もうひとつのオセアニア史 プランテーション開発と年季契約労働

山本真鳥(著者)

• 販売会社／発売会社: 法政大学出版局
• 発売年月日: 2025/04/07
• JAN: 9784588350115

商品レビュー

2025/04/29

オセアニアの「もうひとつの歴史」としての年季契約労働。
オセアニア植民地時代の「ダーク・ヒストリー」。
植民者対先住民といった分かりやすい図式にはまらない曖昧な存在。
オーストラリア史の「汚点」や「恥部」として扱われる。
奴隷制が禁止に向かうにつれ、その代替として用いられた制度。
形式的には近代的な契約だが、実態は非人道的。
渡航費用は巡り巡って労働者が負担している場合が多かった。
ブラックバーディング：実態は奴隷売買や奴隷狩りに近い。
ペルーへのポリネシア人徴集は騙しや誘拐、「人狩り」と呼ばれた。
文字も読めない彼らに、署名の代わりにX印をつけさせた。
太平洋を渡る船は家畜並みの扱いで死亡率が高かった。
カリャオ港では奴隷の競り市のように人身売買が行われた。
ハワイ：労働力不足解決のため、異なった国・人種の移民を導入。
日本からの初期移民「元年者」（1868年）。
日布渡航条約により日本からハワイへ年季契約労働者が送られた。
1900年以降、ハワイでの年季契約は無効に。
契約期間中に勤務先プランテーションを変更できなかった。
クイーンズランド：オーストラリアを将来的に白人の大陸にしたい構想。
クイーンズランド：メラネシア人労働者を導入。
太平洋諸島民保護法制定まで、騙しや誘拐の方法も用いられた（メラネシア）。
クイーンズランドでもブラックバーディングが疑われるケースが多かった。
サモア：19世紀後半、英・独・米による植民地争奪と分割。
サモア人が労働に出ないのは怠惰ではなく、自給自足生活のため。
サモア人が「自由人」であることは、怠惰であることと同じではない。
サモア：労働力不足のため中国からの苦力（クーリー）導入を計画。
年季明けの自由移民への身分変更が中国側との交渉の焦点。
ニュージーランド労働党政府は人権保護不十分として制度廃止方針。
体罰、罰金（法律に盛り込まれていた）、賃金不払いが横行。
問題行動を起こした労働者を閉じ込める監禁部屋さえ存在した。
年季契約労働者はサモア人以下の存在として社会の底辺に追いやられた。
中国人労働者とサモア人女性の結婚禁止法（ニュージーランド統治下）。
混血の子供たちはサモア人社会の中に組み込まれていった。
少なくともドイツ時代は年季契約労働が奴隷制の代替であったことは明らか。
労働者は契約内容を理解せず、雇用主への隷属関係にあった。
渡航費や前借金によって雇用主に縛られ、職場移転も不可。
労働者は労働条件を交渉する力を持っていなかった。
女性労働者は性的な存在としても立ち向かわなければならなかった。
制度改善も図られたが、実態は大きく変わらなかった側面も。
年季契約労働は奴隷制より長く生き残った。
労働者は大きな犠牲を払いながら行った旅に値する待遇ではなかった。