密やかな炎

セレステ・イング(著者), 井上里(訳者)

• 販売会社／発売会社: 早川書房
• 発売年月日: 2025/05/09
• JAN: 9784152104250

商品レビュー

2025/10/30

読み進めていくうちに、ミアはジョディ・フォスターのイメージが合うと思った。既にドラマ化されている様だけど、見て見ようかどうか悩む。ドラマ化や映画化って全然別物になってしまう事が多いから。
英語版も入手したので、時間を見つけて読みたい。

2025/10/12

好きすぎる。
たぶんブクログで見かけて読みたいリストに入れていた本。
50ページ読んだ時点で、巻末の訳者あとがきを読み、著者の経歴を知った。
そしてその時点でデビュー作『秘密にしたいこと』を図書館で予約した。
そのくらい好きな語りがあった。

冒頭語られるリチャードソン家の火事。
一家のお騒がせ、4人姉弟の末娘イジーがやらかしたことが匂わされる。
枠組みがよくわからない中で語られる家族の面々の存在と借家人ミアとその子パールとの別離。
性急な入りで、これからどんな展開になるのかと思ったが一転過去に遡り、リチャードソン家と芸術家ミアとパールとの交流の経緯がしっとりと始まる。
いかにしてこの悲劇が生まれたのかという倒叙形式の物語だった。

その物語には色んな要素が詰め込まれていて言い出すときりがなくとっ散らかってしまうのだが、実際その中に意識を置くと絶妙なブレンドの物語性の虜になる。

一番感じたのは物事の多面性。
こちらの正義とあちらの正義、どちらも一理ある。だからこそ苦しい。
最終的には、恵まれ計画的な富に安住する側を象徴する1人の一人相撲のようにも映るが、それさえも悪意がもたらしたとは思えない一抹の内省を覚える。
自分は正しきことが見極めきれているか。周りの人達の心の中が覗けているか。。

本国アメリカではニューヨークタイムズのベストセラーリストに79週ランクイン。
既に2020年にドラマ化される程の大ヒットを遂げている模様。
それなのに日本国内ではそれほど注目を集めていないような（自分が疎いだけ？）のが悲しい。

2025/10/03

シェイカー・ハイツという計画的に造られた町に住み規則を重んじる人や、型を破りながら人生を歩んでいく人達が交錯する物語。じっくりと読んでいるうちにいつの間にか物語に引き込まれていた。両親の理解を得られぬまま芸術の道を選択し放浪するミア、恵まれた家庭に生まれながらも規則に縛られることを嫌い両親に理解されないイジーら、自身の中に燃える火を信じて生きていくことは大事。一方で、ミアの両親らがその生き方を理解しないことを責めるような表現は少なかった。育ち方や環境、時代が違えば、許容できる範囲も変わり、考え方が異なることは無理もないという表現だった。ある小さな町の物語に没入したような満足感のある本だった。