妹に婚約者を奪われたら、年下エリートに拾われてとろとろに甘やかされています エタニティ文庫・赤

椿蛍(著者)

• 販売会社／発売会社: アルファポリス
• 発売年月日: 2025/06/04
• JAN: 9784434359071

商品レビュー

2025/11/22

妹に婚約者を奪われるという、あまりにも理不尽で救いようのない瞬間から始まる物語。
高校教師として真面目に働き、家庭でも“良い娘”を求められてきた茅依は、その裏切りによって一瞬で足元を崩されてしまいます。
婚約解消を突きつけても反省の色もなく、彼も妹もどこか他人事。
その精神的ショックを抱えたまま街を歩いていると、今度は不審者に絡まれるという踏んだり蹴ったりすぎる展開に。

そんな最悪の夜を救ってくれたのが、かつての教え子・真辺。
高校時代は周囲を騒がせた天才集団の一員だった彼が、今ではスタートアップ企業の専務として活躍している。
そのギャップにも驚かされつつ、自然に言葉を交わせる距離感が懐かしくて心地いい。
「昔の教え子」だったはずなのに、いつの間にか頼もしさの方が勝っていて、茅依の崩れかけていた心がふわっと救い上げられる感覚がありました。

しかし翌朝、目覚めた先の“見知らぬ部屋”と“裸の真辺”のインパクトはなかなかの破壊力。
そこで彼が放った「責任とって付き合おっか？」という一言が、彼の年下らしさと腹黒さ、甘さと狡さをすべて凝縮していて、この瞬間から完全にペースを握られてしまいます。

茅依の周囲には、元婚約者と妹をはじめ、面倒を持ち込むタイプの人が多いのに、不思議と読んでいて重くなりすぎないのは、真辺がスッと現れてすべてを整理し、必要な時には誰よりも鋭く守ってくれるから。
問題ごとを淡々と片付けつつ、核心だけを残していく彼の手際のよさが気持ちいい。

さらに、脇役たちの存在も魅力のひとつ。
教頭先生や峰田先生とのテンポのいい会話はとにかく面白く、真面目な教師であるはずの茅依がほぐれていく感じにも自然な説得力がありました。
真辺の“天才集団”の仲間たちも、それぞれ個性が強く、彼らの高校時代のエピソードも本編にリズムを与えてくれて、思わずもっと読みたい気持ちに。

恋愛面では、真辺の“甘くて黒い部分”が年下とは思えないほど強烈で、茅依が知らないうちに惹き寄せられていく流れがとても自然。
無理矢理感やご都合感ではなく、“気づいたときには心が動いていた”という描かれ方がすごく丁寧で、茅依の揺れ方にも共感できました。
特に、茅依自身が「教師としての自分」と「ひとりの女性としての自分」の間で、どこかで少しずつ線をほどいていくような描写はとても良かったです。

そして終盤。
茅依を傷つけた人たちには、それぞれ自分の選択が返ってくる“因果応報”がしっかり描かれていて、過度なざまあ展開ではなく、静かで納得感のある帰結でした。
誰かを派手に叩きのめすのではなく、各々が自分の選んだ道の先で結末を迎える──その書き方が物語全体の大人っぽさにつながっていて読後感も良かったです。

真辺が一途に距離を縮め、茅依がようやく自分の感情を言葉にするまでの道のりは、年下×元教え子という関係を丁寧に扱ってくれていて、最後まで楽しく読める作品でした。

2025/06/11

妹に婚約者を略奪されてしまった高校教師のヒロインは婚約破棄を告げたあと今度は不審な男に襲われそうになったところをかつての教え子に助けられるが…。

真面目で堅物のヒロインを翻弄するヒーローだけれどヒロインの危機には駆けつける頼りがいのある人でした。
また、ヒーローを含む天才集団の高校時代のエピソード、そして現在の活躍もすごく魅力的でした。（周りは胃薬が必需品！）
彼らの話も読んでみたいです。

「ざまあ」ってほどではないですがヒロインを傷つけた人たちは痛い目を見ます（スッキリ）。
すごく楽しかったです。