本の雑誌 粟餅危機一髪号(509号 2025年11月) 特集 世界の文学賞を目指せ！

本の雑誌編集部(編者)

• 販売会社／発売会社: 本の雑誌社
• 発売年月日: 2025/10/09
• JAN: 9784860115715

商品レビュー

2025/10/18

世界の文学賞がリスト化されている。そんなに世界の文学賞見てる人あんまりいないので、世間的な関心も高まるノーベル賞の時期に出ているのも含めて、良い特集だとは思った。とはいえ、そのリストはこの世に存在するすべての文学賞について網羅的に調べ上げたものかというと、そういうわけではないようだ（私の取った賞とかも載ってないしな）。まあ個人的な欲を言うなら昔のスターリンの賞とか、より多角的・歴史的な評価の変遷と、できれば詩の賞についても触れて欲しかった部分はあるが、それでも創作者が様々な受賞作に触れるきっかけにはなる良い編集だと感じられた。

まあでもこれだけ沢山の文学賞があるといっても、文学賞を取った作品が偉いということは全くなくて、より本質的にはその時代とその世界でのその地域の価値観での一過性の評価でしかないということは自明なんだけど、そのことはしっかりと認識できる、良い紙面になっていたと思う（特に英語圏の文学賞の低調について語られていたのも印象的だった）。

文学賞よりも、その人が何を書きたいかとか、読者を楽しませるとか、そういう方向に行く方が大切なのは言うまでもないことで、文学賞はあと付けの権威付けや、一時的な評価でしかないことは再認識されるよね。
それでも、ハンガンのノーベル賞受賞時の書店などでの熱狂や、残雪への期待感も読み取れる。もし世界の文学賞について知りたいなら、それについて取り上げた書籍は少ないので、最低限この特集は読むべきだろうね。ノーベル文学賞に興味がある人、その候補作品に興味がある人も、一読して損はない。

でもこれを作家が読んでも、「はい、さっそく世界の文学賞目指そう」とはならなくて、いい翻訳者に巡り会えますようにと神に祈るとか、そういう出会いがない人でも翻訳AIの精度が上がりますようにと使ってみながら調整するとか、あるいは他言語で書ける人は書いてみるとか、まあそういう方向性しかないはずなんだけど、そっち側について取り上げても良かったかもしれないよね〜とは思った（ルーマニア語で出版した済東鉄腸とか、チェコ語の辞典を作ったF爺とかね）。あと、翻訳者の方や翻訳家志望の方は、賞をきっかけに翻訳することもあるので、もちろん相当レベルの高い人は知ってる情報とは思うんだけど、とはいえ世界の賞を全部隅から隅まで知っているということはないので、こういう誌面から知れる新刊の話もあると思う。いい賞との出会いがきっとあなたにもあります。

2025/10/10

なんと、測ったかのタイミングで、ノーベル賞発表日に発売された本特集号。もともと各種文学賞には興味があるだけに、かなり堪能できました。