者として一冊の本になるくらいの関心は呼び起こしているわけなんだな。 話はめっぽう面白い。 生涯や作品については必要最小限くらいしか出て来ない一方、祖国ハンガリーの、その時代やヨーロッパにおける複雑な(音楽的)位置づけ、それにも増して複雑っぽいバルトークの性格や研究に対する取り組み、そしてその業績の中身(評価されるべき点と限界点)がキチンと書かれている。 この本は15年ほど前のものだけど、バルトークのライフワークであった書物はいろいろな紆余曲折があってようやく刊行され始めたばかり、とある。バルトークの研究者としての評価は、まだ現在進行形ということのようである。
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この本の著者が書いている「東欧音楽綺譚」がきっかけで読むこととなった。 バルトークの民俗音楽にかける偏執的までの取組の様子がわかる。バルトークの死後数十年を経てそのコレクションが刊行されるが、国の政情の影響もあり、その道程が必ずしも盤石ではなかった。バルトークがコダーイをはじめ周囲に受け入れがたい偏執的なものを持っていたのだと察する。ファリャが「本物ではない真実」を容認していたのに対し、バルトークは本物を追究することに専念した。つまり、ファリャやラヴェル、リストがまがいもののイミテーションを創っていたとのこと。 ただ、ほぼ一人で総数2万曲におよぶ民謡を収集するにはそのくらい偏執的な情熱が必要であるのだろう。
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バルトークの、民謡収集がどのようなものだったのかを明らかにした本。 作曲よりも、民謡の分類に相当の力を注いでいたとのことで、検索性を求めつつ、ヴァリアントが近くに配置されるような配列を構想していたという。 つまり、辞書のように単一の原理で配列することと、複雑な要素を持っている民謡...
バルトークの、民謡収集がどのようなものだったのかを明らかにした本。 作曲よりも、民謡の分類に相当の力を注いでいたとのことで、検索性を求めつつ、ヴァリアントが近くに配置されるような配列を構想していたという。 つまり、辞書のように単一の原理で配列することと、複雑な要素を持っている民謡同士の近親関係を表示するという、相反することをやろうとしていた、ということらしい。 何曲かは聞いたことがあるけれど、どんな顔をした人かさえわからない私には、初めて知ることだらけ。 ハンガリーの作曲家で、ハンガリーの民謡を収集したと思われがちだけれど、実はルーマニア、ブルガリア、ウクライナ、アルジェリアなど、いろいろなところでやっている。 それも、ブルガリアがかなり多いそうだ。 二十世紀初頭の不安定な東欧情勢の中で、愛国心の発露として民族音楽に向かったのかというと、単純にそうとも言えないようだ。 若いころの一時期こそ、愛国主義的な主張もみられたが、コダーイらから音楽学的な方法を学んでいくにつれ、学術的な興味に移っていったとか。 リストが広めた「ハンガリー音楽=ジプシー音楽」というイメージの問題も興味深い。 リストにとって、ハンガリーの農民の音楽は魅力的ではなく、ジプシー音楽をハンガリー音楽として取り入れた事情があるらしい。 バルトークはこれを批判し、彼らが収集した農民音楽を「オリジナル」と主張する。 しかし、筆者伊東さんは、それもまた単純すぎる批判ではないか、と考える。 また、仮にジプシーが農民音楽を利用していたことが確認できたとしても、ジプシーが伝えたものはオリジナルを歪曲したものかどうか、とも問いかける。 ロマ音楽を取り入れ、イミテーションの美を追求したラヴェルとの違いもわかりやすい。 ハンガリーの当時の状況なども解説しながらと、知らないことが多い私のような読者には、負荷が多い書物だけれど、単純な構図に納めず論じているので、信頼できる。
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