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彼の左手は蛇
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
| 発売年月日 | 2025/10/30 |
| JAN | 9784309032313 |

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商品レビュー
3.4
57件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ここ最近、2ヶ月ほど、全然小説が読めなかった。 そういうことは今までもあった。でも気にはならなかった。そういう時期なんだな、と思ってた。 でも今回の私は焦っていた。「このままもう二度と本が読めなくなるかもしれない」とすら思っていた。自分は“人の人生”とか“物語”に興味がなくなってしまったのだとしんどくなった。 積読が30冊に突入して、「もう本を買うのはやめよう」と思った。買っても買っても読まないのだからどうしようもない。 母が私の住む町に遊びにきて、流れでなんとなく図書館に行った。母に「私は中村文則の小説は全部読んでるんだよ」と文則コーナーを紹介したとき、この小説が目に入った。彼の左手は蛇。 この小説の存在は知っていた。ホームページで確認していた。 でもうちの近所の図書館は文則の新刊を入荷するのをやめてしまっていて、私も「まあ買えばいいからいいか」と特に気にしてなくて、でも、最近は本を買うのをやめていて、でも、あった。 「これ借りる」と私がこの小説を大事に抱えると、母は「でも今小説読めないんでしょ?」と言った。 私は「いい。借りる。図書館はタダだから。文則の小説なら読める気がするし」と言って。そして。読めた。1日で読めた。めちゃくちゃ好きな文則だった。私は文則作品の中で「銃」が一番好きだけど、そのハッピーエンド版というか……。 あのね、私、文則作品が大好きだけどハピエン廚なんですよ。 まあ最近の文則はハッピーエンド多いけどね。 生きることにフォーカスを当てるようになったというか、光を書くようになったというか。好きだ。すごく。 P.66 ――あと、小説読んでるだろ。 確かに、図書館に行くようになっていた。私はうなずいたと思う。 ―ーもう大丈夫に違いない。 ここでまずバカほど心がぐわってなった。 そう、そうなんだよ、小説を読んでいると、それは逃避かもしれないけど、「もう大丈夫に違いない」って思えるんだよ。 だから読めなくなった自分が怖かった。年齢を重ねるうちに、周りの本好きたちが本を読めなくなっていく姿を見てきた。目も肩も腰も疲れるらしい。集中力がもたないらしい。自分もそうかもしれないと思った。でも今読めているから、今は、せめて今だけは、大丈夫かもしれないと思えた。 P.146 「現在や未来が楽しければ、それだけ過去は薄れるでしょう?……君がどんな時間を過ごしてきたか、僕はまだ知らない。でもその過去に潰されなければ、君は生き抜いた自分を誇ることもできる。未来によってその嫌だった過去は、その人の人生の決定的なものではなくなって、その人の人生の、負けなかったひとつの事例に変わるんだよ」 彼がしゃがみ、目線を私に合わせた。 「……人は必ず、自分は一人だと思ってしまう時が来る。君のそういう時、僕が側にいれたらいいんだけど。……それが無理でも、僕が言った言葉は、覚えておいてくれると嬉しいんだよな」 ここもすごく好きだった。 私は結構真剣に、言葉は人を救う、と思っている。 素晴らしい風景とか、様々な経験とか、おいしい食事とか、そういうものももちろん大事なのは分かってるんだけど、でも、言葉が、私にとっては言葉が、ずっと。 だから音楽は歌詞に強く惹かれるし、だから人との会話が好きだし、だから本が好きなんだ。 (まあ、言葉がしんどくなって写真集に救われるときもあったけど)(家にこもって頭でっかちになっていくのは良くないってことも理解してる) 読んでる間ずっと「セラピーみたいだ」と思っていた。 血行が良くなる。おもしろいし、言葉のリズムが気持ちいいし、話の展開もおもしろい。手記、という形でストーリーが進んでいくのがかなり楽しくてワクワクした。私は人の日記とか、そういうものを読むのが大好きだから。 あーーー楽しかった。素晴らしい作品だ。ありがとう文則。
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狂気の中に鎮座する圧倒的な静美に心掴まれる長編小説。 ときに難解だけれど、思わず息を呑むような瞬間に心が攫われる。 蛇の目と牙に誘われるようにして惹きつけられ、恐怖のなかに恍惚と浮かぶのは、神か悪魔かと見紛うような得体のしれない美しさ。 人を襲い、首を噛み、驚きや恐怖を超え、そこ...
狂気の中に鎮座する圧倒的な静美に心掴まれる長編小説。 ときに難解だけれど、思わず息を呑むような瞬間に心が攫われる。 蛇の目と牙に誘われるようにして惹きつけられ、恐怖のなかに恍惚と浮かぶのは、神か悪魔かと見紛うような得体のしれない美しさ。 人を襲い、首を噛み、驚きや恐怖を超え、そこに静かな不意の美が生まれる。 幼少期から自分の左手に感じる蛇の存在。 「私」の拠り所である手記に自身を委ね、「私」は混沌とする記憶を手繰り寄せている。 「私」が「私」という存在を書こうとした一冊でもあるが、ここにはもう一つの大きな意味が存在する。 抑圧と不平等に満ちた世界で、失われた蛇信仰を復活させたらどうなるだろうか−−− つまりこれは、蛇信仰におけるテロの書だ。 仏教やキリスト教など、現在の主流の宗教が広がる前にあったとされる蛇信仰。 忘れられ、封じられた神は象徴的な生き物だった。 その蛇が「私」の左手に棲み着き、自身を狂わせ、善の気持ちから湧き上がる破壊という行為へと誘われていく。 自分の蛇が殺した人間を踏み越えていく時の、世界からの遊離。 「悪を可能にする知識」による逡巡。 自分の正常さを確かめるための狂気に支配されているのではと感じてしまう不穏さ。 神聖なものに操られているかのような、確かな光の中に感じる仄暗さ。 蛇を除けば本質的にはずっと一人で生きてきた彼にとって、蛇は唯一無二の存在であり、不気味に蠢く彼の心に引き込まれていった。 彼の願う蛇神の再来。復活。 世界が最初からやり直すために。 人々に、この世界は今ある姿だけではないのだと知らしめるために。 世界を呪い、消滅を願い、自分はもう以前の自分ではないと知る。 この世の不条理を憂いた彼らの呪術は、いつの時代にもあったのだと思う。 足りない狂気を欲し、全て可能にしてしまうほどの自分の狂気を俯瞰しているその姿は、精神が振れているの一言では片付けられない。 彼は、もっと狂いたかったのではないだろうか。 狂うことで、罪を犯す恐怖を麻痺させるために。間違いなく罪を犯すために。 幸福な者たちの鈍感さに対する、怒り。 すべて何事もなかったかのように過ぎ去ることへの、怒り。 これはテロの書であり、怒りの書だ。 過去は変えられないと思っていた。 しかし現在や未来で、過去は変えられる。 起こったことは変えられないが、その後の時間をどう生きるかで、過去の印象や意味合いは変えられる。 現在や未来が楽しければ、それだけ過去は薄まっていく。 その過去に潰されなければ、生き抜いた自分を誇ることもできる。 未来によって嫌だった過去は、その人の決定的なものではなくなって、その人の人生の、負けなかった一つの事例に変わるのだ。 人は皆、自分が一人だと思ってしまうときが来る。 その時に自分の魂を引き留めてくれる者の存在を知ることになるのだ。
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蛇信仰のある地で、少年の記憶から自らの左手が蛇であるようで… 蛇に纏わる話かと思ったが、テロ⁈なのかと。 わかる人には面白いのかもしれないが、どうやら自分には最後まで理解できずに終わった…。
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