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邪悪なる大蛇
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 文藝春秋 |
発売年月日 | 2024/07/22 |
JAN | 9784163918808 |
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商品レビュー
4.3
18件のお客様レビュー
最初に出会ったときの驚愕。物語の残酷さ、えげつなさ。その原点に回帰したかのようなピエール・ルメートルの新作は、実は未発表の処女作だったらしい。この作品の奇妙な点は、あまりに奇妙で歪んだ時間軸で生まれ出たいわくつきの作品であるというところだ。作者は、実は、ミステリーの道にはもう戻...
最初に出会ったときの驚愕。物語の残酷さ、えげつなさ。その原点に回帰したかのようなピエール・ルメートルの新作は、実は未発表の処女作だったらしい。この作品の奇妙な点は、あまりに奇妙で歪んだ時間軸で生まれ出たいわくつきの作品であるというところだ。作者は、実は、ミステリーの道にはもう戻らないと決意したようなことが、我々の読んだ最後のミステリー『僕が死んだあの森』で書かれている旨、ぼくは当該作品のレビューで記している(https://w.atwiki.jp/fadv/pages/2396.html)。 過去に書き終えてはいたが自分では未完成と思っていたゆえに仕舞い込んでしまった処女作。それが本書である。なので、この作品を今一度修正して完成度を高めて、最初に書いたのに最後のミステリー、として完成させた上で出版しようと作者は考えたらしい。だが、いざ修正を試みると、今のルメートルにとっては、ほぼ修正すべきところがなく、このままで出版してもおかしくないように思えたらしい。過去に本書を、デビュー作としては未完成で使えないと判断し、お蔵入りさせてしまったのは、その当時の作家ではなかった自分である。だが今現在の売れっ子作家であるルメートルから見て、この作品に修正を加えるところはない、そのまま出版させて差し支えない。そう、判断した。 かような経緯を辿り、この作品は邦訳され、我々の手に渡ることになった。そして結果、やはりこれまでのルメートルを知る者にとっても、本書は凄玉と言っていい作品だった。序盤での殺人風景。キャラクターとしては極度に珍しい、まるまると肥った老女であり、大口径の銃を駆使するという腕利きの殺し屋の登場シーン。その異様な設定や衝撃の出だしだけでは、もちろん物語が走らないのだが、掴みは十分すぎるほど十分だ。彼女が、実は老化による認知症を患っているらしく、物忘れがひどくなりつつある状況下で、すべてが暴走を始める皮肉で不気味な展開はルメートルらしさ、そのものだ。 最初のうちは誰が主人公だかよくわかない。三人称群像形式で物語が始まるので、主役クラスと読者側で勝手に思い込んでしまうある人物が、いともあっさり殺されてしまうに至って、読者の理性は強く揺すられる。ぼく自身めまいがしそうな展開に、ルメートルという作家の本質をまた捕まえてゆけそうな感覚が戻り、そのことを懐かしく思い返したりする。この物語が本当に若書きで、作者自ら仕舞い込んでおいたものとは到底思えない目の前の光景に、ただただ面食らうしかないのだ。 多くの残酷さはルメートルお馴染みのもので、それは犯罪小説やミステリーのみならず、『天国でまた会おう』に始まる歴史冒険小説三部作の側でもとりわけセーブされるものではない。人間の残酷さや、運命の残酷さはルメートルが遠慮なしに書くべき要素なのだろう。 本書では、数人の注目すべきキャラクターがしっかりと描き分けられ、それぞれの思惑で動き、ぶつかり、あるいはすれ違いつつ、暴走する主人公とずれたり交錯したりしてゆく。何度も交錯したりすれば、それはいつか大口径の銃口によって進路を決定づけることになる。死という道への進路を。 愛と暴力。追憶と忘却。若さと老化。美貌と老醜。逃走と追跡。本書を通して理知的なようで、いずれ暴走してゆくしかない老いたる女主人公は、若い頃はとても魅力的な美女で殺し屋であったようだが、この物語ではスタートラインから、既に老い、肥り、陰惨さを増し、死地を切り抜ける経験をふんだんに積んで手に負えない悪夢の存在である。その一方、簡単な間違いもやらかす。主に熟慮を欠いた行為としての銃弾が、読者も予期せぬ方向に飛んでゆくこともあり、それは無残な光景を背後に遺す。 切り裂かれる空気が全編を満たし、その中でも、なぜかユーモラスで皮肉、という奇妙な時間を読者は共有させられる。多くの奇怪な人間たちの思いがけぬ運命と、邪魔なものを排除し、ひたすら逃走する老いた女殺し屋。こんな奇妙な地獄絵図を、天才じゃなくて誰が作れるだろうか。 ピエール・ルメートルの作品は読み尽くした。でももうミステリーを書かないと宣言した作者であれ、彼の書く作品は別のスタイルの小説で翻訳されるだろう。彼の書く独自さや奇妙さや、奇妙で魅力的な人物たちの、不可思議な魅力は、他の何ものにも代えがたいものがあるからだ。フレンチ・ノワールの系譜をどのジャンルでも継いでくれると信じられる作家であるからだ。 ともあれ、ミステリ作家のP・LにAdieu!
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続いてもワタクシの第二の故郷おフランスから フランスが産んだ鬼才ピエール・ルメートルの最後のミステリーと銘打たれた『邪悪なる大蛇』です 「最後の」って言っていますが、実はルメートルが最初に書いたクライムノベルということです 晩年歴史小説に軸足を移したルメートルがファンからもうク...
続いてもワタクシの第二の故郷おフランスから フランスが産んだ鬼才ピエール・ルメートルの最後のミステリーと銘打たれた『邪悪なる大蛇』です 「最後の」って言っていますが、実はルメートルが最初に書いたクライムノベルということです 晩年歴史小説に軸足を移したルメートルがファンからもうクライムノベルは書かないの?ってしつこく言われて、そういえばタンスの中にひとつ仕舞ってあったなと思い出し、ちょっと直して出版したという代物 まぁ言わゆるタンス預金ですな(違うわ!) 物語を一言で言い表すなら、(解説にあった通り)「残酷な喜劇」ということになるんでしょうな 初期の認知症を患った凄腕の殺し屋のおばあちゃんが主人公 認知症と凄腕という相容れない状態が混乱を加速させる中、物語は進みます 途中、まだらな記憶の中に巻き込まれた関係ない人たちも殺しまくります ダメなのよー 「残酷」だめなのよ基本 そこを上回ってくれるぐらいの驚きのストーリーを展開してくれればそっちが勝つんだけど 「残酷」の時点で「喜劇」成立しないのよ 何がおもろいねんって思っちゃうのね 分かりますよ 仕立てとしてはね そこにおかしみを見出すっていう作りはね でもダメ「残酷」だけが残っちゃうの 悲しすぎて思わず笑っちゃうって感情は理解できるんだけど苦手なんよね ならクライムノベルなんて読まなきゃいいんだけどね 悪に憧れる気持ちもちょっとあるのよ
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まるで楽しむかのようにグロの限りを尽くしてきたマチルド、最後はついにやったな、という印象。読みやすかったけれどテンポ軽すぎで、これが最後のミステリかと思うと、ちょっと残念。
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