ヤマ師 裸一貫から一代でトヨタ・松下・日立を超える高収益企業を作った破格の傑物「山下太郎」のすべて

深澤献(著者)

• 販売会社／発売会社: ダイヤモンド社
• 発売年月日: 2025/08/21
• JAN: 9784478123034

商品レビュー

2025/10/07

題材はいいがもう一声というのが感想。
題材を元に小説として再構築すれば、最後の海賊に匹敵する名作になる。
個々の事象は良く調べているのが伝わる。それ故にノンフィクション自伝とするのか事実に基付いたフィクションにするのか決めかねたように感じられた。
事実部分を繋げて見れば自伝のような趣きもある。
前半部分はファクトを詰め込み過ぎて、流れを阻害している感じがする。戦中の政治史の流れは細かい事実までは必要ない。事実に基付いたフィクションとしているのであれば、事実関係は簡潔にしても問題ないはずである。
ラストのところは逆にフィクションを入れ込みドラマ性を重要視してもいいと思う。勝手に自分の中では石油発掘の映像補完をしてしまった。
山下太郎を取り巻く群像劇、フィクションもノンフィクションもない混ぜになった人物を取り上げるのだから虚実併せ持つ作品として成立させる事を夢見てしまう。

2025/09/28

p0 人は二度死ぬ、といわれる。一度目は、肉体が滅びた時。二度目は、人々の記憶から完全に消えた時だ。だとすれば、だれかがその人を語り継ぎ、書き継げば、人は何度でも蘇る。言葉と記憶によって、人は永遠の命を得るのだ。そして歴史に刻まれる

p20 楠木正成を御親祭とする湊川神社

p183 1928　関東軍の参謀が独断で、張作霖ののった特別列車を爆破し、殺害するという暴挙を犯した。
政府と軍中枢は事態の拡大と悪化を恐れ、事件をうやむやに葬ることに決めた。また、奉天軍閥も張作霖の死亡を公表しなかったので、当時日本でこの事件の真相が明らかにされることはなかった。その事実が判明したのは第二次大戦後、東京裁判のことである

p195 1931 柳条湖事件
自作自演劇は、満州事変という大きな歴史の幕開けとなる一手であった。張作霖爆破事件と同様、すべてが関東軍の暴走によるものだったと明らかになるのは戦後のことである

p191 岸は計画遂行に当たり、鮎川義介が率いる日産コンツェルンを満州に誘致した。そして満鉄の産業部門をそっくりに日産に移転させるのが狙いだった。日産は、日産自動車、日立製作所、日本鉱業、日本化学工業など１３０社もの関連企業を傘下に持つ巨大な産業グループである。

p229 悔いもなく、恨みもなくて、行く黄泉　松岡洋右

p258 足尾銅山を拠点に福沢財閥を築いた古河市兵衛
古河は、鉱山を買うときに決して自分の意見をゴリ押しすることはなかったという。鉱山学の博士を呼んで、候補になっている山を見せ、そのうちから３つほど選ばせる。そして次は経験豊かな坑夫に、その３つのうちどれが良いかを聞き、その意見に従ったという

p299 これらの事業はイバラの道だ。だが人間、なにもしないことが一番悪いことなんです。私はあえてイバラの道を行く。これだけは言っておきたい。いいですか。冒険心のない国は滅びる　山下太郎

p314 戦時下の経済統制で国内石油会社の油田開発部門を統合して設立された帝国石油