戦前 エキセントリックウーマン列伝

平山亜佐子(著者)

• 販売会社／発売会社: 左右社
• 発売年月日: 2025/07/31
• JAN: 9784865284744

商品レビュー

2025/11/09

　丹いね子・深谷愛子・松乃門三艸子・小林孝子・江木欣々・照葉・諏訪根自子・田中路子・月谷初子・ラグーザお玉・出上キク・大石米子・花園歌子・薩摩千代・阿部銀子・楠瀬喜多・林禮子・中村照子・木村駒子・山田順子、という女性たちを紹介した本だ、と書いても、私にとっては全員今まで耳にしたことのない人たちばかりだ。
　本と並列してWikipediaを引いてみるとページが存在する人もある・・・が、関係者はともかくこの人たち自身のことは、全く知らなかった。特に戦前、したたかに「敗れざる人生」を送った女性たちである。

　総じて彼女たちは聖人君子的ではなかった。男を騙し男に騙され、借金を重ね、酒やアヘンに溺れる人たちもいた。尊大なふるまいで「ぐうも出ないほどの畜生」と呼びたくなる女も紹介されている。
　それでも、本著は男との駆け引きやぐう畜エピソードなどを伝えるのが目的ではなく、彼女らが自分らしさを貫き通すために（道徳的に否定されても）その一本道から外れるわけにいかなかった、それを教えてくれているのだと受け止めている。

　私が特に印象深く思ったのは、男装のバンカラ陶彫家・月谷初子のエピソード。盲目の弟子を無給の下僕扱いでこき使い（この弟子は3年余りで脱走する）、年を経てその盲目弟子の自宅を訪れ家に置いてほしいと依頼。弟子は受け入れるがそこでもわがままぶりを発揮していたという。
　本著の登場人物は関係者からすれば（月谷初子のように）とんでもない女だったかもしれないが、戦前の僅かでも女性が自由奔放な生き方ができたのかと思うと、世に知られた言論の女性活動家とは一線を画す「地で行く女性解放活動者」の存在も後世に（潜在的に）影響を残しているのではないだろうかと考える。あるいは知られなさ過ぎてこれから世に出るのか・・・。
　戦前の差別的制度下においても己を生き貫いた女性たちの存在が、本書を通して少しでも多くの人（特に周囲から「変わった人だな」と思われ苦悩する人）に知られるようになれば、と思う。

2025/10/16

静岡市女性会館図書コーナーの書誌詳細はこちら↓
https://lib-finder.net/aicel21/book_detail_auth?authcode=V3XpChPUPYbMHrcggz%2B%2FKQ%3D%3D

2025/08/15

既成の枠に収まらないまさに型破りな女性達の評伝集。
「20世紀破天荒セレブ」の姉妹編といった感じ。

一口にエキセントリックといっても取り上げられている20人の女性は多様。自分の意思からの生き様もあれば、時代や家族といった環境によりそう生きざるを得なかった人もいる。彼女たちが生きた時代に比べれば、現在の日本は十分とは言えないまでもいくらかは女性にとって生きやすい時代になったとは思うが、同時に彼女らのような型に合わない収まりきらないエキセントリックな人たちにとっては生きづらい世の中になっているようにも思う。