時空争奪 小林泰三SF傑作選 創元SF文庫

小林泰三(著者)

• 販売会社／発売会社: 東京創元社
• 発売年月日: 2024/04/30
• JAN: 9784488775018

商品レビュー

2024/05/22

小林泰三のSF短編集。SF色強めとはいえミステリだったり、ホラーというかクトゥルフの要素が端々に出てきて作者の持ち味がでている。

「予め決定されている明日」
これは年刊SF傑作選で読んで鮮烈に印象に残っていた。自らの立ってる場所を他愛もなく平然と揺るがしてくるのがうまい。

「空からの風が止む時」
途中からこれは何の世界の物語なのかとあてようと試みたけれど、明かされてみればそれは思いもよらなかった。。。

「Ｃ市」
作者お得意のクトゥルフ。

「時空争奪」
表題作にしてまたしてもクトゥルフ。屁理屈を既成事実化してされを起点にさらなる屁理屈を押し進めていく展開がまさに現実を侵食していくようで表題作というのも頷ける一編。

「完全・犯罪」
星新一とか藤子F不二雄を彷彿とさせるタイムパラドクスに関するコミカルな一編。

「クラリッサ殺し」
元ネタのレンズマンはタイトルくらいしか知らないのだけれど、こういう展開はSFマンガやアニメ好きなら漏れなく好きなやつ。

2024/05/03

　ホラー、ミステリ、ＳＦと様々なジャンルの第一線で活躍された作家の傑作選。ということで過去に読んだことがあるものは懐かしく、初めて読むものは新鮮に読みました。本書はその中からＳＦ作品を集めたものになるのですが、他のジャンルにまたがって面白い作品も多く、『時空争奪』はホラー好きにも、『完全・犯罪』はミステリ好きにも、という感じで、どのジャンル好きにも薦めたくなるような作品集でした。
　個人的には、「予め決定されている明日」「時空争奪」「完全・犯罪」が好きです。しかし同じひとが書いたとは思えない多彩さの作品集でした。６月にはミステリ編も出るみたいなので、楽しみ。