海に沈んだ島の伝承と伝説 断層帯との関係を含めて

林英一(著者)

• 販売会社／発売会社: 五月書房新社
• 発売年月日: 2025/06/29
• JAN: 9784909542700

商品レビュー

2025/08/15

日本各地には、海に沈んだ島の伝承と伝説がある。
海没したという記録がある島がある。
それらを基に実際に調査して、その痕跡が発見された島もある。
多くの史料・記録等を詳細に調べ「島の存在」を解き明かす。
・カラー口絵2ページ
・はじめに
第一章 高麗島型伝説――徳島県「お亀磯」から変遷を探る
第二章 「高麗島型伝説」の原型
第三章 記録に残された海没した「島」
第四章 海没した「島」の異界性
第五章 「幻想の世界」としての海没した「島」
第六章 海底調査により海没が証明された「島」
第七章 伝承・伝説をもつ「島」と断層帯
・おわりに
各章に注有り。

幼い頃、ラジオドラマで別府湾の瓜生島の話を聴き、
海没した「島」への興味があったので、
詳しく知りたいと図書館で借りて読みました。
柳田国男が紹介した高麗島型伝説。
地蔵の顔が赤くなったら凶兆、即刻逃れよと信心深い者に
御告げがあったが、邪な者が赤く塗ってしまった。
逃げた者は助かったが、島は海没し、残った者たちは
死んでしまった。
中国、朝鮮から伝えられ、日本の口頭伝承で流布された
話は、日本各地の海に沈んだ島の伝説に影響した。
薩摩から船で広まった伝承。その理由とは？
海没した徳島県「お亀磯」の江戸時代からの記録に、
様々に変容した伝説や伝承が残されている。
また同様に記録が残された海没した「島」がある。
実は、それら瓜生島などは中央構造線上に、断層帯上にあった。
柏崎の「名立崩れ」はフォッサマグナ上にあった。
「大日本地震史料」に記録された、大地震のあった場所。
実際、鳥羽の鯛の島、知多の篠島、益田の鴨島のように
海底調査され、生活の痕跡が発見されたり、
地殻変動による横ずれ断層が見つかった場所がある。
そして瓜生島などは「島」の痕跡が不明であれども、
伝承と伝説は、その地での大地震や津波による
大災害への警鐘が潜んでいることが分かる。
○○千軒なる富裕な「島」や村が滅びるほどの大災害。
例え、後世の人々の思惑(遷座など)や混乱が内容に
混在されていても、大災害の伝承は潜んでいる。
そう、伝承と伝説を軽んじること、なかれ。