エステルの手紙教室

セシル・ピヴォ(著者), 田中裕子(訳者)

• 販売会社／発売会社: 講談社
• 発売年月日: 2025/05/21
• JAN: 9784065384862

商品レビュー

2025/11/14

個性豊かな登場人物たちが、産後うつや家族の死、動物愛護といった重いテーマを率直に綴っているにもかかわらず、物語全体には不思議な軽やかさが漂っている。読後にはむしろ爽やかささえ感じられ、複雑な感情が心地よく浄化されていくような稀有な読書体験だった。

2025/11/12

フランスのリールで書店を経営するエステルが「手紙の書き方講座」の講師を務める。応募してきたのは、年齢、性別の異なる様々な人たち。ある医師の依頼で産後うつを患う夫婦も参加する。参加者同士で手紙をやり取りし、エステルが書き方を指導する。
主に手紙のやり取りで、本書は構成されている。手紙を読み進めていくと、フランスに実際にこういった人たちがいて、手紙をやり取りし、日々を過ごしているという気持ちになる。ありありとその人たちのことが頭に浮かんでくる。そこには、人生で誰もが経験するであろう出来事や感情が綴られている。感情移入してしまって、つらくなる部分もあったけれど、最後がとてもよかった。
産後うつの問題は、程度の差こそあれ、妊娠、出産を経験したすべての女性に関わる問題だと思う。ここまで分かりやすく書かれていて、この問題について多くの人の理解が得られる助けになってほしい。
この本については、ブクログで知りました。出会えてよかった本の1冊です。

2025/10/02

年齢も性別も立場も考え方すら違う6人が「手紙」を通して心を通わせながら次第に相手を思いやり、親密になっていく様子が読んでいて少しずつ分かってくるのが楽しい。
みんなが心にどこか喪失を抱えていて、初めは「こんなこと続けていて何か意味があるのか」と思っていても、前に進みたい気持ちが同じで、それを応援したくなる。
翻訳がとても軽快で読み易い。
日本が登場するシーンもあって、嬉しい演出も良かったです。