商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 新潮社 |
発売年月日 | 1986/02/20 |
JAN | 9784106003035 |
- 書籍
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謎とき『罪と罰』
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謎とき『罪と罰』
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商品レビュー
4.5
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「謎とき」三部作の記念すべき第一作。 「罪と罰」を、神話、民俗学、言葉の原義の中に読み解いていく。 「罪と罰」とは、何と奥深い、多義的な小説なのか!と、感動を新たにしてくれる。 ラスコーリニコフの未来をカラマーゾフに繋げてみせるラストも見事。 ドストエフスキーは登場人物の名前、...
「謎とき」三部作の記念すべき第一作。 「罪と罰」を、神話、民俗学、言葉の原義の中に読み解いていく。 「罪と罰」とは、何と奥深い、多義的な小説なのか!と、感動を新たにしてくれる。 ラスコーリニコフの未来をカラマーゾフに繋げてみせるラストも見事。 ドストエフスキーは登場人物の名前、地名、語られる言葉一つ一つに多義的な意味を込めている。 しかし、日本語への翻訳によってはその多義性は一義性に圧縮されてしまっている。 江川が行うのは、抹殺された多義性を復活させる試みだ。 ロシア語に堪能でなければ、決してこんな読み方は出来ない。 我々日本人は、江川のガイドによって、翻訳では味わうことのできない、多義的•多層的•豊饒な「罪と罰」の世界を知ることが出来るのだ。 感謝しかない。 江川のドストエフスキーに対するこだわりは、シャーロキアンのホームズに対するこだわりに通じている。 トリビアほど楽しいものはない。 誰も指摘したことのない発見(発明?)が、たまらないのだ。 だから、どこまでも深く深く底なし沼にハマって出てくることが出来ないのだ。 そして、それが本望。 謎ときの準拠とされるのは聖書だ。 一つだけ例を挙げると、ラスコーリニコフの名前だ。 ラスコーリニコフのフル•ネームは、ロジオン•ロマーヌイチ•ラスコーリニコフ。 イニシャルはRRR。 ロシア語では、アルファベットのRはP。 だから、ロシア語のイニシャルはPPP。 このイニシャルPPPは逆さまにすると666であり、アンチ•キリストを表すと共に、アンチ•キリストの逆転だから、復活としてのキリストを意味する、と深読みする。 本当か?と思わないでもないが、ラスコーリニコフの取ってつけたような本名には、ドストエフスキーの深い思いがあったことは間違いないだろう。 そうなるとラスコーリニコフの恋人のソーニャは、イエスの恋人マグダラのマリアに、比肩されなければならないだろう。 作者、江川卓(1927-2001)は、本名馬場宏。 江川卓はペンネームだ。 ペンネームを名乗ったのは、レッドパージ中の戦後日本で、ロシア文学=マルクス主義という疑いを避けるためだったという。 偶々、読売巨人軍の江川卓と同姓同名になったため、入団のゴタゴタで色々と迷惑を被ったらしい。 府立十中でセゾン•グループの堤清二と同級。 旧制一高-東大法学部。 ロシア語は独学! 独学で学んだロシア語でドストエフスキーを翻訳し、これほどの研究書をものするというのは恐るべき語学力と言わねばならない。
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ロシア語翻訳家江川卓さんによる「罪と罰」解説本。 ブクログで、他の方々のレビューで興味を持ち読んでみました。 …しかし私が読んだ版は江川さん訳ではなかった~~( ̄□ ̄;)!! https://booklog.jp/item/1/4102010211 まあ江川さんも工藤さんもドス...
ロシア語翻訳家江川卓さんによる「罪と罰」解説本。 ブクログで、他の方々のレビューで興味を持ち読んでみました。 …しかし私が読んだ版は江川さん訳ではなかった~~( ̄□ ̄;)!! https://booklog.jp/item/1/4102010211 まあ江川さんも工藤さんもドストエフスキー愛は同じように深いだろう (笑) 元々はロシア語教室で、生徒さんたちから「この○○はどういう意味ですか?」「日付の矛盾がありませんか?」などという質問が来て、江川さんが熱心に調べた結果ということらしい。 内容は、とにかくドストエフスキーへの想いが熱い、暑い、恋…じゃなくて濃い(笑) ドストエフスキーの他の作品と並べての考察、 本文にははっきりと書かれていない日付を読み取りそれをロシアでの祝日などに当てはめてみる、 本文から登場人物たちの移動距離や出身地を測ってみる、 登場人物名をロシア語から日本語訳したうえで登場人物の役割を考える、 とににかく最初から最後まで凝っているというかこじ付けているというか、本当にここまですべてドストエフスキーが考えていたら凄過ぎる! まあ、ある程度は偶然もあっての話半分ですかね。 とにかく江川さんのドストエフスキー熱を感じられる研究本でした。
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岩波文庫の『罪と罰』の訳者、江川卓さんによる解説本。ドストエフスキー独特の文章の作り方、登場人物の名前にこめられた意味、主人公の思想(=非凡人は既存の法を踏みこえる権利を持つ)と原題『プリストゥプレーニェ・イ・ナカザーニェ』との対応など、日本語に訳された文章を読んでいるだけでは絶対に気づかない目からウロコの知識が盛りだくさんで、ほんとにミステリーのように面白かった。 ところで『罪と罰』を読んでいる間ずっと気になって仕方なかったのだが、主人公のラスコーリニコフ(ロージャ)という青年、どういうわけかやたらと男に絡まれる男なのである。美男子である彼は女性ウケも良いのだが、それ以上に同性からみて放っておけない存在らしい。マルメラードフは初対面でいきなり「見込まれたと思って話を聞いてくれ」と口説くし、ラズミーヒンは完全にロージャの世話女房と化しているばかりか、「だから僕はこいつが好きなんだ!」と放言する始末。スヴィドリガイロフも「俺たちは同類だろ?」と絡むし、ポルフィーリィまでもが「太陽におなりなさい」と、「You are my sunshine!」と言わんばかりの熱弁をふるうので、私は「うーむ…」と考えこまざるを得なかった。主人公総受けという概念が当時のロシアにあったのか?? もちろん、こんな考えはロシア正教会においてはシベリア流刑レベルの冒涜だろうと思い、それ以上深く考えないようにして小説を読み終えた。しかし、なんとこの解説本において、訳者自身が同じようなことを書いているのである。「これはポルフィーリィのロージャに対する求愛である」とか、「ロージャに対する思い入れではスヴィドリガイロフとポルフィーリィはほとんどライバル」とか。もちろん思想的な意味においてではあるものの、私は自分の感じ方がさほど的外れではなかったのだと安堵するとともに、「訳者公認?!」という新鮮な驚きも覚えたのだった。 とりあえず、硬派な読み方もユルい読み方もできるという点で、本書は素晴らしい解説書だと思った。『罪と罰』既読の人で、ミステリー好きの人、ロシア語に興味のある人、BLっぽいのが嫌いじゃない人は、読まなきゃ損な本だと思う。
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