ガラス図鑑 歴史・技法・名品

岡崎孝俊(監修)

• 販売会社／発売会社: 平凡社
• 発売年月日: 2024/07/12
• JAN: 9784582247398

商品レビュー

2024/10/05

ガラスの原料、製造工程、溶着技術など技術的なもの、ガラスの歴史、そして各国の有名ガラス製品の紹介、さらにガラス製品の手入れのしかたまで載せる。透明なもの、水晶とガラスの違いもわかりました。

歴史と分化
・BC2200頃　「コアガラス」　北メソポタミアが起源とされる。金属の細い棒を心棒に、粘土で芯形を作り（コア）その上に溶けたガラスを水あめのように巻き付けながら成形
・BC1世紀ころ　「ローマンガラス」シリア・ユダヤ海岸地域で吹き成形技法が発明。ローマ帝国の拡大に伴いイタリアはもちろん、スペイン、ベルギー、オランダなどのヨーロッパ各地、北アフリカさらに小アジアに広がる
・3世紀ころ　「サザンガラス」ササン朝ペルシアで作られたもの。これが日本にも伝わる。多様なカット装飾が特徴。正倉院の白瑠璃埦(6世紀）などもこれ。
・7世紀　「イスラムガラス」　イスラム教支配下のエジプト、シリア、メソポタミア、ペルシア周辺で作られたのも。アラベスク文様など。
・11～16世紀　「ヴェネチアンガラス」　芸術の域にまで高まる。技術の流出を防ぐためヴェネチア本島の沖のムラーノ島に職人を強制移住させた。
・16世紀末　「ファソン・ド・ヴェニーゼ」　ムラーノ島から職人が脱出し、ケルン、ブリュッセルなどヨーロッパ各地に移住。
・16世紀　「ボヘミアンガラス」　チェコ西部のボヘミアでは13世紀ころからガラス作りが始まっていたがヴェネチアンガラスの模倣だった。16世紀になり「カリガラス」の手法が発見。これはソーダ灰が手に入りにくいため、ブナの木炭を使ったところ、ソーダ灰を使うよりも硬くて屈折率の高い新しい「カリガラス」が誕生した。
・16世紀　「フリントガラス」　イギリスの宮廷文化のもとで生成。フリントという石英から構成される堆積岩の一種を使用。透明度と屈折率が高い。
・18世紀後半　「鉛クリスタルガラス」　1780年、サンルイで従来のものとは一線を画すもの。ヴェネチアンガラスとフリントガラスの技術の融合による。　バカラなど。

＜ガラスの3つの主原料＞
・二酸化ケイ素（珪石、珪砂）
・炭酸ナトリウム（ソーダ灰）
・炭酸カルシウム（石灰石）

＜ガラスの種類＞
・クリスタルガラス（酸化鉛を主要成分として含む）
・ソーダガラス（一般的なガラス）　
・強化硝子　（ソーダガラスに熱処理を加えた後急激に冷却することで3.5～4倍の耐圧強度を持たせた割れにくいガラス）
・耐熱ガラス（主原料にホウ酸を添加し120度以上の熱に耐えうる）

＜ガラスとはアモルファス状態にある個体＞
　ダイヤモンドや水晶、氷もガラスのような外見だが、これらは「結晶」
・結晶～その物質を構成する原子が規則正しく並んだ状態にある個体
・アモルファス～原子が不規則な状態で固体化されたもの
　～原子が結晶化する時間が足りず不規則な位置にある状態（網目状配置）のまま固体化してしまったもの
・ガラスは原料を一旦溶かす。二酸化ケイ素は冷却の過程でもとの結晶に戻ることができず、準安定なアモルファス（ガラス）になってしまう。

＜世界のガラス＞
チェコ：モーゼル、
ベルギー：ヴァルサンランベール、
フランス：サンルイ、バカラ、ラリック、ドーム（表紙右上のピンクのバラの花瓶）
イギリス・アイルランド：ヲーターフォード、
スウェーデン：オレフォス、コスタボダ、
フィンランド：イッタラ、
デンマーク：ホルムガード、
オーストリア：スワロフスキー、ロブマイヤー、リーデル、
ドイツ：ショット・ツヴィゼール、マイセンクリスタル、アルンシュタットクリスタル　
スロバキア：ロナ

2024.7.10初版第１刷　図書館