教育産業のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書 図解即戦力

株式会社日本総合研究所(著者), 石塚渉(著者), 青木梓(著者), 西原史暁(著者)

• 販売会社／発売会社: 技術評論社
• 発売年月日: 2025/05/21
• JAN: 9784297147822

商品レビュー

2025/10/18

配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください。
https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=01439397

2025/06/14

この書籍は、現代日本の教育産業を体系的に分析した専門書であり、学校教育から民間教育サービス、EdTech市場まで幅広い領域を網羅しています。

**教育産業の全体像と市場構造**
教育産業は2023年度で約2兆8,832億円の市場規模を持つ重要な産業です。この産業は学校教育関連産業と学校外の学習サービス関連産業に大別され、学習塾・予備校、通信教育、幼稚園・保育園、資格検定試験、企業向け研修、eラーニングなど多岐にわたる分野で構成されています。従来の年齢別・段階別教育から、幼稚園児から高齢者まで生涯にわたる多様な学びの場を提供する産業へと変化しており、民間企業による教育提供が急速に拡大しています。

**社会環境の変化と教育産業への影響**
少子化の進行により公立小・中学校の在籍者数は減少傾向にある一方、共働き世帯の増加が学童保育や習い事サービスの需要を大幅に押し上げています。2025年3月末時点で学童保育世帯数は120.6万世帯に達すると予測され、公的サービスだけでは対応しきれない状況が民間事業者の参入を促進しています。また、政府のGIGAスクール構想により児童生徒1人1台端末と高速ネットワーク環境の整備が進み、デジタル教材の活用やICT教育の重要性が飛躍的に高まっています。

**学校教育の現状と新たな課題**
学校教育分野では、不登校児童・生徒数が2022年度に小・中学校で約30万人、高校で約6.7万人と過去最多を記録し、特別な配慮を必要とする子どもも小・中学校の8.8%に達しています。教員の長時間労働問題も深刻で、日本の中学校教員の週平均勤務時間54.4時間はOECD平均38.3時間を大幅に上回ります。これらの課題を受けて、フリースクールや通信制高校などの多様な学びの場が拡大し、通信制高校の生徒数は2倍以上の増加が予測されています。

**EdTech市場の急成長とデジタル変革**
EdTech市場は約6,500億円規模に成長し、AI・VR/AR技術を活用した個別最適化学習が主流となっています。atama plusやQubenaなどのAI学習システムは、児童・生徒一人ひとりの学習履歴と理解度を分析して最適な学習内容を提示し、学習効果の向上を実現しています。また、学習管理システム（LMS）や業務管理システムの導入により、効率的な教室運営と個別学習管理が可能になっています。コロナ禍を契機としたオンライン学習の普及は、場所や時間にとらわれない柔軟な学習形態を定着させました。

**多様化する学習ニーズと対象の拡大**
教育産業は従来の子ども中心から大人のリスキリング市場へと対象を拡大しており、政府は5年間で1兆円を投じて3年間で100万人のリスキリング推進を目標としています。語学教育市場は約1兆800億円規模で、オンライン語学学習が手軽さと安価性で急成長を遂げています。幼児教育分野では非認知能力の育成が重視され、プログラミング教育の小学校必修化により未就学児から高校生まで幅広い年齢層でプログラミング学習需要が拡大しています。

**今後の課題と展望**
教育産業は少子化加速の中で事業の多角化、グローバル展開、生成AI活用などの戦略転換が不可欠となっています。学校の働き方改革や教員不足により民間教育サービスへの需要が高まり、部活動指導の地域移行など公教育の外部委託が進展しています。生成AIの急速な発展は個別学習支援やコンテンツ生成の革新をもたらし、学習履歴管理による最適な評価システムの構築が期待されています。日本型教育の海外展開も重要な成長戦略として位置づけられ、人口増加や経済成長が見込まれる世界市場への進出が教育産業の新たな成長機会となっています。