非暴力主義の誕生 武器を捨てた宗教改革 岩波新書2049

踊共二(著者)

• 販売会社／発売会社: 岩波書店
• 発売年月日: 2025/01/20
• JAN: 9784004320494

商品レビュー

2025/05/31

ドイツの宗教改革の担い手といえば、ルター派をイメージしていたが、ルター派はむしろ領邦君主に庇護されたカトリックに並ぶ体制派で、ドイツ・スイスの境界付近には、後の国民国家の思想に適合しないような、よりラディカルな宗教改革のグループがいくつも存在していたことを知った。そして彼らは、時の領主や国王にその勤勉さや技術を認められて開拓地を与えられることもあれば、徴兵に応じないことから迫害され追い出されることもあり、ヨーロッパを転々としながら最終的には新天地アメリカに定着するグループも多かったという。キング牧師の非暴力主義もガンジーからの影響だけでなく、本書で語られているようなキリスト教傍流の改革運動の流れの中にもあることがわかる。歴史や思想についての新しい視点が、実証的な研究によって得られる良書である。

2025/05/11

宗教との距離の取り方はよくわからない。それでも若いころ距離を詰められて困惑したこと、死に行く人が帰依していくのを見たこと、さまざまな宗教者と信仰を持つ人との出会いやつきあいなどを思い浮かべなから読む。
すごいなあ、と。おそらく信仰はまだ当面持てそうにないけれど。私は非暴力も赦しも持てそうにないけれど。

2025/02/04

再洗礼派とその歴史的背景

1. 再洗礼派の起源と信念
再洗礼派はスイス、ドイツ、オランダで誕生した宗教的運動で、その信仰は「信じてバプテスマを受ける者は救われる」というイエスの教えに基づいている。再洗礼派は成人に対してのみ洗礼を施し、幼児洗礼を認めない立場を取っている。

2. 政治的・社会的影響
再洗礼派の重要な歴史的功績は、良心的兵役拒否者の権利を認めさせ、敵国の兵士や民間人を殺さないことを選ぶ人々の存在を合法化する道を開いたことにある。この非暴力主義は、ガンディーの思想よりも徹底しており、非暴力自体が目的である。

3. 主なグループ：メノナイトとアーミッシュ
3.1 メノナイト
メノナイトは200万人以上の信徒を持ち、海外伝道に積極的である。彼らは特にアジアやアフリカに多くの信徒を抱えている。

3.2 アーミッシュ
アーミッシュはメノナイトから分かれた厳格派で、約40万人の信徒がいる。彼らは伝道を行わず、主に北米に生息し、文明の利器を選択的に使用する。アーミッシュは独自の衣服を着用し、公共の通信手段を持たないことで世俗から距離を置くことを示している。

4. 礼拝と教育
アーミッシュの礼拝は、信徒の自宅で行われることが多く、男女は別々の場所に座る。礼拝は約三時間続き、通常はドイツ語で行われる。教育は第八学年までで、その後は家庭学習や職業訓練が主となる。

5. 教会の組織と規則
アーミッシュ教会はビショップ、ミニスター、ディーコンによって運営され、聖書の教えと教会規則に反する行動に対して戒告や破門を行う。彼らは信仰と実践の宗教的淵源を新約聖書に求めている。

6. ノンレジスタンスの原理
再洗礼派は暴力や戦争を否定し、信者は敵に対しても愛と赦しを求める。彼らは歴史的には迫害され、殉教者の姿勢を持ち続けてきた。愛敵と赦しの精神は、彼らの信仰生活の中心にある。

7. 歴史的背景と現代の課題
再洗礼派の非暴力主義は、個人や組織の立場が時代とともに変化する中でも持続している。現代においても、兵役拒否者や非暴力運動の重要性が再認識されている。

8. 結論
再洗礼派は、信仰と実践を通じて独自のノンレジスタンスの信念を貫き、過去の迫害の中で成長してきた。彼らの教えは、戦争や暴力に対する根本的な問いを現代社会に投げかけ続けている。