北朝鮮を解剖する 政治・経済から芸術・文化まで 慶應義塾大学東アジア研究所叢書

礒崎敦仁(編著)

• 販売会社／発売会社: 慶應義塾大学出版会
• 発売年月日: 2024/11/19
• JAN: 9784766429961

商品レビュー

2025/02/23

1. 金正恩体制とその後継者の動向
- 後継者としての娘の登場:
- 金正恩が娘を公の場に連れて行くことで、後継者としての印象を強めようとしている。
- 娘が参加した行事やその報道が増加しているが、媒体には彼女への明確な言及が少ない。

- 軍事関連の報道の偏り:
- 娘は主に軍事分野での動静に関与し、金正恩の軍事訓練視察などに同行している。
- これは金正恩の権力基盤を強化する狙いがあると考えられる。

2. 北朝鮮メディアの役割
- 情報の制限と管理:
- 北朝鮮メディアは国家の情報政策に従い、党の指導者に対する忠誠心を強調。
- 重要な決定が公開されないことが多く、体制の安定化が図られている。

- 報道内容の変化:
- 娘が「愛するお子さま」として表現されることが増え、彼女の存在感が高まっている。
- 報道の中で金正恩の親としての姿が強調され、家族のイメージが改革されている。

3. 経済政策と自立的民族経済
- 社会主義計画経済の堅持:
- 北朝鮮の経済政策は、社会主義計画経済を維持しつつ、自立的民族経済の拡大と発展を目指している。
- 国内資源を重視し、特に国防産業を支えるための基盤を整えることが強調されている。

- 経済制度の変化:
- 2021年1月の党規約改正により、体制の長期化に向けた制度設計が進められている。
- 私的所有の部分的な認可が、新たな経済運営の方向性として浮上している。

4. サイバー攻撃の増加
- サイバー攻撃の戦略的強化:
- 北朝鮮によるサイバー攻撃が増加しており、2004年には5件だったものが2021年には1462件に達した。
- 経済制裁の影響で、人的往来や貿易が制限され、サイバー攻撃が国家戦略の一部となっている。

- サイバー安全保障の重要性:
- 金正恩はサイバー攻撃に対する防御策を強化する必要性を認識しており、国家の下部構造を保護するための施策が講じられている。

5. COVID-19への対応
- 非常防疫体系の構築:
- 北朝鮮はCOVID-19の流行に際し、最大非常防疫体系を稼働させ、情報技術を用いた対策を強化。
- 保健・医療ネットワークの拡充と感染者管理システムの導入が行われた。

- 技術的な成果と課題:
- 短期間でのシステム開発が行われた一方で、実際に感染状況が安定する中での有用性には疑問が残る。

6. 文化・教育政策
- 文学・芸術の役割:
- 北朝鮮において文学や芸術は重要な教育手段とされ、党のイデオロギーを反映した作品が求められる。
- 金正恩は映画や文学の重要性を認識し、これらの分野での発展を促進しようと試みている。

- 教育教材の特徴:
- 新たな朝鮮語教材が作成され、実用的な会話を重視した内容が盛り込まれている。
- 言語政策として固有語の使用が奨励され、北朝鮮独自の表現が積極的に取り入れられている。